台湾の半導体製造企業・TSMCが熊本に工場を建設するなど、日本でも台湾企業の進出が増えつつある。また、テクノロジー分野では台湾発の新たな技術を活用した商品やサービスの露出も増加している。では実際、台湾におけるスタートアップ企業の現況はどうなっているのか。今回はスタートアップ支援ブランド「Startup Island TAIWAN」の事務局に話を聞いた。
政府主導でスタートアップを支援する台湾
Startup Island TAIWANは2019年、台湾の国家発展委員会とスタートアップコミュニティが共同設立したスタートアップ支援ブランドだ。フランスが政府主導で進める「La French Tech」の取り組みを参考に、台湾のスタートアップ企業を国際的に強化し、一貫性のあるイメージを構築することを目的に運営されている。
そもそも台湾は、かねてよりIT活用に力を入れてきた。政府が「アジア・シリコンバレー推進プロジェクト」と銘打ったプロジェクトを推進し始めたのは2016年のことだ。以来、「IoT産業のイノベーション開発」と「イノベーション創業エコシステムの健全化」を主軸に置き、プロジェクトを進めてきた。
さらに2020年に台湾で5G通信サービスが正式に商用化されたことを受け、2021年には「アジア・シリコンバレー2.0」として、「AIoT」と「イノベーション起業」を新たな二大主軸に設定。2025年までに台湾のIoT 関連産業の生産額が世界シェアの5% に達することを目標としている。
その実現に向けては、企業買収合併法の改正や、非対称売買合併の適用範囲の緩和といった法規面での施策から、政府によるスタートアップ企業への直接投資、国際展示会の開催まで幅広い内容の取り組みが行われている。Startup Island TAIWANの設立も、その一環だ。
日本市場において台湾のスタートアップ企業が発揮する「強み」
政府からの支援も受け、活気づく台湾スタートアップ業界では、日本市場への進出も視野に入れている企業が多いという。では、日本市場において、台湾のスタートアップ企業はどのような強みを持っているのだろうか。
Startup Island TAIWAN事務局によると、それは「製品技術の革新的な研究開発能力と商品化能力」だという。すでに台湾は半導体産業と半導体回路設計の生産額は世界でもトップクラスだ。高度な産業サプライチェーンを有し、インフラも整備されているため、優れたイノベーション人材が高い研究開発能力を発揮しやすいのだという。また、政府主導での取り組みが進んでいるため、スタートアップ企業が発展しやすい環境が整っており、アイデアを商品化する能力も育ちやすいそうだ。
また、もちろん台湾の立地環境自体も大きな強みだ。台北から東京、ソウル、北京、香港、シンガポールといったアジアの主要都市へはわずか2~5時間でアクセスできる距離である。
こうした恵まれた環境下で、台湾のスタートアップ企業たちは今、着々と力を蓄えている。次回以降では、さまざまなイノベーションを持って日本市場進出を狙う台湾スタートアップ企業について、具体的に見ていきたい。