乗用車から、トラック、バス、航空機、建設/鉱山車両まで、さまざまなモビリティのタイヤの生産/販売を手掛けるブリヂストングループ。近年では、独自のプラットフォーム「Bridgestone T&DPaaS」を活用してソリューションビジネスを展開する。同事業においては、「現物現場」で得られたリアルな知見を解析し、新たな商品/サービスの開発に生かすことによって、さらなる価値を創造し事業基盤を強固なものにするためのDXに取り組んでいるという。
5月27日に開催されたビジネスフォーラム事務局×TECH+フォーラム「DX Day 2021 May デジタルで経営を変革する」で登壇したブリヂストン Bridgestone T&DPaaS戦略統括部門長 高城知行氏は、同社が挑戦するソリューションビジネスについて紹介した。
ソリューションビジネスでタイヤ・ゴム事業の価値増幅を狙う
ブリヂストンは1931年の設立後、タイヤ・ゴム事業を強みに拡大を続け、1988年には米ファイアストンを買収し子会社化した。同社はこれ以降の時期を「Bridgestone 2.0」と位置付け、グローバル化を積極的に進めてきた。さらに2019年には、デジタルによる事業変革を目指し、オランダのTom Tom社のデジタルフリートソリューション事業(現・Webfleet Solutions)を買収。翌年にはソリューションビジネスの本格展開を開始した。現在は第三の創業「Bridgestone3.0」として、ソリューションカンパニーへの変革を進める。高城氏は「Bridgestone 1.0、2.0時代に培ったコアコンピタンスである『グローバルフットプリント』、『顧客密着』、『ブランド力』、『素材』をベースに新たなコンピタンスを構築していく段階」と語る。
この核となるのが独自のソリューションプラットフォームである「Bridgestone T&DPaaS」だ。ブリヂストンが持つタイヤ・ゴム事業の知見や経験といった「リアル」の価値と、多様なデータやシステムなどの「デジタル」を掛け合わせて新たな価値を生み出すことを目的としている。
また、タイヤ・ゴム事業で蓄積したモビリティデータをソリューション事業に生かして競争優位性を獲得しつつ、そこから得られた知見をタイヤ・ゴム事業にフィードバックするという循環を回していくことも狙いだ。
「例えば、現場の経験に支えられたタイヤ・ゴムの技術に関するデータをデジタルでつないで見える化することで、お客さまのタイヤの状態を把握しエンジニアにフィードバックしてリアルの価値をスパイラルアップしていくといったような、当社だからこそ可能な強いリアルとデジタルの融合を実現していこうとしています。ソリューション事業への方針転換というわけではなく、あくまでコア事業であるタイヤ・ゴム事業の価値増幅が目的です」(高城氏)
コアとなるタイヤ・ゴム事業では、生産拠点や事業の再編、調達/物流コストの改革、投資の厳選と徹底した経費マネジメントにより、これまでよりも踏み込んだ効率化/最適化を進めることで「稼ぐ力」の再構築を図る。これに加え、「タイヤセントリックソリューション」として、タイヤやタイヤデータを活用して顧客に高付加価値を提供する事業、「モビリティソリューション」として、タイヤやタイヤデータに加えて車両などのモビリティデータを用いて、商品やサービスの価値向上だけでなく、システム価値というさらに広いスコープにおける社会価値/顧客価値の両立を図る事業を展開していく考えだ。