近年、IoTがさまざまな業界でトレンドとなっている。だが、それによって社会が大きく変わったかと言うと、まだそこまでのインパクトを与えるには至っていない。どの企業もIoTに注目はしているが、具体的に何ができるのか、ビジネスとして成り立つのかという点で二の足を踏んでいるのが実情である。IoTという言葉だけが先行してしまっている感は否めない。

IoTで何ができるのか、どのように社会イノベーションを実現していくべきなのか――。日立製作所が10月27日、28日に開催した「日立ソーシャルイノベーションフォーラム2016」のビジネスセッション「IoTとエコシステムで実現する社会イノベーション」では、IoT分野のトップランナーたちが登壇し、IoTの現状とあるべき姿、今後の展望などについて議論を交わした。

IoTで注目すべきは「モノ」ではなく「コト」

同セッションに登壇したのは、SAPジャパン 代表取締役会長 内田士郎氏、セールスフォース・ドットコム代表取締役会長 兼 CEO 小出伸一氏、シスコシステムズ 代表執行役員社長 鈴木みゆき氏、日立製作所 執行役専務サービス&プラットフォーム ビジネスユニットCEO 小島啓二氏。モデレーターはガートナー ジャパン リサーチディレクター 池田武史氏が務めた。

セッション冒頭、池田氏はまずIoTの定義について次のように説明した。

「IoTは、物理的オブジェクト(モノ)のネットワークです。そしてモノには、内部状態や外部環境をセンシングして通信し、何らかの作用を施すためのテクノロジーが埋め込まれています」(池田氏)

ガートナー ジャパン リサーチディレクター 池田武史氏

ガートナー ジャパン リサーチディレクター 池田武史氏

その上で、氏は「注目すべきは『モノ』ではなく、その内部や周辺で起こっている『コト』」だと強調する。すなわち、「家電が通信すること」や「自動車が通信すること」自体が重要なのではなく、あらゆるモノが通信することで起きる「『コト』の組み合わせ」がビジネスにさまざまな可能性をもたらすことに注目すべきだということだ。

もっとも、IoTに関するテクノロジーの多くはまだ発展途上にあり、これから数年をかけて成熟していくと見られている。

では、そうしたなかで業界のトップランナーたちはIoTの現状と展望をどのように考えているのだろうか。