GoogleとMicrosoftが、それぞれ「GOOG-411」と「Live Search 411」を開始した。携帯電話を使って、音声でローカル検索を行えるサービスだ。ほぼ同じ時期に正式サービスを開始したということは、先に市場を握られてはマズいという思いがお互いにあるのだろう。PCの便利なローカル検索に押されて電話番号案内サービス (北米では4-1-1)を利用する人が減少する中、逆にPC側からの音声案内サービス進出である。そこで今回は両社のサービスを使い比べながら、ネット時代に新たに投入された411サービスの魅力を探ってみる。
カタカナ英語にも対応する音声認識
通常、電話会社の4-1-1サービスを利用すると1~2ドルのコストがかかるが、GOOG-411とLive Search 411は無料で利用できる。その代わり人間のオペレーターは登場しない。ロボットが相手だ。理解できる英語をこちらが話さなければ、「理解できません」の繰り返しにはまってしまう。逆に言えば、日本語訛りの英語を喋っても問題なく理解してくれるようなストレスのないサービスの方が便利と言える。
検索のステップはどちらもほぼ同じだ。GOOG-411は1-800-466-4411、Live Search 411は1-800-225-5411に電話をかけると、まず検索対象の都市と州が聞かれる。例えば「マウンテンビュー、カリフォルニア」と指定すると、次にビジネス名またはビジネスの種類の指定が求められる。ちなみにGOOGの声は男性、Live Searchは女性である。米国人に言わせると、Live Searchの女性の方が話し声に近くて親近感がわくそうだ。逆にGOOGの男性は無機的な感じがするという。またGOOGはこちらが話した言葉を毎回リピートしてくれる。間違いを避けるための念入りな確認だが、その不自然な繰り返しも無機的に思われる理由になっている。Live Search 411はリピートすることなく、どんどん進んでいく。まるで会話しているようだ。ただ英語がネイティブではない自分には、無機的なGOOGの方が聞きやすく、また発音が不確かな地名や店名を指定した時はリピートしてくれた方がありがたい。
まずローカル検索の定番「Pizza」を探してみたところ、どちらも簡単に結果リストまでたどり着けた。ただGOOGではトップが「Frankie Johnnie & Luigo Too」で、2番目が「Amici's East Coast Pizzeria」と、マウンテンビューならではのピザ屋がリストされたのに対して、Live SearchはトップがRound Table Pizza、2番目がPizza Hatと有名ピザチェーンが並んだ。どちらがうれしいかは人それぞれだと思うが、何となくこんなところにも企業カラーが現れているような感じがして面白い。また「Pizza」ではなく、「Pizza Delivery(ピザ宅配)」で試したところ、GOOGは受け付けたが、Live Searchは対応してくれなかった。
感動したのは、ゆっくりはっきりを心がけて話したらどちらも自分の日本語訛りの英語を問題なく理解してくれたことだ……なんて最初は思ったのだが、思いっきりカタカナ英語で話しても、どちらもちゃんと対応した。それぐらい訛り対応が優れている。ちなみに日本語レストランの名前を、ネイティブの日本語発音で試してみても問題なしだった。「寿司」を「シュシ」とか言う必要はない。認識力はどちらも十分。軍配を上げるとすれば、現時点ではGOOG……かな。
一方、ナビゲーションはLive Searchの方が使いやすい。たとえばGOOGはリストを延々と読み続けるが、Live Searchは3つごとに区切って次の操作を確認してくれる。
GOOGの機能はシンプル。Live Searchは多機能だ。例えば「Other Services (他のサービス)」と指定すると、天気や映画の上映スケジュールなども確認できる。ただし機能が多すぎると失敗するリスクも高くなり、一度失敗すると最初からやり直しになってしまう。その点、GOOGはシンプルな機能を間違いなく利用できる。
結果は聞かずにテキストメッセージ
どちらのサービスも結果が読み上げられている間に「Map it」や「Text me」と指定すると、SMSで結果を電話に送信してくれる。スマートフォンや多機能フォンならばメッセージに含まれる電話番号をクリックすれば電話をかけられるし、マップのURLをワンクリックするだけで地図にアクセスできる。これが、とても便利だ。読み上げられる結果をすべてメモすることなんてできないし、マップと住所を照らし合わせるのも面倒な作業である。それをテキストメッセージがすべて解決してくれる。結果をマップに展開すると、文字情報が画になってパァ~~っと開けたような感動だ。
Jingle Networksが「Free 411」で携帯電話によるローカル検索を開拓し始めた時のターゲットは、モバイル環境で音声通話しか利用できない人が主なターゲットだった。GOOGやLive Searchは、むしろ携帯電話でWebを利用できる人を狙っているのだろう。携帯電話のWebブラウザでもローカル検索はできるが、シンプルな検索ならばブラウザを起動して検索語を入力するよりも、411サービスを使った方が手っ取り早い。どちらもモバイルにおいて音声が将来重要な入力、操作手段になると考えているのは間違いない。特にMicrosoftはコントロールを重視しているようで、そのため機能が豊富になりがちなのだろう。一方検索を重んじるGOOGは、正確な操作を追求してシンプルになっているように思える。同じようなサービスでも、その差が使い勝手や結果に表れている。そのため、どちらが便利かという意見を集めてみても、同じという意見は少なく、そしてどちらかに評価が偏ることもない。メリットとデメリットの違いが、サービス選びの分散につながっている。
どちらが好みにせよ、411サービスはスマートフォン/ 多機能フォン・ユーザーにとって便利なサービスであり、そのようなユーザーに浸透することで、新たな携帯サービスやターゲット広告のチャンスが生まれるように思える。1つ気になったのは、GOOG-411とLive Search 411で操作の言葉が微妙に異なる点だ。ユーザーを悩ませないためにも操作に関しては、サービスが異なっても同じ言葉で同じ操作ができるように統一してほしいところだ。