前回はSystem Center Data Protection Manager (SCDPM) の概念について説明しましたが、今回はSCDPMをサーバのバックアップ設定、およびリカバリ方法について説明します。

エージェントによる採取可能なバックアップ データを抽出

SCDPMでは、バックアップ対象のサーバ、クライアントにエージェントをインストールし、DPMサーバと接続することで、バックアップ対象となるデータ (ファイル、アプリケーション設定、システム状態など) を抽出、DPMサーバがバックアップ対象を選択することが可能となります。

バックアップ選択画面

用途に合わせたエージェントのインストール

エージェントは、主にDPMサーバから対象サーバにインストールする「プッシュ インストール」と、DPMサーバからエージェントのインストーラを対象サーバにコピー、直接インストールする「手動インストール」の2種類があります。

インストール方法 用途
プッシュ インストール ファイアウォール内もしくはWindowsファイアウォールの設定変更が可能なサーバに対して有効な方法。DPMサーバと同一のActive Directory ドメインに参加しているサーバであれば検出、選択してインストールすることが可能。事前に対象サーバのWindows ファイアウォールの設定、ポート開放が必要
手動インストール ワークグループやDMZ領域に存在するサーバに対して有効な方法。インストールと同時にWindowsファイアウォールの例外が設定される。インストール後、DPMサーバ側にてエージェントの接続設定が必要

エージェントのプッシュ インストール画面

どちらの方法も、ファイアウォールに対する対象ポート開放や.NET Frameworkの事前インストールといった前提条件があります。また、System Center Configuration Manager (SCCM) を用いたエージェントのインストールも可能です。

詳細は、Technet内の記事「DPM 保護エージェントのインストール」「エージェントに対するファイアウォール例外の構成」Japan System Center Support Team Blog内の記事「DPM 2012 SP1 / 2012 R2 Agent インストールについて」を参考にするとよいでしょう。

保護グループの作成とバックアップ設定

それでは、以下に、保護グループの作成とバックアップの設定の具体的な手順を紹介しましょう。

バックアップ先となるディスクの準備

事前にバックアップ先となるディスク (記憶域プール) を用意し、設定する必要がありますが、記憶域プールはダイナミック ディスクでなければなりません。ディスクを記憶域プールとして追加するには、[管理] タブ - [ディスク] の [追加] から設定することができます。

記憶域プールの追加画面

保護グループは対象サーバおよびバックアップ時間を考慮して選択

バックアップを設定する際、保護グループを作成する必要がありますが、対象となるバックアップ データの変更頻度やデータ容量の増加傾向などを考慮する必要があります。

また、バックアップ頻度や世代管理、保持期間も考慮した上で保護グループを分ける、といったことが望まれます。

Azure Backup エージェントの導入により、D2D2Cバックアップが可能

SCDPM 2012更新プログラム ロールアップ 2 (UR2) 以降、および SCDPM 2012 R2 以降であれば、DPMサーバにAzure Backup エージェントをインストール、設定することでAzure上のストレージにバックアップ データを保管するDisk to Disk to Cloud (D2D2C) が可能となります。

DPMサーバにAzure Backup エージェントをインストール方法については、Microsoft Azure内の「DPM を使用して Azure へのワークロードをバックアップするための準備」が参考となります。

Azure上のストレージにバックアップ データの保存が可能

なお、SCDPM 2012 R2 UR5 以降であれば、SharePoint Server、Exchange Server、およびWindows クライアントOS(バックアップ対象は第6回を参照)のバックアップが可能となります。

バックアップの状況、結果は一覧表示で確認

バックアップの状況や結果は、[監視] タブ - [ジョブ] から確認することができます。

バックアップ状況および結果の確認

システム状態・ベアメタル回復をバックアップする際の注意事項

システム状態およびベアメタル回復をバックアップする場合に、事前に対象サーバにWindows Server バックアップの機能をインストールしておく必要があります。

なぜなら、Windows Server バックアップの機能をインストールしないままシステム状態およびベアメタル回復に対してバックアップ設定を行った場合、バックアップ データが正常であることを確認する機能である整合性チェックが失敗し、リストアで使用することができなくなる場合があるからです。

Windows Server バックアップの機能がインストールされていない場合に整合性チェックが失敗

Exchange Serverのバックアップ整合性に関する注意事項

Exchange Serverのバックアップ整合性を行う場合、Exchange Server データベース ユーティリティ (Eseutil.exe) を用いて設定可能ですが、バックアップ対象となるExchange Server からDPMサーバに対して「Ese.dll」および「Eseutil.exe」をコピーする必要があります。

Exchange Serverバックアップ整合性チェックの設定

詳細は、Microsoft Azure内の「System Center 2012 R2 DPM を使用して Exchange サーバーを Azure Backup にバックアップする」に記載されているので、Exchange Serverをバックアップする際は参考にするとよいでしょう。

SharePoint Serverをバックアップする際の注意事項

SharePoint Server をバックアップする際、事前にSharePoint VSS ライター サービスを構成する必要があります。詳細は、Microsoft Azure内の「Azure への SharePoint ファームの DPM 保護」に記載があります。

バックアップからのリストア

バックアップしたデータをリストアするには、[回復] タブから実施します。バックアップした時間からディスク上、もしくはAzure上のストレージにバックアップしたものかどうかを確認できるため、リストアする状況に合わせてバックアップした日時を選択するとよいでしょう。

バックアップ データのリストア画面

リストアする対象データにもよりますが、リストアする際には場所やアクセス権の復元など、指定することが可能です。これらも、状況に合わせて指定するとよいでしょう。

回復オプションの指定画面(ファイルの場合)

Azure サブスクリプション契約があればSCDPMと同様の機能が利用可能

SCDPMに限らず、System Center製品群を利用する場合はサーバ管理ライセンスおよび管理対象クライアントのライセンスが必要となります。

サーバ管理ライセンスは製品ごとには提供されていないため、SCDPM単体で利用するケースはあまりありませんでしたが、SCDPMと同等の機能を持つMicrosoft Azure Backup Server (MAB Server) を利用することで、サーバの情報およびアプリケーション データをオンプレミス上やAzure上のストレージにバックアップすることが可能となります。

MAB Server管理画面

MAB Serverのインストーラは、Microsoft Download Center内の「Microsoft Azure Backup」からダウンロード、入手できますが、Azure サブスクリプション契約を保持していれば無償で利用できるツール (Azure上のストレージに掛かる費用は発生) であるため、導入が容易になると思います。

次回は、SCCMの構成情報 (インベントリ) の収集機能を用いたサーバなどハードウェア、およびソフトウェアの管理について説明する予定です。

編集協力:ユニゾン

小賀坂 優(こがさか ゆう)
インターネットイニシアティブ所属。前職にて技術サポート、インフラ基盤のシステム提案・設計・構築を経験した後、2015年7月より Microsoft Azure、Office 365 を中心としたマイクロソフト製品・サービスの導入、および IIJ GIO と組み合わせたハイブリッド クラウド ソリューション展開や開発を担当。
2012年から Microsoft MVP for System Center Cloud and Datacenter Management を連続受賞。
個人ブログ「焦げlog」にて、マイクロソフト製品を中心とした情報やTipsを発信中。