株式会社大塚商会は、顧客の多様な課題をITで解決するサービスを提供する会社だ。そのツールのひとつとして同社が注目するのが、AIである。社内の課題に際し、まず自らユーザーとしてAIを導入して解決。そこで蓄積したノウハウを、今度は販社として顧客に提供していくビジョンを持っている。同社が「OPTiM AI Camera」の導入でどういった自社の課題に対し、それを今後の販売にどう活かしていこうと考えているのか、2020年3月および6月に行ったインタビュー内容をレポートしよう。

  • 株式会社大塚商会

混み合うランチタイム 空いている時間はいつ?

ランチタイムになると混み合う社員食堂。トレイを手に、座れる席を探す社員たちの姿。多くの会社で昼時に見られる光景だろう。大塚商会の本社ビルも、例外ではなかった。

「ビル内では1,000人強の社員が働き、ピーク時は利用者がどうしても集中するため、座れないこともありました。食堂の奥には個室スタイルのカフェコーナーもあるのですが、ここも実際に足を運んでみなければ空いているかどうかわからない状況。社員からは毎年、混雑改善を要求する声が上がっていました」

そう語るのは、社内課題解決のためにAI導入を推進する、マーケティングオートメーションセンター・AIテクノロジー課の藤本憲治氏だ。社内でうまく活用できたソリューションについては、顧客の課題を解決するサービスとして販売を促進する役割も担う。

  • 株式会社大塚商会 マーケティングオートメーションセンター AIテクノロジー課 シニアテクニカルスペシャリスト 藤本憲治氏
  • 株式会社大塚商会 技術本部 TCソリューション部門 テクニカルソリューションセンター クラウドソリューション課 課長 福島俊輔氏
  • 株式会社大塚商会 技術本部 TCソリューション部門 テクニカルソリューションセンター クラウドソリューション課 シニアテクニカルスペシャリスト 川邊篤氏
  • 株式会社大塚商会 マーケティングオートメーションセンター AIテクノロジー課 シニアテクニカルスペシャリスト 藤本憲治氏
  • 株式会社大塚商会 技術本部 TCソリューション部門 テクニカルソリューションセンター クラウドソリューション課 課長 福島俊輔氏
  • 株式会社大塚商会 技術本部 TCソリューション部門 テクニカルソリューションセンター クラウドソリューション課 シニアテクニカルスペシャリスト 川邊篤氏

今回の社員食堂の件も、AIで解決できないか。「たよれーる デバイスマネジメントサービス」というモバイルデバイス管理(MDM)サービスの導入・販売や、AI関連の提案案件で以前から付き合いのあったオプティムに、テクニカルソリューションセンター クラウドソリューション課の福島俊輔氏が相談。提案されたのが「OPTiM AI Camera」の活用だった。

「OPTiM AI Camera」は、カメラで撮影した映像をAIで解析し、そこにいる人間のカウントや年齢・性別判断、動き把握、特定ポイントでの滞在時間検出などによりデータを収集。それをマーケティングやセキュリティなど多様な取り組みに活かせるサービスサービスだ。社員食堂に「OPTiM AI Camera」を導入すれば、食堂というエリアへの人の出入りを検知し、ある時間帯にどれくらいの人数が訪れているかを可視化できる。

  • 社員食堂は、昼時以外は打合せコーナーとして使用。現在は緊急事態宣言に対応したレイアウトになっている
  • 人気のカフェコーナーは食堂の入り口から死角になっており、実際に足を運ばないと空き状況がわからなかった
  • 社員食堂は、昼時以外は打ち合わせコーナーとして使用。現在は緊急事態宣言に対応したレイアウトになっている(写真左)。人気のカフェコーナーは食堂の入り口から死角になっており、実際に足を運ばないと空き状況がわからなかった(写真右)

「会社側としても混雑の分散を意識付けるため、各テーブルに『食事が終わったら速やかに移動してほしい』旨のメッセージを設置するなど取り組みは続けていましたが、混雑緩和にはなかなかつながりませんでした。さらに現在はコロナ禍ということもあり、社員同士の密を避けることが強く求められています。そこで『OPTiM AI Camera』で混雑状況を見える化し、その情報を利用者にリアルタイムで公開することで、混雑を避け食堂を利用しようという意識の醸成を狙いました。実際に、密集や密接の状況が発生していないことも見える化できるようになりました」と、社内エンジニア向けサポートや顧客の業務課題に対応するサービスリリースを担当するテクニカルソリューションセンター・クラウドソリューション課の川邊篤氏も言う。

長い付き合いで培われた信頼感 スピーディーな対応も高く評価

AIカメラというサービスは、さまざまな会社がリリースしている。その中でも同社がオプティムを選択した理由は、やはりオプティムがデバイス管理の基盤に強みを持っていたことから、カメラだけでなくセンサーを含めたあらゆるデバイスを管理できるAIについて将来的な可能性を感じたためだという。まずはユーザーとして「OPTiM AI Camera」を導入し、社内課題を解決したうえで、蓄積したノウハウをもとに販社としてのサービス提供にもつなげる。同社にはそういった戦略もあった。

「OPTiM AI Camera」導入プロジェクトは、2019年9月にスタート。社員食堂以外にも、人の往来をチェックし、ロビーレイアウトやセキュリティに役立てたいと考えていたビル正面玄関と社員通用口にも同時に導入した。

まず準備段階においては、カメラの設置場所確定に苦労したと川邊氏は証言する。

「何台のカメラを天井のどの位置に設置すれば全体をカバーできるか、試行錯誤を繰り返しました。実際の設置には工事が必要ですし、一度据え付けてしまったら簡単には動かせませんから、位置の決定は慎重にならざるを得ません。どの位置にどういった画角のカメラを取り付ければAIの認識精度が最も高くなるか、オプティムのサポートを受けながら、いろいろなパターンを想定して認識効果を検証し、設置しました」

位置を決めたあとも、画素サイズやフレーム数調整に時間がかかったという。

「カメラの画素は高ければいいわけではないこともわかりました。今回の導入に合わせてAI分析専用サーバーを社内に用意したのですが、高画素の映像で負荷が高まりすぎてしまうと、サーバーが停止するトラブルが発生したのです。サーバーの処理能力に合わせ、やや低めの画素数のほうが、リアルタイムでスムーズかつ的確にAI分析処理を行うことができました」(川邊氏)。雨の日など屋外がやや暗い場合、窓に映る人物の姿を誤ってカウントしてしまうケースもあったようだが、オプティムがAIアルゴリズムを調整することで迅速に解決できた。

「OPTiM AI Camera」自体は手軽に導入できるサービスだが、設置先の環境やニーズに合わせて調整する段階で、さまざまなノウハウが求められる。こうした試行錯誤の経験は、同社が今後「OPTiM AI Camera」を販売していくうえで、有益な知見となるだろう。

もう一点、問題となったのが同社社内のプロキシへの対応だった。「当初、『OPTiM AI Camera』はプロキシに対応していなかったので、プロジェクト開始直後は情報をダッシュボードに表示できないトラブルが発生しました。これについてもオプティムが即座にプロキシで使用できるバージョンをリリースしてくれたので、スムーズに進められました」と藤本氏は評価する。

顧客ニーズに向き合いながらIoTのトータルソリューションを目指す

カメラを天井に埋め込む工事などが伴ったため、準備期間は3カ月に及び、最終的に社員食堂には6台のカメラを設置。正面玄関、社員通用口など食堂以外の場所にも5台を設置し、2019年12月、並行して運用を開始した。ビル各階のエレベーターホールに設置されているデジタルサイネージを利用して、昼時の食堂の混雑状況をリアルタイムに表示している。

  • 社員食堂の天井に配されたカメラ
  • カフェコーナーの天井に配されたカメラ
  • 社員食堂やカフェコーナーの天井に配されたカメラ

稼働開始後、人数カウントの検知率は目標としていた95%をしっかりクリアしており、円滑に運用できているという。また、デジタルサイネージで食堂の混雑状況をあらかじめ確認できるので、無駄足を踏まなくなったとの評価も社員から聞こえてくる。

  • エレベーターホールに設置されたデジタルサイネージ
  • 社員食堂のデジタルサイネージ。奥にあるカフェコーナーの混雑状況が把握できる
  • エレベーターホールに設置されたデジタルサイネージ(写真左)。社員食堂のデジタルサイネージでは、奥にあるカフェコーナーの混雑状況が把握できる(写真右)

「今回のプロジェクトではそもそも混雑状況を見える化し、社員に混雑分散の意識を醸成することが目的でしたから、これについては運用開始からの3カ月で十分達成できたと考えています。また、オプティム自体がAIアルゴリズムを作っていることからトラブルにもスピード感あふれる対応をしてくれて、安心できましたし、全体的に満足しています」と藤本氏は振り返る。

また、社員の個人情報である映像データはクラウドにアップしたりせず、社内のAI分析専用サーバー上で処理を行う仕組みになっている。実は「OPTiM AI Camera」もそうした設計思想を元にしており、その点も同社のセキュリティに対する考え方とマッチしていた。

すでに大塚商会は、社内で構築したシステムのトライアル版を製作し、顧客向けの体験サービス提供を始めている。たとえば店舗で客の動きを撮影してAIで導線を分析したり、ヒートマップでどの商品を見ている時間が長いかを判定してマーケティングに活かしたいと考えているという。「実際に試用し、どういったニーズに役立てられるかをお客様に考えていただくことで、サービスが広がっていきます。食堂での空席検知は小売・店舗に活かせるでしょうし、侵入検知についても技術的評価を行った結果、非常に高い検知率が得られました。たとえば建設・製造といった分野で、立ち入ってはいけない場所の監視に活かすなどの提案をしていくことも考えられます」と川邊氏は期待感を示す。

さらに大塚商会では、今後はAIカメラも含めた多彩なIoTデバイスをトータルソリューションで提供していくビジョンも描いている。

「今回はその第1フェーズです。第2フェーズでは、得られたノウハウを元に「OPTiM AI Camera」の提供を促進。第3フェーズでは、密集・密接の発生や衛生管理状況を判定し、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐためのサービス提供を、オプティムと協力しながら実現していければと考えています」と、藤本氏は今後を見据えた展望を語った。

株式会社大塚商会

「ITでオフィスを元気にする」というビジョンのもと、オフィスのIT環境を「システムの提案・導入」と「運用支援」の両面からワンストップソリューションとして支え続ける株式会社大塚商会。常に顧客目線に立って業務上のニーズをつかみ、多様な課題の解決をITの活用によってサポートしていく。さまざまなオフィス用品の通販サービス「たのめーる」もよく知られている。

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