前回、RFPを受けて出された提案書の評価方法について説明しました。その際取り上げた評価項目を基準に採点することで、提案書を評価します。評価項目はそれぞれ重みが異なります。調達対象により、また、自社にとっての重要性により重みが異なってくるのは、むしろ当然のことと言えます。今回は、「評価の重み付けと配点」について説明します。

重み付け

例えば、薬品の成分のように標準化の進んだものを調達しようとする場合は、評価も比較的シンプルでしょう。この場合、サプライヤーによって品質に差がないので、価格に重みを付けて最も安いものを選択すればよいからです。極端な言い方をすれば、価格だけに重みを付ければいいのです。ITの世界ではハードウェアの調達がそれに近いと思います。

サプライヤーによって性能や仕様における違いがほとんどないならば、ランニング・コストも含めた価格に重みを付けます。

ノックアウト・ファクター

「ノックアウト・ファクター」の有無についても考えておかなければなりません。ここで言うノックアウト・ファクターとは、あらゆる面でいかに他社に優った提案をしても、あらかじめ定められた条件を満たしていなければその提案を却下する理由となる評価項目を指します。

逆に、他社の提案書より劣っている項目があってもそれらに改善の余地があり、かつ、ノックアウト・ファクターに定められた評価項目において優れていれば、それを提案した企業と取引する可能性が生まれます。

平たく言ってしまえば、ノックアウト・ファクターとは、不採用・採用の決め手となる評価項目を指します。具体的には、次のような性質を有する項目となり、予算の上限、契約形態、納期、損害賠償などの契約条件に関わることであったり、また、既存のシステム環境を変えることなくシステム構築を実施するといった技術的条件に関わることであったりします。

●価格
●顧客サービスを向上させる
●応答時間を短縮する
●生産性を向上させる
●運用経費を削減する
●情報へのアクセスを改善する

価格

ITに限らず、調達全般に必ずつきまとう最重要のノックアウト・ファクターとも言えるのが価格です。しかし、価格の評価は、できれば他の領域の評価が終わってから行うとよいでしょう。技術面や管理面の評価結果により、金額がいくら安くても落とさなければならない提案書があるかもしれないからです。

100点満点の提案というものはむしろ存在しないのが現実です。部分的に交渉して提案内容を要求通りに変えてもらうといったケースが多いと思います。しかし、評価者自身には、その提案を自身が担当する評価領域において肯定的にとらえるのか、それとも、否定的にとらえるのか、その責任において判断するよう促さなければなりません。

配点

採点に用いる配点についても工夫すべき点があります。というのも、評価が可もなく不可もなくといった場合、評価者は無難な点を付けてしまう傾向があるからです。5段階評価、3段階評価のように奇数の配点にすると、そうなるケースがままあるようです。評価者が肯定・否定どちらにもつかない採点をすると、評価の優劣が付けづらくなるので、避けた方がいいでしょう。

そこでどうするべきかと言いますと、次のような偶数の配点にして、評価者に判断を迫るのです。

求める要件を 0:満たしていない 1:部分的に満たしていない 2:ほぼ満たしているが、まだ再考の余地がある 3:満たしている

『出典:システム開発ジャーナル Vol.5(2008年7月発刊)
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