今回のテーマは、ズバリ「給湯室問題」です。最近は「お茶くみ」という作業そのものが職場から消滅しつつあるようですが、会社によってはまだまだ根強く残っているのではないでしょうか。IT系の企業では比較的少ない慣習だと思いますが、あなたの職場はどうですか? 男女を問わず「ウチの職場は関係ないよ」という人も、関係なくはありません。転職先がそのような職場だったらどうしますか? そこには知っておかねばならぬ掟(!?)があるのです。

職場の洗い物をする女性の気持ちとは?

ここで登場する女性は、実際に某ソフトウェア会社でSEとして働くA子さん。所属する開発チームは7名ほどの規模で、中途入社2年目の彼女はチーム内でトップクラスの技術力を持っています。チーム内で女性はA子さん1人です。

そんな彼女ですが、職場では男性社員の湯飲みやコップなどを毎日洗っています。こうした仕事を女性が行うのは社内の古くからのルールなのですが、A子さんが入社した時に前任の女性から引き継がれ、彼女もまた入社当時からずっとやってきたとのことです。

さて、A子さんの本音はどれだと思いますか?

食器洗いの気遣いに見える優しさ

筆者も独立する前、男性も女性も技術者である職場で、コップ洗いをしていたことがあります。その職場ではA子さんの例のように、「コップ洗いは女性(技術者)がしなければならない」ことになっていました。「このルール、誰が最初に決めたんだろう?」と冗談半分で古株の女性に素朴な疑問をぶつけてみたところ、課長(男性)から、「女性陣たちで交代でやって」という具体的な指示があったことが明らかになりました。

ただ、経験豊富なその女性によると、このようなルールの発生源は必ずしも男性上司の指示によるものだけでなく、職場によっては女性の側から「やはり女性がやらなくては」という声が上がって実施されているケースもあるのだとのことです。

筆者の経験では、女性だけが当番制で湯飲みを洗っている時、黙って目の前に置いていく人もいれば、自分のコップを自分で洗う男性もいて、その人の現場での人間関係と似ているなぁなんて思ったりしました。こういうところ、意外と女性は見ているんですよ。

考え方は人それぞれだけど……

今回の調査では、「女だからやる」という考えを持っている人は1人もいないという結果が出ました。背景として、最近のIT業界では、自動販売機やベンディングマシンを導入している会社、自身の飲み物はペットボトルなどで持ち込むというルールを設けている会社も多く見られるということがあるようです。

投票に参加したeパウダ?のメンバーにも、「今はコップ洗いをしていない」という人は多く、必然的に「もし他の職場で同じような選択を迫られたら?」と仮定して投票した人も多くなりました。注目すべきは「その他」に集まった票。女性は給湯室問題に対して、それぞれ明確な考えがあることがわかります。ちょっと面白いですね。

待ってます、その一言!

では、実際にコップ洗いをしている女性技術者の皆さんは、男性に対してどのような行動を望んでいるのでしょうか? 別途アンケートを行ったところ、すでにそのようなルールがある会社では女性は少数派のため、女性の口から「ルールを変えて」とは言いにくいという声も聞かれました。

彼女たちの本音は、「男性の方からセルフサービス制を提案してくれたらうれしい」「たとえルールで女性が洗うことになっていても、時々でいいから自分のコップは自分で洗ってくれたら」「"やっておいたよ"とか言ってほしい」と、男性のさりげない優しさに女性は期待していることがわかります。男性としては……評価を上げるこのチャンス(!?)を逃す手はないでしょう。

女性技術者の意見

●引継ぎの際に明確にして、絶対にやらないことを前提にします。【20代プログラマ、まるこ】
●ウチではお客様へのお茶出しと電話番も、やや「女性の仕事」化しています。これらは本当は新人の仕事なのですが、古参の女性社員がやってしまうので新人の男性社員がいつまでも覚えないまま。とはいえ古参の彼女も本当はやめたいようなのですが……。【30代SE、hm】
●コップを洗う工数を計算して、それに対する自分の仕事量を数値化し提案してみたらどうでしょう。女性がそんなことを考えていることさえも理解していない人がいっぱいいます。【40代SE、きらら】
●男女問わず、手が空いてる人が率先してやってほしい。【30代SE, MR】
●今の職場では、気付いた人がポットにお湯をくみに行くし、自分のコップくらいは自分で洗っています。【30代プログラマ、Tomo】
●私なら、前任者が退職後、自分だけの担当となった時に、身近な人たちに負担になっていることを相談し、各自で洗うかベンディングマシンを導入するかの提案をします。男性に問題提起してもらうのが理想ですが、男性が気付く可能性は低いと思います。【30代プログラマ、T.M】

執筆者プロフィール

藤城さつき(Satsuki Fujishiro)
コンピュータ関連業界で働く女性のためのコミュニティ「eパウダ~」を運営。男性が多いこの業界における女性の人間関係・働き方・生き方について日々模索中。株式会社タンジェリン代表取締役。

『出典:システム開発ジャーナル Vol.2(2008年1月発刊)
本稿は原稿執筆時点での内容に基づいているため、現在の状況とは異なる場合があります。ご了承ください。