企業にとってWebサイトは、情報発信のチャネルとしてだけでなく、顧客との接点として、また様々なマーケティング施策を展開する場として、重要な役割を持っています。そのWebサイトを使用したマーケティング施策として、検索エンジンでのSEO施策が欠かせません。

SEO施策の支援を行う事業者は数多くありますが、中でも異彩を放っているのが株式会社クヌギです。SEOコンサルティングの分野で高い評価を得ている同社のWebサイトのトップページには年に数回、「SEOコンサルティングの新規受注が難しい状況です」というコメントが大きく表示されることがあります。普通なら新規受注は売上増大、企業規模拡大のチャンスです。しかし同社ではオーバーワークを防ぐことでサービス品質の確保と社員の快適な労働環境、その基盤となる社内文化を守ろうとしています。

クヌギとはどのような会社で、そこに根付いている社内文化とはどのようなものなのでしょうか。同社の取締役副社長の新城真寿美氏に聞きました。

  • 株式会社クヌギ 取締役副社長 新城 真寿美氏

    株式会社クヌギ 取締役副社長 新城 真寿美氏

未経験者を「どこへ行ってもプロとして働ける」レベルへ育て上げる

―― まずは事業概要について、お聞かせください。

新城氏: SEOコンサルティングを行う事業部と、自社のWebメディアを手がける事業部の2つを柱としてビジネスを展開しています。

SEOコンサルティングは業界・業種を問わず、お客様のWebサイトについてフラットな立場からアドバイスを差し上げるのが仕事です。SEOというと「コンテンツを大量生産すればいい」とか、「Webサイトや記事に特定のキーワードを入れればいい」と思われがちですが、本来そういうものではありません。Webサイトは企業の顔であり、掲載されていることはその企業の意思なのですから、自社として発信すべき情報なのかという視点コンテンツそのものを見直さなければならないこともあります。時にはお客様の組織体制や、担当者教育にまで踏み込んで支援を行うようにしています。

もう一つの自社メディア事業では、「クレジットカードを知る」をはじめとした、アフィリエイトサイトの企画・制作・運営を行っています。会社の設立当初に収益目的で起ち上げたサイトですが、今後は企業として、またメディアとして、しっかりとしたポリシーを打ち出せるような運用へとシフトを進めています。

―― 御社ではどのような方々が働いているのでしょうか。

新城氏: 当社のメンバーは社員とアルバイトを含めて37名ほどで、SEO事業部のほとんどが中途社員ですね。メディア事業部はほとんどがアルバイトで、どなたも最初はアルバイトから入ってもらうことになっています。アルバイトとして働くうちに当社の仕事に興味を持った人、スキルが伸びてきた人が正社員へ、というのが基本の流れです。メディア事業部の入り口はアルバイトなので、みんな前職はいろいろです。営業や役者、警備員だったという人もいます。SEO事業部のほうもスポーツ紙の記者や編集者、技術職といった経歴の人で構成されていて、実はコンサルティングの経験者はいないんです。

―― 経験がない方々が、なぜクヌギの門を叩くのでしょうか。

新城氏: 求人応募者の多くに共通しているのは「今、勤めている会社や職場がなくなったら、自分には生きるすべがない」と悩んで、手に職を付けられる働き口を探していたということですね。未経験者を受け入れていて、教育体制も整っており、さらに組織に依存しなくても働けるだけのスキルを身につけられる会社として、当社に辿りついています。

入社後も会社に過度に依存しない人、「もっと力をつけて、いつかさらに条件のいいところへ転職するぞ」という意欲や自発性のある人は、楽しみながら仕事ができて、活躍の機会が多いように思います。もちろん、社内でキャリアアップやスキルアップを望む人も同様です。私たちとしても、「どこへ行ってもプロとしてきちんと仕事ができる人材」にするつもりで育成に臨んでいます。そして実際に、未経験から成長を遂げて活躍しているメンバーもいます。

自分で考え、答を見つけることを促す育成手法

―― どのような人材育成を行われているのでしょうか。

新城氏: 例えばメディア事業部、SEO事業部のそれぞれで、「検索意図勉強会」というワークショップを実施しました。SEOでは検索者がどんな意図を持ってそのキーワードで検索したのか、深く考えて解釈し、それをコンテンツに活かすことが重要です。でもこれはすごく難しいことなんです。企業では、自社の都合のいいように検索理由を考えてしまいがちですが、大切なのは検索する人の気持ちと実際の背景です。

勉強会は、生活の中で誰もが検索するような言葉をテーマに、どうしてそれが検索されたのかを議論することが中心になります。一つの言葉でも、勉強会の参加者が考える検索意図はバラバラです。その理由を深掘りしていきながら、SEOに必要な思考方法を学んでもらいます。実施後はコンサルティングの質が高まりましたし、勉強会で使った資料は、顧客への説明材料としても役立っています。

また最近では「1on1ミーティング」も人材育成の一環として行っています。社員とのコミュニケーションを増やす意味合いもありますが、一人ひとりが自分の資質を見出すきっかけをつくったり、今だけでなく人生を見据えたうえで良い仕事ができるように手伝ったりするのが目的です。

ミーティングでは社員に仕事に関するテーマを持ってきてもらい、それについて上長と話し合うという形式で行います。例えば採用担当者なら「明確なキャリアプランを持っていない人材を採用すべきか」といったテーマです。上長には「アドバイスをしてはいけない」というルールがあって、基本的には「どうしてそう思ったのか」「何かきっかけはあったのか」という質問を繰り返すことで、社員が自分の中から答えを引き出せるようにしています。この採用担当の例では「応募者の人生にまで範囲を広げて考えれば、キャリアプランの有無を基準にするのは視野が狭かった」という考えに行き着き、それ以降、選考基準も変わったと言っていました。1on1ミーティングでは、そんなふうに社員の思考の質を高めています。

一人ひとりを尊重する文化が「職人集団」を可能にする

―― 社員一人ひとりの考えを、すごく尊重しているんですね。

新城氏: はい。社内でのコミュニケーションにチャットの利用を奨めているのも、その表れと言えます。仕事中に誰かに声をかければ、その人の仕事を一時的にシャットダウンさせてしまうことになる。社員一人ひとりの時間を尊重するために声をかけるのは止めて、それぞれの仕事の質を高めようという考えに基づいています。

ですから社内は静かですよ。チャットでは盛り上がっているんですが、基本的には誰も全然喋りません。電話も取り次ぎ委託サービスを利用しているので鳴りませんし、清掃も社外の方へ委託しています。メイン業務以外のことに無駄な気遣いが発生しないように、徹底させているんです。

また何か分からないことがあるときは、すぐに誰かに質問するのではなく、「まず自分で考えて、ブラッシュアップした上で訊くこと」も促しています。コンテンツ制作やSEO、マーケティングの仕事には絶対的な答えがない場合が多いので、まず疑問に思った本人に考えてもらわないと、その人がその仕事をする意味がなくなってしまいます。こうした呼びかけもあって、当社のメンバーは本質を捉えられる人が多くいます。

社員への権限譲渡も進んでいて、承認や稟議が必要な際も、多くて2ステップしかかからないようになっています。それだけ個人の裁量が大きいということです。社長の矢萩も私も、「一度その人に任せたら、後は任せる」「形式張らずに、決めるべきことは早く決めたほうがいい」という共通の考えを持っています。

  • 社員一人ひとりの時間を尊重するクヌギのオフィス

    社員一人ひとりの時間を尊重するクヌギのオフィス

―― 個人の考えや時間を大切にするというのは、企業理念「個人の才能を開花させ、最高のマーケティングチームを作る」や、経営理念「常に考え、常に行動する」につながるものがありますね。しかし個人を尊重しながら、事業規模を拡大していくのは難しいように思いますが、そのあたりの両立はいかがでしょうか。

新城氏: 今の文化や制度を維持するには、人数に限界があるとは思っています。ですから会社としてあまり大きくすることは考えていないんです。当社が目指しているのは、十分な知見と、お客様に対する責任感を持って仕事に取り組める人の集まり、いわば「職人集団」です。あまりに人を増やすことで、こうした「職人」のマインドに歪みを生じさせたくはありません。最大でも60人くらいの組織を維持しようと考えています。

―― 規模拡大より、働く人、「職人」のマインドを優先するというのは、企業としてかなり思い切っていますね。

新城氏: そうですね。会社としては現場の人が楽しく、気持ち良く仕事ができるようにすることを優先しています。仕事を回しきれなくなりそうなときはサイトに「新規受注が難しい状況です」とメッセージを出すこともありますし、現場に過度なプレッシャーがかかる仕事は、契約継続を辞退させていただくこともあるほどです。もちろんその代わり、現場も怠けてはいられません。

―― 新城さんはじめ社長ご本人が現場の「職人」でもあるからこその運営方針と言えそうですね。本日はありがとうございました。

クヌギがなぜ選ばれるのか

少数精鋭の「職人集団」で、クオリティの高い仕事を続けるクヌギ。その根底には、個人を尊重する文化と、「どこへ行ってもきちんと仕事ができる」レベルの人材育成がありました。

インタビューにお答えいただいた新城副社長が、中途採用でクヌギに入社されたのは、わずか3年前。当初は「指示系統がバラバラだった」という社内を、矢萩社長に一任されて明確な組織へと導き、メンバーの協力を得て今日の体制に仕立てたといいます。ここにも「個人の力や考えを会社の原動力にしていこう」、「個人に『職人』としての責任感を持たせよう」という、クヌギの姿勢が表れています。そして、その道のりには矢萩社長や新城副社長の方針に応えてきたメンバーの熱量や力量もあったことがうかがえました。

クヌギが受注する仕事は、企業間での口コミがきっかけになることがほとんどだといいます。クヌギの仕事への満足感や信頼感が高いからこそ、他社にも奨めようという行動につながっているのでしょう。そしてその信頼感を生んでいるのは、高い技術力だけでなく、社員一人ひとりに備わった責任感にもあると言えそうです。

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