クラウド、モバイル、AIをはじめとしたデジタル技術があらゆる業種のビジネスを変革している現代において、特に注目を集めているキーワードが“ドローン“だ。そして、日本のドローン活用において、多大な貢献をしてきた企業がブルーイノベーションである。今回は、ブルーイノベーションの代表取締役社長である熊田 貴之氏に、日本のドローン活用の現状と課題、さらに同社が展開するドローンビジネスについてお話をうかがった。
日本におけるドローン活用のパイオニア企業といえるブルーイノベーションの創業者である熊田 貴之氏は、“ドローン“という名称が定着していなかった時代から、無人航空機(ドローン)の産業利用に携わってきたキーマンだ。大学院に在籍していた頃に、津波対策など海岸の防災対策の研究を行っていた熊田氏は、在学中からベンチャー企業的に海岸事業の仕事を受注していたという。
そして、2011年の東日本大震災により、プランニング(沿岸部の復旧計画)の仕事が激増。「寝る時間もないくらいの仕事量でした」と熊田氏が語るように、会社(ブルーイノベーションの前身)の業績は飛躍的にアップしたが、3年後にはプランニングから施工フェーズへと移り変わり仕事量が減少、新しい事業を模索する必要が出てきたという。
熊田氏の会社では、海岸の将来予測と対策を受託するケースが多かったが、その際には空撮を行い、過去から現在までの変遷を確認していく作業が必要だった。過去の空撮データは購入できたが、最新のデータは実際に撮影しなくてはならない。特に災害時には災害直後の空撮データが重要となるが、セスナ機を飛ばして空撮を行うのはコストがかかり過ぎる。凧を上げたり、ラジコンを使ったりといろいろな方法を模索していた熊田氏にとって、光明となったのは、現在のブルーイノベーションの活動に対する大きな指針となる東京大学大学院 航空宇宙工学専攻 鈴木 真二教授との出会いだった。
鈴木教授は、御巣鷹山の航空機墜落事故を教訓として、自動で飛行するための制御システムを研究していた。「飛行ロボット」と呼ばれる無人機(当時はドローンという名称が定着していなかった)に制御システムを載せてテストを行っていたが、パソコンで高度・飛行経路の設定を行うだけで何度でも同じ場所を飛んでくれる「飛行ロボット」は、海岸のモニタリングに最適に感じたと熊田氏。鈴木教授に相談を持ちかけ、当時は例のなかった飛行ロボット(ドローン)の産業利用を開始した。
こうして、本格的にドローンの活用を進めていくことになった熊田氏だが、その後の数年間、ドローンの産業利用が注目されることはなかった。転機となったのは、航空機の安全基準を決定する国連の専門機関ICAO(国際民間航空機関)が、無人機(ドローン)を航空機扱いにすると決定したこと。航空機と見なされることで今まで飛べなかった空域も飛べるようになり、これまではラジコンの派生形のような扱いだったドローンの価値が一新され、ドローン活用のパイオニアであるブルーイノベーションにも数多くの問い合わせが来るようになったという。
ドローンの産業利用は世界中で大きなムーブメントを引き起こし、30カ国が法律を改正してドローン活用に対応するなか、日本においては「ドローンとは何?」という状況が続いていたと熊田氏は当時を振り返る。国の関心の薄さを感じた熊田氏は、産官学が連携できるドローン振興のための中立団体として、一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の設立に尽力。鈴木教授が理事長に就任し、ブルーイノベーションが運営事務局を務めるなど、中心的な役割を果たしている。
日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の詳しい情報はこちら
https://uas-japan.org/
「JUIDAを設立して最初に行ったのは、ドローンを安全に使うための『安全ガイドライン』の策定です」
そして、JUIDAがドローンの安全ガイドライン策定を進める最中、首相官邸にドローンが落ちるという事件が発生した。その影響もあり、JUIDAに参加していた国交省が主体となって航空法の改正が急速に進められることになったが、この法律改正においてもJUIDAの安全ガイドラインは先に策定され、内容に大きく貢献したという。
JUIDAの会員は現在6000を超えており、ドローン飛行試験場を提供したり、まだ国家資格になっていないパイロットライセンスを発行したりと、幅広い活動を行っている。JUIDA認定のドローンスクールが全国に170校設立され、パイロットライセンスは現在約6,000人以上に発行されているという。そのJUIDAで中心的役割を担っているのがブルーイノベーションであり、ドローンの教育分野においてもパイオニア的な存在となっている。
ドローン活用のプラットフォームBEPと、屋内点検・警備ソリューションを提供
このように、日本のドローン事業を語るうえで欠かすことのできない存在であるブルーイノベーションは、「新しい発想(アイデア)・創造・技術革新(イノベーション)によって、世界中の人々に安心、安全、便利、楽しさを提供し、人々の豊かな生活の実現に貢献する」という経営理念を掲げ、ドローン・ロボットを活用した事業を積極的に展開している。 「労働人口が減って、働き方改革が叫ばれる状況の中、ヒトの業務を自動化することに注目しました」
こう熊田氏が語るように、ブルーイノベーションはロボットやドローンの技術を使った自動化を推進。そのためのプラットフォーム「Blue Earth Platform(BEP)」をATR(国際電気通信基礎技術研究所)と共同で開発した。BEPは「One Command Full Mission」をテーマとし、複数のドローン・ロボットの遠隔自動制御を実現。「点検」「警備」「物流」「教育」「イベント・エンタメ」の5つを軸にしてプロダクトの開発を行っている。
現在、ブルーイノベーションでは、ドローンを使って主に屋内の点検業務を支援するサービス「BIインスペクター」の提供を開始している。スイスの企業Flyabilityが開発した、屋内狭小空間向け点検作業専用ドローン「ELIOS」を採用し、高コストで危険性の高い製鉄所のボイラー内部点検や、橋梁点検を請け負う企業、建物の地下ピットの点検を行う大手ゼネコンの点検作業などで導入されており、安全性や作業効率の向上、コストの削減といった効果を実現しているという。
BIインスペクターの詳しい情報はこちら
https://www.blue-i.co.jp/bi-inspector/
さらに、大成株式会社、NTT東日本と共同で開発したオフィス内巡回システム「T-FREND」の提供が10月1日より開始された。「BIインスペクター」と同様に、GPSが入らない屋内でも利用可能なシステムとなっており、場所と時間を簡単に設定して自動飛行することが可能。夜間巡回警備をはじめ、残業抑制など働き方改革をサポートするソリューションとして活用できるという。テレビを始めとしたメディアで紹介されたこともあり、開始前から大きな注目を集めているソリューションだ。
T-FRENDの詳しい情報はこちら
https://www.blue-i.co.jp/service/security/t-frend/
日本におけるドローン活用の課題を解決するブルーイノベーション
取材の数日後、熊田氏はスイスへ赴き、「BIインスペクター」で採用したELIOSを開発するFlyability社を訪問。4年前に社員僅か7名だった同社は現在、社員75名、30ケ国400ユーザーの導入実績を誇り急成長を遂げている。熊田氏は同社の経営幹部や開発陣とじっくり話をしたなかで、「詳しくはまだ話せないが、近い将来、あらゆる所にドローンが普及し、それが当たり前の時代が来る」と、強烈な確信を得たそうだ。
また、日本のドローン業界が抱える課題について熊田氏に伺ったところ、以下の3つの課題を挙げてくれた。
1)法律の整備
2)人材教育
3)テクノロジーの進化
適切な規制の策定、安全かつ効率的にドローンを扱える人材の育成、さらに長距離・長時間飛行や正確な自己位置推定などを実現する技術の開発が、これからのドローン活用には不可欠と熊田氏。年内秋頃にも目視外飛行を可能にする法律改正が行われ、遠距離を自動飛行するドローンが増えると予測されているが、それでもドローンを扱える“人“の重要性は変わらない。ドローン活用の幅を広げるプラットフォーム「BEP」と、そこで運用される「BIインスペクター」「T-FREND」といったソリューションを提供し、JUIDAを通じてドローンの安全運航管理に関わる資格や試験飛行環境、ガイドライン作りを担うブルーイノベーションの今後の活動からも目が離せない。
ブルーイノベーションのHPはこちら
https://www.blue-i.co.jp/
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