本連載では、今まさに日本市場進出を目指しているスタートアップ企業たちを紹介している。今回は、軽量の心電図システムを提供するQT Medicalだ。

心電図システムを軽量化し、測定を容易に

2013年に米国で創業し、2015年に台湾に進出したQT Medicalは、医療レベルの12誘電心電図(ECG)システム「PCA500」を提供する企業だ。「製品の最大の特徴はわずか67gと、非常にコンパクトな設計であること」だと、同社 ヴァイスプレジデントのジャッカル・チェン(Jackal Chen)氏は言う。「心電図を測定する機械」と言われると、通常は病院に設置されており、専門家が操作する、物理的に大きなものがイメージされる。しかし、PCA500はコンパクトであるがゆえ、自宅はもちろん、救急車や飛行機の中などでも使用可能だ。使用方法もPCA500に接続した専用の電極を皮膚に貼るだけと非常にシンプルである。計測結果は専用のアプリか、クラウド上で確認できる。

  • QT Medical ヴァイスプレジデントのジャッカル・チェン氏(Image credit:DIGITIMES)

PCA500の開発背景には、世界的な高齢化や心臓疾患を持つ人の増加などがあるとチェン氏は話す。

「ECGの需要は増しているのに、病院でしか使えず、専門家による操作が必要では、需要に応えることができません」(チェン氏)

そこで同社は独自の技術を用いた電極パッドを開発、さらにIC(Integrated Circuit:集積回路)技術を活かし、ECG本体の軽量化を行った。同氏は「製品を小さくすれば壊れやすくなる。この問題は使用する素材を工夫することで解消した」と説明した。

日本市場進出に向けた課題と展望

チェン氏は、2025年頃を目途に、日本支社を設立したいと言う。

「日本も高齢者が増加し、在宅医療の必要性や、高齢者向けケア製品の需要が高まっています。我々の製品は、日本市場の今のニーズにマッチしていると考えています」(チェン氏)

日本市場進出に向け、解決すべき課題もある。その1つが、医療機器に関する規制の違いだ。同氏は「日本の規制は台湾よりも厳格であり、参入の準備には慎重さが求められる」と述べた。同社は今、課題解決に向け、日本で臨床できる機会を得るため、医療機関との連携を進めている。ここで得た知見を製品に反映し、ローカライズしていく予定だという。

また、米国ではすでに提供を開始している「XpressECG」を日本でも提供したいという考えもある。XpressECGはWebサイトで心電図キットが注文できるサービスだ。患者は自宅に届いたECGで心電図を測定し、その結果をクラウドにアップロードする。そして、そのデータを見た医師が遠隔で診断を下すという仕組みだ。チェン氏によると、ECGの個人利用普及率はわずか0.5%程度だと言い、「今後はこのようなサービスも求められる」と語った。