東京・品川で5月30日~6月2日の4日間、AWSの日本向けイベント「AWS Summit Tokyo 2017」が開催されている。Day 2の基調講演にはアマゾンウェブサービスジャパン 代表取締役社長の長崎 忠雄氏らが登壇、AWSのモメンタムの持続と、今後のクラウドの在り方について語った。
スタートアップの支援も
AWS Summit Tokyoは、昨年の3日間から規模を拡大し、セッションも100から150講演と大幅に増加した。ゲストスピーカーが100名以上、スポンサーブースも100箇所と「満席の会場を見ても、クラウドの潮流は止められない『普通の流れ』になっている」と長崎氏は語る。
2006年よりクラウドの概念を提供してきたAWSは、ITテクノロジーカンパニーとして「1兆円の売上規模に最速で到達した」(長崎氏)。それは特にここ数年、デジタルトランスフォーメーションが大きく進展する中で競争原理そのものが日々進化し、コストやスピード感がより重要視されるため、ITインフラへの投資を最小限にとどめられるクラウドが「前提」となりつつある。
もちろん、そのインフラは特定産業や企業規模に特化したものではなく、スタートアップから中堅中小企業、大企業まで幅広く下支えする。ただ、ITビジネスの企業として特に支援しているのがスタートアップだ。
この日の発表では、支援強化策として「AWS Activate」の日本での提供をアナウンスし、年間で最大1100万円分のAWSサービスの利用を可能にした。また、スタートアップ専任の技術支援チームの拡充や、ビジネス支援も用意し、ハード(クラウドインフラ)とソフト(人的リソースとナレッジ)の両面でスタートアップを支援する。
オープン・イノベーションのためのAWS
一方で既存の大企業においても、これまでのITインフラが更新時期を迎えるとともにクラウドへの置き換えを検討するケースが増えてきた。
「そもそも、クラウドの導入が加速している要因は初期費用がゼロの低価格、そしてビジネススピードに直結するサイジングからの開放や柔軟に設定が変更できる俊敏性だ。大企業においてクラウド導入時には『選択肢』が必要だが、東京リージョンにおける日本準拠法の選択や東京地裁への変更オプション、日本円による決済、請求書払い、そして6月末をめどにサービスコンソールの100%の日本語化を進める。
ビジネスとITが密結合してきた環境で、従来よりもデータの分析・結果から素早くアクションを起こすことが求められている。レガシーのIT資産では対応できない事業環境で、ITのモダナイゼーションを進めることは、アメリカのトップ層ですでに起こっていること。そして日本でも起こり始めた」(長崎氏)
ここでその代表事例として登壇したのが、三菱東京UFJ銀行 専務の村林 聡氏。同社は、フィンテックの流れから自社サービスの機能を「MUFG APIs」として公開したほか、ブロックチェーン技術の研究・投資、ディープラーニング(AI)における協業、オープン・イノベーションやハッカソンなど、メガバンクとは思えぬスピードでIT刷新への取り組みを続けている。
「AIについてはオックスフォード大学らが、銀行業務のAI置き換え分析を行ったところ、将来的に『95%がなくなる』という結論に至った。私たちの分析でも、銀行の本部業務のうち7年後には4割がAIに置き換えられるとの結論に。そのため、いち早くIBMやAlpacaとの協業を進めている」(村林氏)
ただ、こうしたITを融合したオープン・イノベーションを進めるには「AWSが必要」と村林氏。単純な「クラウドサービス」ではなく、日々進化し、機能拡充が進むAWSだからこそ、「AWSクラウドをコアプラットフォームの一つとして育成する」(村林氏)という。