今週は、Wordに標準装備されているPDF作成機能について紹介しておこう。細かな設定は行えないが、手軽にPDFを作成する方法としては十分に利用価値があるだろう。

PDFファイルとして保存する手順

Word 2010には、作成した文書をPDF出力する機能も装備されている。なお、Word 2007の場合は、アドインを追加インストールすることによりPDF出力が可能となる。この機能を使って、文書をPDFファイルとして保存することも可能だ。

PDFファイルの便利な点は、環境を選ばずに文書を閲覧できること。たとえば、相手がWordを所有していない場合であっても、PDFに変換してからファイルを送信すれば問題なく文書を閲覧してもらえる。また、PDFに変換した文書はスマートフォンでも閲覧できるため、携帯用の文書ファイルとして、自分用にPDFファイルを作成しておくのも効果的な利用方法となる。そのほか、文書の内容が改ざんされにくいこともPDFの特徴として挙げることができるだろう。

Wordで文書をPDF化する手順はいたって簡単である。まずは「ファイル」タブを選択し、「名前を付けて保存」をクリックする。続いて、「ファイルの種類」に「PDF」を指定してから保存を実行すると、文書をPDFファイルとして保存することができる。

名前を付けて保存

PDF形式の指定

この保存ダイアログには「標準」と「最小サイズ」という2つの選択肢が用意されている。これらの設定は、文書内にある画像の品質を決定するものと考えればよい。

PDFの最適化の設定

「最小サイズ」を指定すると、PDFファイルの容量を小さくできる代わりに写真などの画質が劣化する仕組みになっている。画質を優先したい場合は「標準」、ファイル容量を優先したい場合は「最小サイズ」を指定すればよい。あとは適当なファイル名を指定して「保存」ボタンをクリックするだけで、文書をPDFファイルとして保存できる。

PDF化された文書

Wordにより作成されるPDFのプロパティ

このように、Wordでは簡単にPDFファイルを作成することができる。その反面、細かな設定が行えないことに不満を抱く方もいるであろう。参考までにWordにより作成されたPDFファイルのプロパティ(セキュリティ)を紹介しておこう。

作成されたPDFファイルのプロパティ

これらの設定を細かく指定したい場合もあると思われるが、残念ながらWordのPDF出力には簡単なオプションしか用意されていない。画質の指定についても、「標準」と「最小サイズ」の2パターンしか指定できないのが実情だ。どうしても細かく指定したい場合は、「Adobe Acrobat」やフリーのPDF変換ソフトなどを利用しなければならない。

フォントの埋め込みについては、基本的に全フォントを埋め込もうとする傾向があるが、一部、埋め込まれないフォントもある。「特定のフォントだけを埋め込む」といった指定方法は用意されていない。

フォントの埋め込み状況

とはいえ、基本的なPDF作成機能としては十分に利用価値のある存在といえるだろう。「手軽にPDFを作成できる」というだけでも有り難いと考えるのが筋かもしれない。

PDF変換のオプション

WordのPDF作成機能には、簡単なオプション設定も用意されている。この設定画面は、保存ダイアログで「オプション」ボタンをクリックすると表示できる。

オプション設定の表示

オプション設定の画面

ここでは、一般的に有用と考えられる設定項目についてのみ紹介しておこう。まずは「ページ範囲」の指定について。文書の全ページではなく特定のページだけをPDF化したい場合は、ここでページ番号を指定する。

PDFファイルに目次機能を付加したい場合は、「次を使用してブックマークを作成」をチェックし、「見出し」を選択しておくとよい。すると、目的の見出しへ即座にジャンプできる「しおり」が付加されたPDFファイルを作成できる。ただし、この機能はアウトラインレベルの設定と連動しているため、正しい「しおり」を作成するにはアウトラインレベルを適切に指定しておく必要がある(アウトラインレベルについては第19回の連載を参照)。

「しおり」が付加されたPDFファイル

また、Wordで作成したPDFファイルには、各自のユーザーアカウント名が自動付加される仕組みになっている。とはいえ、これらの情報を付加したくない場合もあるだろう。

PDFファイルのプロパティ(概要)

このような場合は、「ドキュメントのプロパティ」のチェックを外しておくとよい。これで「作成者の欄に自分の名前が表示されてしまう…」という問題を解決できる。

文書内で使用されているフォントを全て埋め込んだPDFファイルを作成したい場合は、「ISO 1905-1に準拠」をチェックする。この指定を行うと、PDFファイルの容量は大きくなるが、全てのフォントがPDFファイルに埋め込まれるようになる(ただし、埋め込み不可のフォントは埋め込まれない)。

これらのオプション設定は必要に応じて指定するとよい。細かな指定は行えないが、役に立つケースは十分に考えられるので覚えておくとよいだろう。