デジタルマーケティングを進める上で鍵となるのが、顧客の情報を持つ複数の部署とどのように協働していくのかということだ。さまざまな部署を巻き込んで進めていくことで、より深く顧客を理解した適切なマーケティングが可能となる。とは言え、部署間には見えない”壁”もあり、なかなか思ったように改革が進まないというのが実情だろう。

こうした状況を踏まえ、アドビシステムズは5月13日、Webセミナー「MAをテコに社内を巻き込み顧客と深くつながれ」を開催した。同セミナーには、「2019年度 Marketo Champion Team of the Year」に選出された日立製作所の佐藤正樹氏、ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズの谷風公一氏、LINE Payの齋藤仁氏が登壇。「Marketo Champion」とは、マーケティングオートメーションプラットフォーム「Marketo Engage」を活用してビジネスの課題解決に取り組んだFearless Marketer(恐れずビジネスチャンスや課題に取り組むマーケター)を表彰するもので、なかでも「Team of the Year」はMarketo Engageをきっかけに他部署を巻き込むことに成功したチームに贈られる。

セミナーでは、Championたちがどのような課題感を持ってデジタルマーケティングに挑み、壁を乗り越えて成功に導いたのかについて語られた。

マーケティングと営業の間にある”壁”をどう崩すか?

佐藤氏は1990年に日立製作所へ入社。CAD/CAM/CAEシステムの拡販やビジネスPCの企画部門などを経て、2018年からデジタルマーケティングチームを立ち上げ、Marketoを活用している。

デジタルマーケティングに取り組み始めた当初、佐藤氏を悩ませたのはマーケティングと営業の間にある”壁”だったという。展示会やWeb、メールなどで集めたリード情報を営業につなげていくのがマーケティングの仕事だが、それが当時は営業活動と分断されてしまっており、データをうまく活用できていなかったのだ。

その後、デジタルマーケティングについて検討するワーキンググループを立ち上げた佐藤氏は、一連のマーケティング活動から営業に至るまでのプロセスを見直した。現在も、マーケティングの成果をよりスムーズに営業活動につなげられるような仕組みを整えている最中だ。

「今も発展途上です。SNSやオンライン広告、メルマガなどで得た情報を提供して、セミナーやショウルーム見学などへつなげていきたいのですが、広告や展示会出展には費用もかかります。当然費用対効果を求められるので、緊張感を持って推進しています」(佐藤氏)

日立製作所 佐藤正樹氏

ここに至るまでの取り組みは決して順調とは言えなかった。手探りでスタートし、外部のセミナーや知人からのアドバイスを基に取り組みを進めていったものの、何が正解なのかわからない。「営業にいいように使われている」と感じることもあったという。

「営業側には『何のためにデジタルマーケティングをやるのか』や『データの集計にもコストがかかる』ということをやんわり伝えるようにしました」(佐藤氏)

そうした活動は、2017年に転換点を迎えた。広告宣伝部やプロモーション部から「デジタルマーケティングに取り組んでいかないといけない」という声が上がり、部署を横断したワーキンググループが生まれたのだ。2018年には営業企画部門とも連携するようになり、本格的にデジタルマーケティングの機運が高まった。

「そこでMarketoの導入を検討しました。ちょうどその当時、コーポレートサイトを公開することになり、そこにMarketoがうまくはまって契約に至りました」(佐藤氏)

「2019年度 Marketo Champion Team of the Year」を受賞したことで、社内からも大きな反響が得られた。本社を巻き込み、データ整備やシステム連携、SFA連携などにも取り組んだ結果、佐藤氏が課題に感じていたマーケティング/営業のプロセスも明確に改善したという。

鍵となったのはやはり他部門との協働だ。佐藤氏が心掛けているのは「共通言語で話せないうちは専門用語を使わない」ようにすること。「MQL」や「SQL」、「リード」といった言葉は決して誰でもわかる一般的な用語というわけではないのだ。佐藤氏は「今後、Marketo EngageとSales Cloudのシステムを連携し、リード情報の統合と整備に取り組んでいきたい」と意欲を示した。