釣れない時間帯に数を伸ばす。これがワカサギ釣りを初めとした、いわゆる「数釣り」を楽しむときの極意だ。入れ食いタイムのときはどのアングラーもそこそこ釣れるわけで、手返しの差などはあるものの、チャンスとしてはほぼ平等。ただし、食い渋る時間帯に1匹ずつ、丁寧に釣ることができるのとできないのとでは、最終的な釣果に大きな開きがでるものなのだ。今回はそんな「数釣り」の極意をご紹介しよう。

食い渋るのはなぜ?

群れがボートの真下にいるときはひっきりなしにアタっていたのに、居なくなるとさっぱり釣れない。まぁ、当たり前の話になるが、最大の理由は「魚が移動したから」というものになる。しかし、ワカサギ釣りが楽しめる湖の場合、そのほとんどは稚魚や卵を放流して、一定数を維持しているのが現実だ。その数は膨大で、関東周辺の中小規模の湖でも、時には1億を超える放流をおこなうことだってある。分かりやすく言えば、湖中がワカサギで満ちあふれているような状況だ。

今回の釣り場もまさにそうした湖で、毎年放流がおこなわれている。都心からも近く、人気があるため、魚影はすこぶる良好だ。それでも午前中の盛んに餌を食べ続ける時間帯をすぎると、途端にアタらなくなってしまうのだ。

そうした管理された湖で食い渋る場合は、「魚が移動したから=居なくなった」ではなく「魚が移動したから=群れが薄くなった」というのがほぼ正解となる。要するに、大きく移動が早い群れと、薄く移動が遅い群れが混在しているという状況だ。大規模な湖になればなるほど、本当に一匹も居なくなることはある。その場合は、即移動、となるわけだが、中小規模の湖で魚が集まりやすい有力ポイントに入っていれば、ほぼこの方程式は当てはまるはず。そこで数を釣ろうと思えば、薄く活性も低い群れの魚にどうやって口を使わせるか、という部分を考えていけば良いというわけだ。

薄い群れの場合は、魚群探知機に反応がないことも多い。なので、多くのアングラーはそそくさと移動を繰り返すのだが、これが逆効果になることもある。大きな群れが一定のスピードで移動してくれれば再発見も可能だが、日々変わり続ける湖の状況に合わせて、あちこちへ動いていく。最悪のパターンは群れを見つけられず、また見つけたとしても、ポツポツと釣れてもすぐにアタリがなくなり、また移動しなくてはならないという悪循環に陥りやすいのだ。もちろん、アクティブに群れを追うのもスタイルのひとつではあるが、そういうリスクもつきまとっていることは知っておいた方がいい。私の場合は、自信があるときは大移動もするが、ほとんどの場合、それほど頻繁には移動しない。食い渋る時間帯は薄い群れの中から、少しでも口を使う魚を釣り続ける。これがまた楽しいからという理由もあるからだ。

午前10時を回った頃、突然アタリが遠のいてしまった。要因は様々だが、この「食い渋り」の時間帯にいかに数を伸ばすかが、上達の秘訣だ

本能に訴えかける釣りをする

食い渋るという状況は、主に餌を追わなくなるということとほぼ同義だ。お腹がいっぱいであったり、時間帯によって食欲よりも警戒心が上回ったりと、理由は様々なのだが、そういうときは目の前に餌があっても口を開かないのだ。そんな魚でも、必ず反応させることができるテクニックがある。それが「誘い」という動作だ。

誘いには実に様々なバリエーションがあるが、簡単にいえば餌を上下に動かしたり、ゆっくり落としてみたり、ひとつの場所で動かさずに置いておくような釣り方とは正反対の動作をすることをいう。ワカサギ釣りの場合は、仕掛けの下にオモリがあるので、その重さを利用して、手首ごと竿を上下させるのが一般的。上下の動作を素早くやれば餌は激しく揺れ、ゆっくりやればユラユラと蠢くように演出することもできる。その他、腕を一杯に上げて、そのままゆっくりと腕を下げれば、餌はゆったりと沈下する。

様々な動かし方があるが、これらのいずれかに食い渋るワカサギが反応してしまう動きが隠されていることが多いのだ。食い気がないのに思わず口を開いてしまうことから、この時の魚の行動を「反射食い」などと、アングラーは呼んでいる。体調や活性に関わらず、どんな時間帯でもこの反応だけはしてしまうものなのだ。

実際に反射食いをさせるには、いくつかの動かし方を試してみるしかない。例えば10回ほどゆっくり誘って止めてみるとか、激しく5回動かしてから落とし込んでみるなどなど、バリエーションは限りない。自分で反射食いを誘発するアクションを見つける場合は、ゆっくり誘いでダメなら早い動き、短い誘いが効かなければ長く誘ってみるといったように、逆パターンを試していけば反応が多いアクションを絞りこんでいける。この反射食いをさせる誘いを見つけるのがアングラーの楽しみでもあるが、人によっては集中力が続かないというケースも多いだろう。そんなときにはあらゆる魚にとって共通のある習性をくすぐるのが効果的。次回は、食い渋りに効くアクションのコツを解説していこう。

食い渋りの中でも魚に口を使わせるには、状況に合わせた「誘い」が必要。じっと待っていても食ってこない魚も思わず餌をほおばってしまう絶妙なアクションがカギだ