本連載では今回より、応援シリーズ3つ目の製品である「給与応援Lite」を取り上げる。初回となる今回は、導入前の基礎知識として、給与計算ソフトのメリットについて、給与に関連する規則や制度、およびそれを守るための作業内容を紹介しながら解説していこう。

給与計算ソフトを導入するということ

給与計算ソフトには、非常に多くの種類が存在する。給与計算という業務は、労働基準法をベースに計算した支給額から所得税や社会保険料などの控除項目の計算をするという、法的な制約の強い業務なのでパッケージソフトウェアとして提供しやすいジャンルなのであろう。

だからと言って、「どれでもよい」という訳ではない。操作性はもちろん、異なる業態に対応できる柔軟性が必要になる場合もあるだろうし、何といっても税法や社会保険などの改正に対し、迅速にしかも簡単、正確に対応をしてもらえないと困ることになるのは私たちユーザーだ。

給与計算に関する業務は実にたくさんある。小規模な企業では、給与計算の専門家などいないのだ。経理や請求管理、その他さまざまな庶務的な業務を担当している人が、「片手間に」給与計算もしている……こんな会社が多いはずだ。

よって、給与計算ソフトは、簡単であり、しかも基本データさえ入力しておけば後は全ての帳票類や手続書類が完璧に作成されるという要件を満したものである必要がある。

給与計算に関する業務

給与は、労働基準法に準じて会社の定めた就業規則や賃金規定などをもとに、労働の対価として支払われ、労働者の生活の糧となる重要なものだ。給与事務を担当する人は、毎月の給与計算はもちろん、年間を通して、ミスや遅滞することなく慎重に行わなくてはならない。そのため、給与に関わりのある規則や制度をある程度は知っておく必要があるので、まずは簡単に整理してみよう。

給与には、労働基準法や健康保険法、厚生年金保険法、労働保険の保険料徴収に関する法律、介護保険法のほか、所得税法や地方税法など、さまざまな法律や規則、制度が関わっている。

給与と規則や制度との関わりは、一般的な給与明細から整理すると次のようになる。

項目 法律・制度
支給項目 基本給 労働基準法(就業規則や賃金規定)
時間外手当
家族手当
交通費など
勤怠項目 出勤日数
欠勤日数
有給休暇など
控除項目 健康保険料 社会保険制度(健康保険法・厚生年金保険法・労働保険の保険料徴収に関する法律・介護保険法)
厚生年金保険料
介護保険料
雇用保険料
所得税 源泉徴収制度(所得税法)
住民税 特別徴収制度(地方税法)

労働基準法

労働基準法は、労働条件の最低基準を定めた法律で、賃金や労働時間、休憩や休日、有給休暇、災害補償など、労働者の就労全般について定められている。労働時間の限度を1週40時間、1日8時間(法定労働時間)とし、これを超えた時間外労働とは、2割5分以上の割増賃金、つまり残業手当が必要になる。

ただ、法定労働時間通りの勤務体制をすべての会社が採用できるものではなく、別に変形労働時間制も認められている。1週間単位の非定型的変形労働時間制や1ヵ月単位の変形労働時間制、1年単位の変形労働時間制、フレックスタイム制などがあり、それぞれのルールが決まっているが、すべてを理解するのはほぼ無理だ。

社会保険制度

社会保険制度とは、病気やケガ、障害、死亡、老齢、失業などが起きたときに、保険制度の加入者やその家族に対して保険給付を行い、生活を保障するためのもので、さまざまな保険によって構成されている。

このうち、健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、雇用保険料は、給与から控除される「法定控除」といい、給与または賞与から保険料を控除し事業主がまとめて納めている。健康保険料、介護保険料及び厚生年金保険は、社会保険事務所が事務の窓口となり、雇用保険料は、各地域の労働基準監督署が窓口となっていて、手続きも煩雑だ。

源泉徴収制度

源泉徴収制度とは、給与等を支払う際に、所得税分を差し引いて支払い、徴収した所得税を支払者である会社がまとめて、税務署に納税する制度だ。この「源泉徴収制度」により、給与等から差し引かれた所得税を「源泉所得税」という。源泉税額は税額表があり、計算式も決まっているので、計算はそれほど苦労しない。

煩雑なのが、支給額のうち所得税の対象とならいない「非課税給与」の取り扱いだ。例えば、通勤交通費が支給されている場合、交通機関を利用しているのであれば100,000円以下までは非課税だ。ほかにも細かい規定があり、食事費や慶弔費、レクリエーション費用なども非課税となる。

また、源泉徴収する税額は、所得税だけでなく住民税もある。源泉所得税は給料が支払われるその所得にて源泉徴収をするが、住民税は前年の所得に対する税金の後払いであり、これも業務を煩雑にしている一つだ。

住民税は、会社が毎年1月31日までに各従業員の居住している市区町村に提出する「給与支払報告書」によって行い、市区町村はこれをもとに住民税を計算する。毎年5月31日までに「特別徴収税額通知書」が会社に送付されるので、社会保険料や所得税と違い会社で税額を計算する必要はない。さらに、源泉所得税の徴収する税額は、あくまでも概算額なので調整が必要になり、これが年末調整となる。

給与計算担当者のイベント

給与計算は、所得税の税額計算がその主目的の1つだから、1月から12月の暦年が基準になる。ただ、多くの会社では、4月から3月を会計年度としているのでズレがあり、慣れない業務担当者は戸惑うこともある。

給与計算業務の年間カレンダー

また、給与計算業務の担当者には、大きな「お祭り」が年2回ある。そのうち最大のお祭りは、「年末調整」だろう。

年末調整は従業員1人1人の1年間の所得を計算し、源泉税の過不足も計算し、これを調整した給与の支給計算をしなければならない。年末調整の業務は、給与の支払者に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出してもらうことからスタートする。これを回収し、チェックするだけでも大変なのだ。

もう1つの「お祭り」は社会保険の「報酬月額算定届」だ。社会保険料の改定の資料を7月の初旬に社会保険事務所に届けなければなりない。つまり、年間を通した業務スケジュールを理解していなければならないが務まらない。

毎月毎月の給与の支給業務にも業務項目は多い。

毎月の給与計算業務

とにかく、給与計算に関する業務は煩雑だ。本当は片手間にできる業務じゃない。また、もうすぐ年末調整の準備を考えなければならない最も忙しい時期に突入する。これを期に、給与計算ソフトを導入または買い替え(リプレース)しようと思うケースが多いはずだ。

そこでお勧めなのが「給与応援Lite」である。次回は、このソフトの導入方法と基本的な機能についてご紹介していこう。