本連載は、システム開発ジャーナル女子部が、ITエンジニアの皆さんにとって役立つ情報をお届けするコーナーです。出産休暇・育児休業を取得中の社員が自宅にいても会社の情報を入手できるよう、SNSを立ち上げたINAX。後編となる今回は、同社で人事・総務統括部 人事・総務部 EPOCH女性活躍推進室 室長を務める桑原靖子さんに、同SNSの今後の展望を中心にお話を聞きました。

会社内の働くパパとママの生の声を掲載

SNSには、産休や育休などでお休みをされている方のほか、EPOCHの担当者、父親や母親になった人事部の方などが参加しているそうで、現在の登録メンバーは70名ほど。

INAX 人事・総務統括部 人事・総務部 EPOCH女性活躍推進室 室長 桑原靖子氏

月に3~4回更新しているというSNSの記事の内容は、在職中に見ることができたイントラネットの記事とSNS上でしか公開していないオリジナルの記事があるそうです。

イントラネットからは、社長のブログや新商品情報の提供をはじめ、異動情報、組織変更情報、今輝いているリーダークラスの社員や頑張っている中堅社員などを「EPOCHの新星」として紹介している記事を転載しています。

オリジナルの記事には、現役の父親と母親である社員の方に育児と仕事をどのように両立しているかをインタビューした「EPOCHの父」や「EPOCHの母」という記事があります。同じ会社の社員の方のインタビューということで、職歴などが育児休業後のキャリアパスを考える機会にもなると評判のようです。

育児休業中の社員向けSNSのトップ画面

携帯でアクセスできるから家事や育児をしながらの利用も可能

参加人数70名程度にもかかわらず、1ヵ月で2,000件以上のアクセスがあるいうのには驚きました。単純計算で、ほぼすべての登録メンバーが毎日アクセスしていることになります。

「この数値は、休業中の方々が"いかに社内の情報を必要としているのか"ということを物語っていると思います」という桑原さんは、SNSを始めてみてもっと休業中の情報提供が必要だと確信したそうです。「最初は、関係者がテストするためにアクセスしてるだけなんじゃないかとも思ったんですが(笑)、アクセスの分析情報を見ると、ちゃんと休業中のメンバー達が見ていることがわかり、あらためて驚きました」

SNSを利用する際、携帯またはPCいずれかのアドレスを登録する必要があるのですが、PCよりも携帯からのアクセスのほうが多いそうです。妊娠・育児中という忙しい時期に携帯でチェックできるという手軽さが、同社のSNSのアクセス数を伸ばしている理由かもしれませんね。

桑原さんはアクセス数を増やすべく、アクセス数の目標を数値化しているとのこと。まずは、目標値を下げないよう、記事の更新をするなどの工夫をし、それでも目標値より下がってきた時は新しい企画を考えるといった努力をしているそうです。

"卒業生"の参加でより内容の充実を図りたい

現在は主に会社側からの発信が多いので、メンバーからの書き込みを増やして双方向のコミュニケーションを活発にしていきたいそうです。「そのうちコミュニティができると思っているので焦ってはいませんが、"些細なことでよいので何でも質問してください"といった"大質問デー"などを作っているんです」と桑原さん。実験的なイベントを繰り返しながら、多くの方に必要とされるSNSを育てていくつもりだと話してくださいました。

2008年の5月に開始したSNSは、もうすぐ1周年を迎えます。今後は、育休から復帰してきたメンバーも登録をそのままにしておき、これから育児休業中のメンバーの良きアドバイザーになってもらうというよい循環を作り、さらに内容を充実させていこうと計画中だそうです。

「育児休業中、会社からの情報を得られないことで不安になる」というのは、筆者がこれまでインタビューさせていただいた働く女性達から最も多く聞かれる話の1つであり、復職へのキーでもありました。今回、INAXさんが選択されたように、SNSの活用は育児や介護を始めとする休職から復帰する際の大きな助けになりそうで期待が膨らみます。数年後のINAXさんのSNSを再び取材できる日を楽しみにしています。桑原さん、この度はありがとうございました!

執筆者プロフィール

藤城さつき(Satsuki Fujishiro)
コンピュータ関連業界で働く女性のためのコミュニティ「eパウダ~」を運営。男性が多いこの業界における女性の人間関係・働き方・生き方について日々模索中。株式会社タンジェリン( http://tangerine.co.jp/top.htm ) 代表取締役。