前回は、性能とイベントの監視を行うMicrosoft System Center Operations Manager(SCOM)の構成、監視対象サーバの検出、エージェントのインストールについて説明しました。今回はシステム管理者が監視上発生した問題の解決を支援する製品ナレッジをパッケージした管理パックからSCOMのオペレーション コンソールを用いた監視について説明します。
「管理パック」導入で、監視運用の開始が容易に
管理パックは、サーバやクライアント、アプリケーション監視に必要な設定や監視ルールといったパラメータ、およびシステム管理者が監視上発生した問題の解決を支援する製品ナレッジをパッケージしたものとなります。
管理パックを導入することで、従来、管理者が監視項目を調査、設定していた管理ルールを作成する手間を省くことが可能となります。これにより、システム管理初心者でもすぐに監視運用を開始できます。
基本的な項目は、SCOM自体に同梱 (Technet内記事「Operations Manager と一緒にインストールされる管理パック」を参照) されていますが、同梱されていない管理パックや最新版はWeb上から随時提供されています。Webからはファイルもしくはカタログとして入手可能で、入手した管理パックは「管理パックのインポート」からインポート、インストールできます。
Microsoftより提供されている主な管理パックとして、以下のものがあります。また、上級者向けとなりますが、管理者自身で管理パックを作成することができます。詳しくは、「Technical Documentation Download for System Center 2012 - Operations Manager」からダウンロードできるファイル、「SC2012_OpsMgr_Authoring.pdf」(英語) を参照してください。
管理パック | ダウンロードURL |
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Windows Server Operating System | https://www.microsoft.com/ja-jp/download/details.aspx?id=9296 |
Active Directory Domain Services Management Pack | http://www.microsoft.com/en-us/download/details.aspx?id=21357 |
Microsoft Windows Server 2012 Internet Information Service 8 | http://www.microsoft.com/en-us/download/details.aspx?id=34767 |
Windows Server 2012 R2 Hyper-V | http://www.microsoft.com/en-us/download/details.aspx?id=40798 |
WSUS on Windows Server 2012 R2 | http://www.microsoft.com/en-us/download/details.aspx?id=40801 |
Office 365 | http://www.microsoft.com/en-us/download/details.aspx?id=43708 |
Windows Azure | http://www.microsoft.com/en-us/download/details.aspx?id=38414 |
Windows Azure Applications | http://www.microsoft.com/en-us/download/details.aspx?id=11324 |
サーバ、コンピュータの監視はすべて監視画面から
監視の状況や設定は、オペレーショナル コンソールから実施します。例として、システム内に存在しているWindowsサーバの監視について説明していきます。
オペレーショナル コンソールの画面左側にある [監視]カテゴリから[監視] - [Windows コンピューター] を選択すると、画面中央にあるから監視対象となるWindowsサーバ、コンピュータの一覧、状況を表示できます。
画面左側に表示されるツリーには監視対象となっている項目が記載されています。項目を選択することにより、対象のサーバ、機能、およびアプリケーションに関する監視項目および状況を確認できます。
画面の右側には監視を行うために必要な情報を表示、設定項目がタスクとして表示されます。ここから、画面中央に表示されるCPU使用率やディスク使用率といった管理パックで定義されている監視項目の追加、監視対象コンピュータの疎通確認 (Ping)、アラート、イベント、パフォーマンスといったサーバの使用状況の確認、リモート デスクトップ接続、およびレポートの作成の実施を行うことが可能です。
以下、Operations Managerで頻繁に使用するであろう、操作画面を紹介します。
アラート ビューから現在発生している問題状況の確認
アラート ビューでは、選択した監視対象サーバで発生しているアラートの重要度、発生日時、解決状態が表示されます。また、アラートの説明からなぜ問題が発生したのかを確認することができるため、問題の早期発見、解決の支援に役立てることが可能です。
イベント ビューから管理パックに基づくサービス、プロセスの起動、動作を確認
イベント ビューを用いることで、監視対象サーバに対して管理パックに基づくサービス、プロセスが起動しているか、イベントとして確認することが可能となります。これにより、必要なイベントのみが表示されるため、すべてのログを確認して調査する、といった手間を省略できます。
ダイアグラム ビューで問題が発生している部分をグラフィカルに表示
ダイアグラム ビューには管理対象サーバと構成されている機能、サービスの相互関係をグラフィカルに表示します。これにより、アラート ビューで問題を確認した後、どこで問題が発生しているのかを視覚的に確認できるため、問題の切り分けに掛かる工数を削減できます。
パフォーマンス ビューから監視対象サーバの負荷状況を確認
パフォーマンス ビューでは管理パックに基づき、管理対象サーバのパフォーマンス オブジェクトとパフォーマンス カウンターから収集したパフォーマンス データを表示します。これにより、監視対象サーバで監視すべき項目の負荷状況を確認することが可能となります。
ヘルス エクスプローラーから問題の表示、対処を行う
ヘルス エクスプローラーを使用すると、監視対象サーバから発生したアラート、状態の変化をツリー形式で表示することが可能です。アラートビュー、ダイアグラムビューと組み合わせて表示することで、複数サーバに渡る問題に対しての切り分けや、対処をすばやく実施することが可能となります。
今回は、Windows サーバの監視を例に挙げましたが、UNIX /Linux サーバ、ネットワーク デバイスの監視(SNMPを使用)にも対応しています。また、機能やアプリケーションに特化した監視も対応した管理パックを導入すれば行うことができます。
資料作成の手間を省くレポート機能
監視状況を週次、月次報告する際、監視データを集計し、WordやExcelを用いて資料を作成することがありますが、SCOMのレポート機能を使用することで、テンプレートに沿って指定した期間のレポートを作成、出力することが可能です。
レポートの作成画面から、期間の指定と監視対象サーバを指定することでレポートを作成、表示することができます。
作成したレポートは、以下の形式で出力でき、編集も可能であるため、一から作成する手間を省くことができます。
- XMLファイル形式
- CSVファイル形式
- PDFファイル形式
- MHTMLファイル形式
- Excel ファイル形式
- TIFFファイル形式
- Wordファイル形式
次回は、SCOM を使用した監査ログの収集方法について説明する予定です。
編集協力:ユニゾン
小賀坂 優(こがさか ゆう)
インターネットイニシアティブ所属。前職にて技術サポート、インフラ基盤のシステム提案・設計・構築を経験した後、2015年7月より Microsoft Azure、Office 365 を中心としたマイクロソフト製品・サービスの導入、および IIJ GIO と組み合わせたハイブリッド クラウド ソリューション展開や開発を担当。
2012年から Microsoft MVP for System Center Cloud and Datacenter Management を連続受賞。
個人ブログ「焦げlog」にて、マイクロソフト製品を中心とした情報やTipsを発信中。