コロナ禍を経て、オフィスの在り方を見直し、オフィスを刷新する会社が増えている。そこで本連載では、先進的な働き方・オフィス構築を行っている企業に潜入し、思わず「うらやましい」と声を漏らしてしまうその内容を紹介している。「これからのオフィスどうしようか……」と考えている読者の手助けにもなれば幸いだ。→過去の「隣のオフィスは青く見える」の回はこちらを参照
今回は、2024年9月に移転したばかりのSansanの新オフィスを紹介しよう。同社はJR渋谷駅に隣接する「渋谷サクラステージ」の28~32階にオフィスを構えており、そこには緑が多く開放的な空間が広がっている。
リモートワークを併用しつつ、オフィスを基点とする「オフィス・セントリック」な働き方を目指すSansan。「出会いからイノベーションを生み出す」というミッションを掲げる同社のオフィスには、“出会い”を生み出すさまざまな仕掛けがあった。
これから紹介するオフィスの素晴らしさにすっかりと魅了されてしまった筆者。「ここで働かせてください!ここで働きたいんです!」と、どこかで聞いたことのあるセリフを言いたくなったが、大人なので必死に堪えた。
コンセプトは「Nature」、約100種類の観葉植物を配置
28階のスカイロビーからエントランスを抜けると、開放感のあるスペースが広がっていた。「Park」というオープンエリアで、100人以上の社員が同時に利用できる広さがあるという。天井も高く、渋谷駅周辺を一望できる大きな窓からの景色も格別だ。
新オフィスのコンセプトは「Nature」。約100種類もの観葉植物がいたるところに置かれており、自然を感じながら過ごすことができそうだ。国土交通省が2004年に行った調査によると、緑視率(人の視界に占める緑の割合)が高まるほど安らぎを感じる人が多くなるとされている。
集中力を高めるのに理想的な緑視率の割合は10~15%といい、筆者の肌感覚では、Sansanのオフィスの緑視率はちょうどそれくらいだったように思う。
座席のフレキシブルさもすごい。ふかふかのソファ席や窓際の席、人をダメにするクッションやキャンプの時に使いそうな椅子など、「いつもと違う場所で、集中して業務に取り組みたい」という社員のニーズに応えている。
“出会い”を生みだすさまざまな工夫
奥に進むと、大きなデジタルスクリーンが現れた。横幅12m×縦幅2.4mほどの大型のスクリーンで、スライドや映像を投影できる。全体会議や内定式といった大型イベントが行われる場所としても使われている。
2024年11月には、渋谷サクラステージの本格開業を祝った「渋谷阿波おどり powered by Sansan」の会場にもなったという。
ふと、オフィスにある大きな壁に目を向けてみると、そこにはSansanが毎年掲げている年間テーマが記されていた。例えば、2020年に掲げたテーマは「Lead the customer」。社員一人ひとりが一段高いリーダーシップを持って、リーダーシップを意識して、仕事に向き合っていく一年としたいという想いが込められている。
そして、Parkの一画には「ヨリアイ」という張り紙が貼ってある大型の冷蔵庫もあった。ヨリアイとは同社が2022年11月から開始した社内コミュニケーション施策で、終業後に専用冷蔵庫からドリンクを取り、乾杯を交わしながら集まった社員と交流できる。社内の出会いからイノベーションを生み出していくことを目的としているという。無料でお酒が飲めるなんて……。うらやましい。
さらに奥に進むと、イベントスペースの「Garden」や来客用の会議室が並んでいる。会議室には、「Aurora」や「Beach」、「Canyon」のように自然にまつわる名前がつけられており、会議室名は社員から募集して決められたという。
執務エリアは完全フリーアドレス、個室は180室以上
29~32階の4フロアは主に執務エリアとなっている。各フロアへは、エレベーター以外にも内階段を使って移動できる。
執務スペースは全席フリーアドレスで、その日の仕事内容に合わせて自由に席を変えられる。「立った方が集中できる」という人向けに昇降デスクも用意。
また各フロアには、社内用の会議室やWeb会議用の個室、向かい合ってカジュアルにディスカッションできるファミレス席もある。本社だけで合計180室以上もの会議室と個室が設置されているとのことだ。
新オフィスを案内してくれた広報担当者の後藤さんは、「Sansanでは、どの部署も、生産性を高めるオフラインコミュニケーションと、リモートワークを掛け合わせて業務を行っています。事業活動を通じたお客様との出会いだけでなく、従業員同士がオフィスで出会い、オフラインでのコミュニケーションを大切にしながら、事業成長を加速させていくことを目指しています」と、話してくれた。
素敵すぎるオフィスに圧倒されてしまった筆者。自社オフィスへの帰り道の足取りはかなり遅かった。慣れない渋谷駅周辺の複雑さも相まって、大手町まで帰るのに1時間以上はかかった気がする。
徳島県出身で阿波踊り経験者という強みを生かして「ここで踊らせてください!」と、後で後藤さんにメールを送ってみようと思う。