富士通は5月17日、同社が展開するデジタルビジネス・プラットフォーム「FUJITSU Digital Business Platform MetaArc」(以下、MetaArc)を強化することを発表した。

新たに「MetaArcグランドデザインサービス」、「FUJITSU TransMigration K5 移行サービス」、「FUJITSU Cloud Service U5」の3サービスを提供開始するほか、浜松町にワークショップ施設「FUJITSU Digital Transformation Center」を開設する。

OpenStack、Cloud Foundryでの実績をMetaArcに還元

富士通 デジタルサービス部門長 兼 CTOで執行役員専務の香川 進吾氏。MetaArcについて「ここまで大きなサイクルをサポートできるのは富士通だけ」と自信を覗かせる

今回強化が発表されたMetaArcは、昨年9月にリリースされたデジタルビジネス・プラットフォーム。デジタル革新を実現するヒューマンセントリックなサービス基盤と位置づけられており、「つなげて、集めて、分析して、価値に変換して、最適に制御するというサイクルを実現していく」(香川氏)という。

K5をはじめとするクラウド技術をベースに、モバイル活用、IoTデータ活用、分析、AI、セキュリティなどのサービスコンポーネントが提供され、「ビジネスのデジタル革新(SoE : System of Engagement)」と「従来の情報システム(SoR : System of Record)」の双方の領域で環境構築を効率化し、両社を連携させてビジネスを推進する。

同社はMetaArcを展開する部署として、今年4月にデジタルサービス部問を新設。部門長には執行役員専務でCTOを兼務する香川 進吾氏が就任し、10本部、18関連会社から成る3万人強が投下されている。営業、SEのほか、ネットワーク、モバイル、セキュリティなどの部隊も用意され、「富士通のハブになる存在」(香川氏)という。

MetaArcの開発においては、OpenStackやCloud FoundryなどのOSSも活用している。富士通は両コミュニティで活発に活動しており、OpenStack Foundationでは今年1月にBoard Memberに昇格。4月にはコミュニティ貢献者賞を同社社員2名が受賞した。また、Cloud Foundry Foundationでは、昨年10月に国内ベンダー初のプロジェクトマネージャーに選出。貢献度ランキングで国内ベンダートップの位置にあるという。いずれのコミュニティにおいてもプロダクトの開発を主導しやすい立場にあり、その成果を製品に反映させている。

OpenStack FoundationやCloud Foundry Foundationでの活動状況

MetaArcの発表から半年間で、すでに約1,000件の商談が発生。クライアント向け50システム、社内向け130システムが稼働中という。また、MetaArcの中核を成すIaaS「K5」に関しては、成約案件の7割がSoR領域、うち5割が既存システムからの移行という状況にある。

新サービスでは買収企業の技術も活用

今回発表された3サービスはいずれもSoR領域を強化するものになる。

1つ目の「MetaArcグランドデザインサービス」は、システムの再設計を支援するサービス。クライアントとともに業務仕分けを進めたうえで、各業務のサービスレベルを「特松」、「松」、「竹」、「梅」に分類。それぞれの業務に必要なセキュリティレベルを判断しながら、オンプレミスも含めてインフラのかたちを検討していく。

2つ目の「FUJITSU TransMigration K5 移行サービス」は、既存システムのクラウド移行を半自動化するサービス。移行にあたっては、昨年10月に富士通が買収した仏UshareSoftのDevOpsツール「Uforge」を使用する。Uforgeでは、システム構成を一括スキャンし、アプリケーションを含むVMイメージを自動生成・登録することが可能。複数のパブリッククラウドを利用するような環境も安全かつ効率的に運用できるという。

3つ目の「FUJITSU Cloud Service U5」は、SPARC M10ベースのOracle Solarisが利用可能なIaaS環境。国内で約6万台が稼動すると言われるSolarisシステムのクラウド化を支援する。

FUJITSU TransMigration K5 移行サービスの概要

一方、SoE領域の新施策として発表されたのが、浜松町に開設されたワークショップ施設「FUJITSU Digital Transformation Center」だ。最新のICT活用事例が体験できるほか、さまざまな分野の専門家によるデジタル革新セッションが開催され、事業構想を明確化したり、ICTを活用した業務の具体策を検討したりできるという。

同社は今年度の計画として、業種・業務に特化したPaaS・APIを60種に拡大するほか、AI、IoTなどのテクノロジーPaaS・APIを20種にまで増強、さらにはK5を海外5拠点で提供する予定であることも発表。売上面では、クラウドビジネスで3500億円という目標を掲げている。