本連載では、先進的な働き方・オフィス構築を行っている企業に潜入し、思わず「うらやましい」と声を漏らしてしまうその内容を紹介していく。「これからのオフィスどうしようか……」と考えている読者の手助けにもなれば幸いだ。
第27回となる今回は、ガムやオーラツーミーといったオーラルケア商品をはじめとした大手日用品・トイレタリー用品メーカーであるサンスターのオフィスを紹介する。
新オフィスは「コミュニケーションの良い村」
今回、筆者が取材に訪れたサンスターのオフィスである「サンスターコミュニケーションパーク」は、2021年から大阪府高槻市明田町に居を構える、サンスターの日本のグループ各社の本社機能・営業、マーケティングが入居したオフィスだ。
同オフィスは、400人前後の社員がともに「日常生活の中で独自の生活文化を育む場」として設立された施設で、オフィスではなくコミュニケーションの良い「村」と捉え、村の働き方や空間の在り方を皆で考えていくことをコンセプトに設定している。
この村を実現するためのキーワードとして「健幸(健康・清潔)」「家族(オープン・多様性の集合)」「イノベーション(繊細・精密)」という3つを挙げている。
自由な働き方ができるスマートオフィス
1階は「社内・顧客とのコミュニケーションを促進」をテーマに、「セミナーホール」「体験ショールーム」「生活者モニタールーム」「カフェ・レストラン」といった施設が設置されている。
体験ショールームは、サンスターと生活者の距離を縮め、社員×商品×生活者がつながることによる価値を創出するための場所。サンスターの商品が陳列されているほか、商品のデモンストレーションや体験イベントを通じて、モノづくりへの想いを伝達する取り組みを行っている。
生活者モニタールームは、実際のバックルームからマジックミラー越しやカメラ越しに生活の様子を観察することができるスペースだ。
2~3階は「自由な働き方ができるスマートオフィス」をテーマに、原則フリーアドレス制を導入している。「組織や立場を超えて、コミュニケーションを活性化する」「仕事内容に応じた、最適な環境を選んで仕事に取り組み、生産性向上を目指す」「ミーティングの効率化を目指し、スタンディング、シースルー会議の場所を増やす」という3点の達成を目指しているという。
「新たなハイブリッドワークを実現するために、サンスターコミュニケーションパークでは音響や照明にもこだわっています。照明はサーカディアンリズム(生物に存在する約24時間周期)に順応するべく、時間帯に合わせて暖色と寒色を使い分けています。また、音響に関しては、通常在席する執務スペースでは適度な静けさ、コミュニケーションスペースでは適度なにぎわいの中で話しやすさを確保できる作りになっています」(廣田氏)
健康を社内から社会へ
サンスターは社是に「常に人々の健康の増進を生活文化の向上に奉仕する」という文言を掲げており、サービスとして顧客に提供しているだけでなく、社内の健康経営にも注力している。
「健康関連事業に関わる従業員1人ひとりがまず"健康であるべき"」という創業家2代目の考えのもと、従業員への健康投資を開始。
1971年に、健康管理(疾病予防・早期発見・治療)から体力作りまでを担う「サンスター健康開発室」を設置し、健康診断(口腔健診含む)・体力テストの結果から、治療推奨・健康意識啓発・体力増進指導を行い始めた。
1976年には、家族を巻き込んだ、生活習慣病予防の重要性啓発・対策指導を行う「成人病友の会」を結成。1985年には、福利厚生施設である「サンスター心身健康道場」をオープンさせた。
「サンスター心身健康道場は、人間が本来持っている真の健康力『自然治癒力』の向上を目指して、従業員が生活習慣の改善による心と身体の健康作りを学び、体験する場として設立されました。『病気治しは癖直し』という考えのもと、生活習慣の改善に取り組む気付きを提供しています。入門者数は延べ1万人にも上ります」(大場氏)
社員の健康づくりに関する施策は、それだけに留まらず、「定期健康診断および特殊健診の強化」「健診フォロー対策の強化」「女性特有の健康課題への対応」「社員健康意識向上の施策強化」などにも積極的に取り組んでいるという。
オフィスの1階には健康道場の食事法を手軽に体験できるレストランが設置されており、「スマートミール認証のランチ」などを楽しむことができる。筆者が訪れた日には、大豆製品・ソイミート使用の「高野豆腐の炊き合わせ&道場かき揚げセット」が提供されていた。
サンスターのオフィスのこだわりはオフィス内だけに留まらない。サンスターコミュニケーションパークの敷地内には広大な屋外空間が広がっているのだ。
この屋外空間には、交流エリアとして遊歩道やレストランの食事を楽しむことができるテラスが設置されており、自然を感じながらコミュニケーションを取ることができる。
2023年11月に行われた社員と家族向けの開放イベントでは、社員の子どもたちが走り回る様子も見ることができたようで「交流の場」としてのオフィスの在り方を実感したという。
最後に廣田氏は以下のようにオフィスとしての今後の展望を述べた。
「サンスターコミュニケーションパークは、多様な働き方と生活者との対話によって飛躍的な発展・イノベーションが起こる場として、その役割に期待しています。コロナ禍の影響で思うように社外の方との積極的なコミュニケーションはまだ取れていませんが、今後は社内外問わず、交流を持てる場にしていきたいと思っています」(廣田氏)