売上データ日報を作ろう

前回まで、POSシステムから上がってくる売上データを自動的に処理して売上データ日報を作成する取り組みを進めてきた。ここから先は、プログラミングの要素が濃くなってくるので、作成の大枠を説明するに留めておく。さっと作り上げてしまおう。

まず、売上データ日報のテンプレートファイルを用意する。こんな感じで作っておけばよい。

  • 売上データ日報テンプレート

    売上データ日報テンプレート

  • 売上データ日報テンプレート - 印刷プレビュー

    売上データ日報テンプレート - 印刷プレビュー

あとは前回までのフローに、次の処理を追加する。

  • 売上データ日報テンプレートをコピー
  • 売上データ日報に貼り付け
  • まだコピーしていない売上データ1ページ分のデータコピー
  • 売上データ日報に貼り付け
  • 売上データ日報に新しいシートを追加し、新しいシートをアクティブにする
  • コピーするデータがなくなるまで上記処理を繰り返す

表データと数値データをそれぞれコピーして貼り付けることで、日報を作成する、といった感じだ。これまで人間が手動でやっていた内容をPower Automateで自動化するという内容そのままになっている。

ざっとこれらフローを追加すると、次のようになる。

  • 必要なフローを追加した状態

    必要なフローを追加した状態

起動したMicrosoft Excelのうち不要なものを閉じたり、最後に表示するシートを選択したりと、いくらか利便性に関与するアクションも追加してある。あとは好みにわせて、いろいろとアクションを追加すればよい。

実行して動作を確認しよう

早速、フローを実行してみよう。

  • 作成したフローを実行

    作成したフローを実行

最初にデータが収められたCSVファイルを選択する。

  • 売上POSデータCSVファイルを選択する

    売上POSデータCSVファイルを選択する

あとはMicrosoft Excelが順次起動してきて、自動的にコピーやらペーストやらが目まぐるしく行われていき、最後に次のウィンドウが表示される。

  • フロー実行結果 - 5つのシートを持つMicrosoft Excelデータが生成される

    フロー実行結果 - 5つのシートを持つMicrosoft Excelデータが生成される

5つのシートがあるが、最後のシートは空だ。Sheet1からSheet4までが日報データになっている。空のシートを作りたくなければ、そのように条件分岐処理を加えればよい。

  • Sheet3の内容 - Sheet1の内容とは異なっていることを確認できる

    Sheet3の内容 - Sheet1の内容とは異なっていることを確認できる

印刷プレビューで確認すると、次のようになっていることがわかる。

  • 作成した日報のプレビュー

    作成した日報のプレビュー

この方法で表のデザインまでコピーしようとした場合、テンプレートファイルの作り方を少々工夫する必要があるのだが、ある程度までならデザインを保つようにすることができる。

このフローの作成には1時間もかかっていない。ちょっと作業するだけで、こうした処理の自動化が可能だ。詳しくなればなるほど、Windowsを自動的に操作する面白さと、仕事を効率化する魅力を感じてもらるはずだ。

これからは自分で作ってみよう!

これまで、Windowsを自動化する機能である「Power Automate」(Power Automate for desktop)について取り上げてきた。最初はMicrosoftの提供するチュートリアルを真似したり、それらをちょっと書き換えたりすることでPower Automateについて学んでいった。

次に、Microsoft Excelの操作を自動化するという観点から、Microsoft Excelを使った処理を自動化する取り組みを行ってきた。Microsoft Excelはビジネスで使うことが多いアプリケーションだ。自動化できればさまざまな業務の効率化を進めることができる。学ぶ上でもモチベーションの高い対象ではないかと思う。

Power Automateは「ローコードプラットフォーム」をうたっているものの、必ずしもそれはコーディングが不要であるということは意味していない。プログラミングの経験があるユーザーが有利なのは間違いないし、ローコードプラットフォームという言葉がもっている理想ほど、簡単なものではない。

C#やC++といったプログラミング言語を使うよりははるかに簡単なのは事実だが、プログラミングの経験を持たないユーザーがいきなり自由自在に扱えるほど簡単なものでないことはこれまで取り上げてきたとおりだ。

しかし、それらを加味してもビジネスマンが取り組む価値がある機能であることは間違い。GUIアプリケーションのオートメーション化には専用のアプリケーションが必要だが、これまでは有償のアプリケーションやソリューションを使う必要があったため限界があった。

しかし、Power Automateが無償で使えるようになったことで、Windowsにおける自動化は新たな世代に入ったと言える。これからはPower Automateを使ってWindowsの処理の自動化が広く行えるのだ。

今後Power Automateがどこまで浸透するかは、どれだけ便利な「アクション」が追加されていくかにもかかっていると思うが、そのあたりも含めて今後の発展が期待される。

連載としてPower Automateの使い方を取り上げるのは今回が最後だ。短い連載だったが、Power Automateの便利さと強力さが少しでも伝わったのなら幸いだ。

これからはMicrosoftの提供するチュートリアルを超えて、自分の作業の自動化に挑戦してもらえればと思う。最初の進みはゆっくりでも、積み重なっていけば多くの作業が自動化できるようになっているはずだ。今後もPower Automateを使った自動化を楽しんてもらえれば幸いだ。

参考