前回は、ファイルサーバを運用している管理者にとって永遠の悩み、つまり「ユーザーが手当たり次第にファイルをサーバに置いてしまうせいで、予想外に空き容量が減ってしまう問題」に対処する手段としての使用量検証、緊急避難的に利用可能な圧縮機能、それと関連する話題としての所有者変更について取り上げた。
今回はその続きで、クォータ機能の概要について解説する。これは、ユーザー、あるいはフォルダを単位として使用量を制限してしまう機能だ。それぞれ設定の方法や動作に違いがあるが、まずはユーザー単位のクォータから話を始める。
Windowsサーバで利用できる2種類のクォータ
Windowsサーバのクォータ機能には、2種類ある。いずれも、ファイルシステムにNTFSを使用しなければ利用できないが、Windows Server 2012でFAT32を使用しているサーバがあるとも思えない。
まず、Windows 2000 Serverから加わった「ドライブごとに、ユーザーアカウントを単位として設定するクォータ」がある。これを便宜上、「ユーザー単位のクォータ」と呼ぶことにしよう。実はこの機能、前回の末尾で言及したファイルやフォルダの所有者情報に基づいて動作している。使用量の監視に加えて、設定した上限を超えた場合の警告や書き込み抑止も可能である。
もうひとつが、Windows Server R2から加わった「フォルダごとに、ユーザーアカウントに関係なく機能するクォータ」がある。こちらは便宜上、「フォルダ単位のクォータ」と呼ぶことにしよう。使用量を監視するだけでなく、設定した上限を超えた場合の警告や書き込み抑止を行う点はユーザー単位のクォータと同じだが、こちらは所有者に関係なく、単にフォルダを単位として機能する。また、警告手段を多様化している点が特徴で、たとえば管理者に電子メールを送信して通知することができる。
2種類のクォータをどう使い分けるか
ユーザー単位のクォータはドライブを単位として設定するようになっており、フォルダ単位の設定はできない。一方、フォルダ単位のクォータはその反対になる。両者を併用すると、「ユーザー単位でフォルダごとの容量制限」を実現できそうに思えるが、それを実現できるのは、ひとつのドライブにひとつの共有フォルダしかない場合に限られる。複数の共有フォルダがあると、ユーザーごとの使用量の情報を合算してしまうためだ。
現実問題として、ひとつのドライブにひとつの共有フォルダしか設けないことは多くないだろう。それに、ひとつの共有フォルダに対して複数のクォータ機能を混在させると混乱の元だ。
だから、クォータを利用するのであれば、行き当たりばったりに設定するのではなく、事前の運用コンセプト策定と設計作業が重要になる。つまり、設置するファイルサーバや共有フォルダのリストをまとめた時点で、クォータで制限しなければならない共有フォルダと、そうでない共有フォルダを分ける必要がある。
そして、クォータで制限する必要があると判断した共有フォルダについては、さらにユーザー単位のクォータで制限するか、フォルダ単位のクォータで制限できるかを検討する。
最後に、ユーザー単位のクォータで制限すべき共有フォルダと、フォルダ単位のクォータで制限すべき共有フォルダを、別々のサーバ、あるいは別々のドライブに配分する。
おそらく、クォータを設定する必要性が高いのは、仕事のデータを置くための共有フォルダよりも、個人のデータを置くための倉庫代わりの共有フォルダではないかと思われる。仕事用のデータを置くための共有フォルダでは、たとえ容量を食ったとしても、利用を制限するのは馴染まないだろう。
クォータを利用する際の注意点
なお、ユーザー単位のクォータを設定する場合、対象はユーザーアカウントに限られており、グループを単位として制限することはできない。これはおそらく、使用量をカウントする際にファイルやフォルダの所有者情報を利用しているためと考えられる。
そのため、監視対象となるユーザーが多いと、設定作業の手間が増えて大変なことになりそうだ。では、ディスクを大量に使っている「お行儀の悪い」ユーザーに限定してクォータの監視対象にすればよい、と考えそうになるのだが、そうは問屋が卸さない事情がある。
というのは、クォータを設定した時点で監視を始めるようになっているからだ。つまり、クォータを設定するよりも前に書き込まれたファイルやフォルダは監視の対象にならないのだ。ということは、ディスクの空き容量が減ってから慌ててクォータを設定しても意味がないことになる。