今回のテーマは「データベースアプリケーション」
企業内には無数のデータが存在する。それらはデータベースに格納されており、一般ユーザがおいそれと触ることはできない。そこで用いられるのがMicrosoft Accessなどの簡易データベースアプリケーションだ。技術者ではない方でもグラフィカルなインタフェースを使ってデータを定義し、蓄積したデータをクエリーを使ってフィルタリングし、レポートを作成する。入力も専用のフォームを用いて作れるようになっている。
MS Accessは非常によくできたアプリケーションではあるが、ユーザが作成したデータベースによってWebシステムへの移行がままならなかったり、その管理が煩雑化していることが多々ある。そこで今回はWebベースをはじめとしてMS Accessのような操作を可能にするWebアプリケーション、オープンソース・ソフトウェア(OSS)を紹介しよう。Webブラウザベースに乗り換えられれば、データの一元化や遠隔地との情報共有も進みさらに便利になるはずだ。
今回紹介するOSS・Webアプリ
『Springbase』 本格度合いはウェブ版Access!?
『Socrata』 多彩な形式で出力できるデータベースシステム
『Wabit』 既存データベースを利用してレポート
『Degino』 Google App Engine上で動くデータベースアプリ
本格度合いはウェブ版Access!?
名称 | Springbase |
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URL | http://www.springbase.com/ |
『Springbase』はまさにWebベースのMS Accessといった感のあるWebアプリケーションだ。テーブル、フォーム、レポートを組み合わせた本格的なWebデータベースシステムを構築することができる。最近ではついにMS Accessのファイルを取り込んでWebアプリケーション化する機能も追加された。
テーブルを使ってクエリーを組めるほか、スクリプトと呼ばれる機能でマクロ的な操作も可能になっている。フォームはテーブルやビューをベースに自動生成でき、ドラッグ&ドロップ操作によるデザイン変更が可能になっている。ボタンを押した時のアクションもスクリプトが指定可能だ。
MS Accessの再現度にもよるだろうが、Springbaseは非常に優秀なWebデータベースシステムだ。無料のお試しレベルもあるが、基本は月36~999ドルの有料Webアプリケーションとなっている。
多彩な形式で出力できるデータベースシステム
名称 | Socrata |
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URL | http://www.socrata.com/ |
『Socrata』は、見せ方にはそれほどこだわらないWebデータベースシステムだ。テーブル形式または単票形式でデータが登録できるようになっている。データの構造は変更することが可能だ。そして登録したデータはWeb APIを通じた公開や、RSSフィードとしての配信が行なえるようになっている。
データはフィルタリングして表示できる。このほか、他のユーザからのコメントを受け付けたり、共有やソーシャルサービスへ投稿したりといったことも可能になっている。業務用というよりは、何かの一覧表をまとめて、それを皆で共有したいというニーズに合致しそうだ。
データはCSV/ PDF/ XML/ JSONなどで出力ができるようになっている。HTMLのテーブルで作成すると再利用は難しいが、Socrataを使えば再利用性の高い共有データができあがるはずだ。
既存データベースを利用してレポート
名称 | Wabit |
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URL | http://www.sqlpower.ca/page/splash |
『Wabit』は単独でデータベースを持つわけではなく、既存のデータベースにアクセスしてその内容をレポートするというシステムだ。グラフィカルなインタフェースでMS Accessのようにカラムを線で結んでクエリーを作成する。
フィールドを取り出す条件の指定、独自でWHERE句を追加するといったこともできる。対応データベースはMySQL/ PostgreSQL/ Oracle8i~10g/ SQL Server/ DB2と幅広い。抽出条件ができあがったらデータに合わせてテキストや画像、水平線/ 垂直線を追加して体裁を整えていく。
できあがったレポートのテンプレートは保存しておけば、あとからいつでも呼び出せるようになる。定期的に作成するレポートなどをWabitで管理すると手軽そうだ。
Google App Engine上で動くデータベースアプリ
名称 | Degino |
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URL | http://code.google.com/p/degino/ |
『Degino』はGoogle App Engine上で動作するWebデータベースアプリケーションだ。自分でテーブルを定義して、そこに自由にデータを追加することができる。インタフェースにExt JSを用いることでローカルアプリケーションのような見栄えのいい画面構成になっている。
作り方が特徴的なので、はじめは少々迷うかもしれない。ファイルとテーブルを使ってデータベースを作り、そこに画面を組み合わせてアプリケーションを開発するという仕組みになっている。
ユーザ管理やToDo管理など、小さなWebアプリケーションを手早く開発し、データメンテナンスすることが可能だ。とくにGoogle App Engine上とあって、ストレージの心配をすることなく拡張できるのが便利だ。ユーザビリティではこなれていない面もあるが、今後に期待がかかるのではないだろうか。
いかがでしたか?
Webデータベースを用いれば、これまで内部にとどめておくしかなかったデータがオンラインで複数拠点間で活用できるようになる。とくに最近では社内データに限らず、地図や商品データなどオンラインのデータと組み合わせた解析も求められる。Webブラウザベースのデータベースアプリケーションは親和性も高いのが優位だ。
まだまだユーザビリティや機能面で既存のオフィススイートにはかなわないが、オンラインならではの特性も数多くある。そうした面を押し出していけば、徐々にWeb化が進み、オフィス内のエンドユーザコンピューティングが刷新される日が来るかもしれない。
著者プロフィール:MOONGIFT 中津川 篤司(なかつがわ あつし)
1978年生まれ。オープンソース紹介サイト「MOONGIFT」管理人。プログラマ、SE、ITマネージャを経て、オープンソースのビジネス活用を推進する。現在は独立し、Webサービスのコンサルティング、プロデュースを行う。