ひとまず「鈴木一郎くん」にはお引き取り願った上で、今回から何回かに分けて、デスクトップ展開について取り上げてみることにしよう。「展開」と聞くと何のことかと思うが、早い話がクライアントPC向けのソフトウェア環境を整備するプロセスのことだ。
そこで登場するのが、マイクロソフトが用意している、さまざまなデスクトップ展開ソリューションだ。それについての情報をまとめているのが、TechNet Onlineの「デスクトップ展開TechCenterセンター」である。
デスクトップ展開 TechCenter
http://technet.microsoft.com/ja-jp/desktopdeployment/default.aspx
デスクトップ展開センターの構成
デスクトップ展開といっても方法が一種類ではなく、複数存在する。また、展開だけでなく、それに関連するテーマについても一括して、デスクトップ展開TechCenterから当該記事へのリンクをまとめる形になっている。他のサーバ製品のTechCenterとは異なり、基本的には個別テーマ向けのリンクを作業手順に沿って並べた、一枚モノのWebページが中核だ。
こうした構成の違いには、これまでに取り上げてきたTechCenterは製品別の構成だったのに対して、デスクトップ展開TechCenterは目的志向という違いが影響しているのかも知れない。
本項の執筆時点では、「おすすめトピック」の下まで画面をスクロールしていくと、「タスクとツール : 概要」という見出しが現れる。その下に、個別の目的に対応するリンクがまとめられているのだが、実はこれ、同じWebページ内でジャンプするだけだ。この一覧には、以下の内容がある。
- アプリケーションの互換性
- イメージング
- インフラストラクチャ管理
- アプリケーション管理
- 展開プロセス
- Officeの展開
- ユーザー状態の移行
- セキュリティと更新プログラム
このうち、純粋に「デスクトップ展開」に属するタスクは「イメージング」「展開プロセス」「Officeの展開」ぐらいだ。しかし、企業ネットワークで運用するクライアントPCの管理を行う立場からすれば、その他のタスクも無視することはできない。
とはいうものの、まずはWindowsのセットアップができなければ始まらないので、デスクトップ展開のうちWindowsの展開を迅速化するために、どういった方法があるのか、というところから話を始めよう。
デスクトップ展開の方法
個人で購入したPCにWindows、あるいは各種のアプリケーションソフトをセットアップするのであれば、それぞれのPCごとにWindowsのDVD-ROMを使って起動して、セットアップを行う方法が一般的だ。しかし、1台や2台ならともかく、数十台・数百台のオーダーになると、そんなことをやっていたら、日が暮れてもなお作業が終わらない。
個別にDVD-ROMから起動してセットアップするのでなければ、どんな方法があるか。Windowsのバージョンによっても違いがあるが、大きく分けると以下の2種類がある。
イメージ展開
まず、マスターとなるPCを1台用意する。そこで、Windowsを初めとして、必要とされるソフトウェアをセットアップして、必要なら設定変更も行う。その、セットアップ済みのハードディスクの状態をイメージ化して、他のコンピュータに複製する。
この方法の場合、展開対象になるコンピュータの機種やハードウェア構成に違いがあると、あまり具合が良くない。複製した先のコンピュータでデバイスの再認識、それに付随するデバイスドライバのインストール、といった作業が必要になるからだ。したがって、同一機種のクライアントPCを、大量に一斉導入する場面に向いている。
ネットワークセットアップ
ファイルサーバ上にWindowsのセットアップイメージを用意して、そこからセットアップを行う方法。クライアントPCの側ではネットワークブートを行い、起動してDHCPサーバからIPアドレスの割り当てを受けたところで、ファイルサーバ上のセットアッププログラムにアクセスして実行する。
個別のPCごとにセットアップの手間がかかるが、手作業で入力しなければならない部分の操作については、事前に設定ファイルを用意しておくことで自動化して、対話的な操作を行わずに済ませる方法もある(無人セットアップ)。
ネットワークブートを行えば、クライアントPCではDVD-ROMドライブを必要としないし、インストールメディアを持ち回る手間もかからない。その代わり、ネットワークブートが可能なLANアダプタが必要になる。