トランプ大統領がTemuやSHEINなど中国発のオンライン通販業者を標的にした大統領令に署名しました。米国の通販業者に歓迎されるかと思いきや、一部の業者からは懸念の声が上がっています。「テックトピア:米国のテクノロジー業界の舞台裏」の過去回はこちらを参照。

これは、中国系の低価格オンライン販売業者の成長によって注目されるようになった米国の関税制度の「抜け穴」を、今や米国のビジネスも積極的に活用し始めているためです。

TikTokの規制強化を巡って、プラットフォームを収入源とする多くのクリエイターが反対の声を上げたのと同様に、米中間の緊張の高まりには、米国のビジネスにとって痛しかゆしの側面があります。中国企業への規制強化は必要だと考えながらも、その規制によって自社のビジネスモデルや収益に影響が出ることを懸念する米国企業は少なくありません。

  • テックトピア:米国のテクノロジー業界の舞台裏 第22回

    追加関税の発表では、物価上昇を懸念する声に対し、トランプ大統領が第一次政権で効果的に関税を利用してきたことを強調(@WhiteHouse)

抜け穴と指摘されるデミニミスルール

現在、米国の関税制度の「抜け穴」となっているのは、「1930年関税法」の改正で1952年に制定されたデミニミス(de minimis)ルールです。個々の輸入品の価値が800ドル(約12万1000円)未満であれば、関税やその他の税金が免除されます。

デミニミスは、通関手続きの簡素化と関税徴収コストの削減を目的とした貿易円滑化措置として導入された制度ですが、SHEINやTemuといった中国発のオンライン通販は関税を回避する手段として利用し始めました。個別の荷物として国外から個人に発送することで、実質的に購入者が輸入者となり、非課税の対象となるのです。

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