2020年5月に発表されたDell Technologiesのストレージ新製品「Dell EMC PowerStore」は、新しいアーキテクチャを備えた画期的な製品に仕上がっている。具体的にどのような効果が期待できるのか。今回は、事前のβ検証を行ったノックスに、Dell Technologies面々から検証結果に関する質問がぶつけられた。
PowerStoreの魅力は、高性能でありながら操作が簡単で洗練されていること
PowerStoreの魅力はどこにあり、ユーザーにどのようなメリットをもたらすのか。今回は、Dell Technologies MDC事業本部SE本部長の森山 輝彦氏、プリセールスエンジニアの古舘 良則氏および水落 健一氏、事業開発担当の羽鳥 正明氏、パートナーSE部の近藤 正樹氏が、β検証を行ったノックスの技術本部 プリセールス部 清家 晋氏、小島 和也氏に製品ベンダーとして気になる点を、検証結果の所感などとともに質問していただいた。
(右)ノックス株式会社 技術本部 プリセールス部 部長 清家 晋氏
(左)同 技術本部 プリセールス部 小島 和也氏
ノックスは、Dell Technologiesのパートナーとして、ユニファイドストレージ「Dell EMC Unity XT」やスケールアウト型オールフラッシュアレイ「Dell EMC XtremIO」、HCIアプライアンスの「Dell EMC VxRail」や「Dell EMC vSAN Ready Node」など、ローエンドからハイエンドまでさまざまな製品を取り扱ってきた経験がある。今回の検証でも、既存製品との比較を含め、持ち前の技術力を活かし、あらゆる角度から検証が重ねられた。
森山氏:まずPowerStoreの第一印象を教えていただけますか?
清家氏:EMCがDell Technologiesの一員となって初めて世に送り出すストレージということで、非常に楽しみでした。当初は5月に行われる予定だったDell Technologies World 2020でDell Technologies会長兼CEOのマイケル・デル氏自らが大々的に発表されるとも伺っていて、意気込みの高さを感じていました。実際に触れてみてまず思ったのは、非常に高性能でありながら、操作が簡単で洗練されているという点ですね。
Unityのようにブロックとファイルを同じように扱える簡単さを備えつつ、XtremIOのように優れた重複排除&圧縮技術を持ち、幅広い用途で利用できる製品だと感じました。それでいて、随所に従来製品とは異なる発想や技術でアプローチしていることがみえて、非常におもしろい製品に仕上がっているという印象です。
古舘氏:性能面では、最新のIntelプロセッサや、エンドトゥエンドのNVMe、SCM、ASICを使った重複排除&圧縮などが寄与しています。我々の性能評価としては、Unity XTと比較して7倍高速、3分の1の低遅延、最大20:1のデータ削減という数字を出しています。さまざまな環境で検証すると、それ以上の数字が出ることも多かったのではないですか。
清家氏:そうですね。ベンチマークツールvdbenchを使ったデータ削減率評価では条件によって300倍といった数字が出て驚いたこともあります。その後、ワークロードを実際に近いかたちに変えていくつか試してみて、やはり高い削減率がでることを確認していきました。
水落氏:管理面では、Unity XTでご評価いただいてきたインターフェースをさらに洗練させ、使いやすくしていることが特徴です。じつはXtremIOでも新モデルのX2以降でインターフェースにUnityの使いやすさを積極的に取り入れてきました。PowerStoreで採用しているGUIは、このXtremIO X2のGUIを受け継いだものです。
清家氏:そうなのですね。Unity XTとPowerStoreの管理インターフェースを比較するとかなり違いを感じますね。個人的にはXtremIOでブロックをサーバに見せながら必要な情報を見てサクサクと設定していく手順が好きなので、そうした使い勝手を受け継いでいる点はすばらしいです。
IOPSはUnityの1.6〜2.6倍に、データ削減率は12.4倍を実現
森山氏:検証はどのような基準でどのように行ったのでしょうか?
清家氏:大きく2つの軸で実施しています。1つは、パフォーマンス面です。IO性能の評価と重複排除&圧縮によるデータ削減率を検証しました。もう1つは、オペレーション面です。管理のしやすさ、操作のしやすさを運用担当者の目線から評価しました。
まず、パフォーマンス面ですが、PowerStore TとXそれぞれについて、リード/ライトパターンやブロックサイズ、接続方式などを変えながら、IOPSとレイテンシーをUnity XTと比較しました。検証の結果、IOPSの最大は2.5倍。これはライト100%の場合ですが、ライト50%リード50%などのパターンでも1.7倍と、大きく向上していました。また、iSCSIの場合は、NFSよりもさらに高いIOPSが出る傾向がありました。
さらに注目すべきはレイテンシーです。いずれの値も非常に短くなっていて、実環境でも高い効果が期待できることがわかりました。このあたりは、最新のCPUやフラッシュ、ハードウェアアーキテクチャが大きく寄与しているのだと推測しています。
重複排除&圧縮についても、いくつかのパターンで検証を実施しました。特徴的な結果だけ述べれば、あるワークロードについて、Unityのデータ削減率が1.9倍〜3.5倍であったのに対し、PowerStoreは12.4倍となり、これはUnityからさらに約4倍も削減率が向上していることとなります。
このようにPowerStoreは、企業が利用するさまざまなワークロードにおいて、安定して高い性能を発揮できることを確認しています。
古舘氏:カタログ値だけでなく、実際の利用状況に近いワークロードでも良い結果が出ているということで安心しました。
水落氏:従来のUnityはこれまで重複排除&圧縮にそれほどフォーカスしてこなかったという面もあります。一方で、独自のアルゴリズムで高い重複排除&圧縮を実現してきたのがXtremIOです。PowerStoreは、XtremIOのさらにもう一段上のレベルで重複排除&圧縮を実現できるようになったと考えています。
近藤氏:既存のUnityユーザーにとっては、XtremIO並みの重複排除&圧縮を備えていることで、使いやすさの面だけでなく、データ容量の面でもメリットになるのではないですか?
清家氏:そうですね。現在、ミッドレンジではUnityへのニーズが多いのですが、Unityユーザーだけでなく、XtremIOを利用してきたユーザーにも提案できるのではと考えています。
管理UIが刷新され、状況の把握とアクションが容易に
森山氏:オペレーション面での検証はどうでしたか?
小島氏:オペレーション面では、管理系と操作系とでそれぞれ5つの評価ポイントをあげたいと思います。まず、管理系でのポイントは「管理画面が見やすい」「一画面にさまざまな情報が集約されていて、状況を理解しやすい」「ファイルシステム・LUN単位で簡単にパフォーマンスを見られる」「アラートをクリックすることで、画面が遷移し、簡単にアラートの内容を把握できる」「システムビューも見やすいように改善されている」の5つです。
UnityとPowerStoreの画面を左右に並べるとわかりやすいのですが、PowerStoreは、キャパシティやアラート、スナップショットなどの情報を一目で把握できるように作り込まれています。また、例えば、アラートが発生した場合、ワンクリックするだけでアラートの詳細を確認できるので、迅速な調査が可能です。さらに、ファイルシステムやLUN単位でのパフォーマンスも同一画面から確認できます。Unityの管理画面も十分見やすいのですが、画面遷移しないと見にいけないことが多くありました。PowerStoreの画面は、管理者のことをよく考え洗練されたデザインだと思います。
羽鳥氏:TモデルとXモデルで管理方法や操作感は統一されているのでしょうか?
清家氏:はい。ほぼ同じですね。機能面ではXモデルはESXiベースなのでVM単位の性能情報を見ることができるといった違いはあります。ただ、操作性は一緒で、使いやすい洗練されたインターフェースで統一されています。検証時はβ版でしたが、正式版になるとより統一感は高まっていると思います。
森山氏:では次に操作系でのポイントを教えていただけますか?
小島氏:まずは「NASサーバやファイルシステム作成、LUN作成などのオペレーションは瞬時に完了し、待ち時間が少ない」「短いステップで構築でき、入力するパラメータもシンプル」の2つですね。Unityに比べると、NAS/Block共に非常に少ないステップで構築できるようになりました。実行すると瞬時にジョブが完了するので、かなり驚きました。
また「オペレーションを実施する際、警告表示の色や対象のファイルシステムやLUNなどが太文字になっていることでミスを防止しやすい」という点も見逃せません。これまでは表示や文字が通常と変わらないので操作をミスしてしまうことがありました。削除する場合はシステムに致命傷となりかねないので、ミスを防ぐという意味では、大きな改善です。このほか、「オプション変更が容易に行える」「一画面でボリューム拡張やネットワーク変更、プロテクションの確認や変更などの操作ができて、操作性が便利になっている」点も評価できるポイントです。
近藤氏:UIが使いやすいという点はパートナー企業のメリットにもつながります。Xモデル、Tモデルをユーザーのニーズに応じて提供した場合も同じ操作体系になるので、運用やサポートがしやすくなります。
レガシーな課題解決から新しいチャレンジまでをサポート
森山氏:検証を行うなかで「このようなお客様におすすめしたい」といったイメージは何か持たれましたか?
清家氏:安定した高性能を簡単に出せるという点では、金融や社会インフラなどの基幹システムにも耐えうる性能を持っていると感じました。今回は検証しませんでしたが、スケールアップやスケールアウト、アクティブ-アクティブのHA構成などにより、高い信頼性や可用性も実現できます。ミッドレンジに限らない活用の可能性を秘めているのではないでしょうか。
一方で、アーリーアダプター層に訴える製品でもあると感じています。OSがコンテナベースになったことで、KubernetesやDevOpsに取り組む企業が興味を示してくれます。既存のユーザーはもちろん、新しいお客様にもどんどん新しい提案をしていきたいと考えています。
森山氏:Dell Technologiesも、Infrastructure as CodeやDevOps、自動化などの取り組みは、積極的に推進しています。今後は我々のノウハウをパートナー向けに提供するなど、さまざまなご支援策を展開していく予定です。今回、ノックスさんに検証を依頼した背景の1つには、ノックスさんが、レガシーなストレージ環境で悩んでいるユーザー企業から、新しい取り組みにチャレンジしているアーリーアダプター層まで幅広いお客様とのつながりを持っていることがありました。
実際、米国本社からも、ノックスさんからさまざまな評価や知見を得られたことで、今後の参考になるという声をもらっています。
清家氏:今回の検証で得られた知見やノウハウをユーザー企業に提供しながら、Dell Technologiesの新しい考え方やアプローチを訴えていきます。PowerStoreは、ミッドレンジ分野の新しい扉を開くことができる製品だと捉え、多くのお客様へご提案していきたいと考えています。
森山氏:ありがとうございました。