コロナ禍で前倒しで訪れた10年分の未来を活用すべき

Sansanは9月15日、オンラインイベント「Sansan Innovation Project 2021」を開催した。イベントは同17日まで実施し、本稿では初日に行われたOpening Keynote(基調講演)「ちょっと未来の働き方」でSansan 代表取締役社長/Founder & CEOの寺田親弘氏が話した内容を紹介する。

Sansan 代表取締役社長/Founder & CEOの寺田親弘氏

Sansan 代表取締役社長/Founder & CEOの寺田親弘氏

まず、寺田氏は「今回のテーマは『ちょっと未来の働き方』です。この、ちょっと未来というのは2~3年後のことであり、現在の働き方はコロナ禍により、ある意味では強制的に変化を強いられ、ビジネスシーンにおいて10年分の未来が一気に来たと言っても過言ではありません。そう考えると、いま向き合うべきは数年後の新たなテクノロジーではなく、前倒しで訪れた10年分の未来をアフターコロナを見据えて、活用していくべきです。そのために必要なものはDX(デジタルトランスフォーメーション)です」と述べた。

DXは「事業のDX」と「業務のDX」の2つに分類でき、誰かの事業は誰かの業務につながり、誰かの業務は誰かの事業につながっており、同社の名刺管理サービスで業務が効率化された結果、事業が加速し、その事業は誰かの役に立っているという。

同氏は「言い換えれば、誰かのプロダクトは誰かの便益につながり、その便益をもとに新たなプロダクトが生まれるサイクルです」と話す。

“タイヤ”を再定義したブリヂストン

寺田氏は、そのようなDXに関する認識をふまえ、ブリヂストンを引き合いに出した。ブリヂストンは従来から”タイヤ”というプロダクトを便益につなげていたが、自動車が所有するものから利用するものに変わりつつある現代では、変革が求められていたためタイヤの意味を抽象的に再定義したという。

同氏は「自動車にとってのタイヤは唯一地面と接しており、砂利道、山道など路面の状況で走り方を変えているように、タイヤからさまざまな情報を得られないかと彼らは考えました。つまり、タイヤの持つ意味をセンサとして再定義しました。このような切り口で物事を捉えた結果、タイヤを用いてデータを収集し、それをドライバーへ還元することに舵を切りました。これは便益自体をアップデートしたと言っても過言ではありません」と説明する。

事業のDXと業務のDXは互いに相関している

事業のDXと業務のDXは互いに相関している

このような技術が進化すれば、ドライバーは燃費の向上、タイヤ交換の効率性向上、ひいてはデータを蓄積することで走ったことのない場所や将来的に走る場所を予測し、事故を未然に防ぐことができるかもしれないという。

寺田氏は「このように、ブリヂストンは事業をDXした結果、それを使うユーザーのDX=便益につながっており、同技術を利用することが見込まれるトラックのタイヤ、バスのタイヤなどを通して、輸送や交通など別の事業のDXにつながる可能性もあるのです」と語った。