新型コロナウイルス感染症の到来は、オフィスの在り方を再定義する大きなきっかけとなった。

オフィスをなくし完全リモートワークに移行する会社や、あえてオフィス環境に投資しハイブリッドワークを実現する会社など、取り組みは十人十色だ。「出社する場所としてのオフィス」の時代は終わり、世界中の企業はオフィスに新たな付加価値を見出そうとしている。

本連載では、先進的な働き方・オフィス構築を行っている企業に潜入し、思わず「うらやましい」と声を漏らしてしまうその内容を紹介していく。「これからのオフィスどうしようか……」と考えている読者の手助けにもなれば幸いだ。

第38回となる今回は、民放公式テレビ配信サービス「TVer」の運営を主力サービスとしているTVerのオフィスを紹介する。TVer コーポレート本部 総務部 部長の今西一博氏、同部の島 弘樹氏に話を聞いた。

  • 左から島氏、今西氏

    左から島氏、今西氏

なぜTVerはオフィスを移転した?人員増加とBCP強化の背景

TVerは2025年12月1日付けで新オフィスへ移転した。旧オフィスは新橋にあったが、新オフィスは溜池山王の赤坂グリーンクロス内に居を構えている。

移転の経緯について今西氏は「サービス規模拡大に伴う人員増加」が大きかったと語る。

「ありがたいことに『TVer』は、2025年10月26日にサービス開始10周年を迎えました。この10年の間、サービスの成長に伴って会社も着実に成長を続け、現在では200人を超える社員を抱える企業にまで、大きく成長しました。そのため、より生産性の高いオフィス環境が必要となっていました」(今西氏)

  • 移転の経緯を語る今西氏

    移転の経緯を語る今西氏

さらに、BCP(事業継続計画)強化の観点からも、より安心に業務を行えるオフィスビルへの移転が求められている部分もあったそう。

このような背景で移転された新オフィスには、グループ会社である『TVer DATA MARKETING』も別フロアに入居。グループ一丸となってTVerサービスのさらなる連携強化を目指していきたいという。

なぜ出社したくなる?「来れば何かに出会える」オフィス設計とは

実際にオフィス内に足を踏み入れてみると、オフィス内は「TVerブルー」を基調とした統一感のあるカラーリングでまとめられた爽やかな空間。

旧オフィスではカラーリングなどは意識していなかったそうだが、新オフィスに移転するにあたり、ブランドアイデンティティを明確に反映させた空間づくりを行った。

  • 「TVerブルー」を基調とした統一感のあるカラーリング

    「TVerブルー」を基調とした統一感のあるカラーリング

  • 会議室も「TVerブルー」

    会議室も「TVerブルー」

TVerならではの専用ルーム「CTV Lab.」とは?

新オフィスの中にはTVerならではの「CTV Lab.」という部屋もある。

「CTV Lab.」は、各メーカーから新しい機種のテレビが販売されると、その機種でも問題なくTVerを視聴できるか検証・確認を行うための部屋だ。

部屋の中には無数のテレビが所狭しと置かれていて、その中央で社員たちが議論を重ねていた。

  • 「CTV Lab.」 中には無数のテレビが置かれている

    「CTV Lab.」 中には無数のテレビが置かれている

偶発的なコミュニケーションをどう生む?働き方と満足度の変化

また「植物の配置」や「社食」といった社員からリクエストが多かったコンテンツを導入するなどこだわりが詰まっている。

  • 社員からリクエストの多かった植物で社内でも緑を感じられる

    社員からリクエストの多かった植物で社内でも緑を感じられる

島氏は、新オフィスのオフィスデザインについて「偶発的な出会いが生まれる場の創出を重視している」と説明した。

「『TVer』というサービス自体が『来れば何かに出会える』サービスであることから、オフィスでも同様の価値を提供したいという考えがありました」(島氏)

  • オフィスのコンセプトを語る島氏

    オフィスのコンセプトを語る島氏

新オフィスの開放的な環境や偶発的なコミュニケーションの機会により、オフィスに対する満足度が向上しているという。

「急激に社員数が増えたことから、テレワークが中心だと顔と名前を一致させるのが難しいという課題がありました。そのため、出社して部署の垣根を越えて、コミュニケーションを取ることができるオフィスを目指しました」(今西氏)

さらにオフィスのこだわりとして、安全性と機能性の両立を図り、セキュリティ・防災機能を担保しつつ、壁の少ない開放的なフロア設計を採用していることも挙げられた。

新オフィスはどう進化する?「みんなで育てる」運用へ

現在、総務では会議室やミーティングスペースの稼働率を調査しているところだという。最初の調査は3月で終了したそうで、この調査の結果をもとに、オフィスをより快適な空間へアップデートしていきたい考えだ。

「オフィスのことは、私たち総務部が主体になって動きますが、あくまで『オフィスをみんなで育てていく』という意識を大切に、社員1人ひとりがよりよい環境で働ける仕組みを作っていきたいです」(今西氏)

最後に、島氏に今後の展望を聞くと、「人事から総務への異動経験を活かしたい」とした上で「守りに加えて攻めの総務として社員の要望を積極的に取り入れた環境づくりを続けていきたい」と熱い想いを教えてくれた。

テレビ視聴の常識を変えたTVer。今後もこの新たなオフィスからさまざまなコンテンツが発信されていくに違いない。