開業者に勧めたいソフトがある。エプソンが販売する会計ソフト「財務応援Lite」がそれだ。導入の容易さと操作性の高さが特徴の同ソフトは、経理作業の負担を大幅に軽減するうえ、初めて触れる方でも比較的容易に使いこなすことができる。

本連載ではまず、「財務応援Lite」のメリットや操作感について4回にわたり解説していこう。

低価格だが、十分な機能を備えた会計ソフト

会計あるいは経理の業務で大半を占めるのは何か――経験の浅い方は、帳簿や伝票の作成を挙げるかもしれないが、実は、一番大変なのは元帳への転記である。

会計業務は、帳簿の入力だけで終わりではない。最も重要なのは決算書や残高試算表の作成である。

これらのうち、決算書は、税務署に申告する際や融資を受ける際などに必要。また、経営の状態を把握するには、残高試算表が不可欠だ。

そして、決算書や試算表を作成するには、各勘定科目の残高を集計しなければならず、各勘定科目の残高を集計するには、通常、仕訳日記帳や伝票から元帳に仕訳を転記する必要がある。この元帳への転記が煩雑で、しかも正確に行わなければ重大な問題が発生することもあるという、やっかいな仕事なのである。

また、元帳への転記だけでは、決算書や試算表は作成されない。さらに勘定科目ごとの残高の集計を出して、所定の帳票に記入しなければならないのだ。

これらの転記や集計などの作業こそ、パソコンの最も得意とするところである。

「財務応援Lite」を導入すると、元帳への転記作業が一切不要になる。元帳への転記や科目残高の集計は、ソフトの内部で自動的に行われるため、仕訳は、いずれかの帳簿または伝票に1回入力するだけでよい。

たとえば、現金出納帳に入力した仕訳は、ただちに「現金科目」の元帳に転記される。また、仕訳の相手科目が預金の科目であったとしたら、その仕訳は、預金出納帳あるいは「預金科目」の元帳へも自動転記される。その結果、メニューから呼び出すだけで、いつでも試算表を表示することができるというわけだ。

決算書は、試算表の残高を基に作成されるので、細かい記載事項は別として、B/SとP/Lに関しては基本的に自動作成されることになる。転記作業がなくなるということは、効率面において「財務応援Lite」導入の最大の利点である。「財務応援Lite」は、低価格だが、会計ソフトとして十分な機能がある。

導入は簡単、とりあえず会社のファイルを作成するだけ

日々の業務がどんなに効率化できても、導入が難しくてはやはり触手が伸びない。

「財務応援Lite」は、数クリックで終わる簡単なインストール作業と会社ファイルの作成を行うだけで、直ちに運用を開始することができる(3ヶ月間利用可能な体験版がこちらから入手可能)。標準的な勘定科目は、あらかじめ登録されているので、最初にやるべきことは非常に少ない。具体的には、一部の勘定科目に補助科目を登録すること(詳細は次回)と、前期まで使用していた勘定科目および補助科目の期首残高あるいは期中残高を入力する程度である。

導入時の障害が少ない点は、初級者にとって何よりもありがたいはずだ。

マウス操作はほぼ不要! ファンクション/ショートカットキーが充実

グラフィック系のソフトと違い、基本的に文字や数値の入力しかない会計ソフトでは、キーボードからの入力が圧倒的に多い。メニューやドロップダウンリストからの選択にマウスを使用すると、入力作業の効率が落ちるという傾向がある。したがって、会計ソフトの操作性という点では、キーボードだけで、どれだけ簡単に入力できるかが問われる。

「財務応援Lite」は、日常的に使用する帳簿や伝票の入力、試算表などの帳票類の表示などのメニュー画面をファンクションキーで切り替え、2桁の数字で選択できるようになっている。画面にすべてのファンクションキーの機能とショートカットの2桁の数字が表示されているので、特定のショートカットなどを覚える必要がなく初心者にもわかりやすい。

また、カーソルキーでメニューを選択することもできる。もちろん、マウスによるメニューの選択も可能だ。使用頻度の低いメニューは、メニューバーから選択するようになっている。

メニュー画面: たとえば、現金出納帳を入力したいときは、「F2」キーを押して「入力」メニューを表示し、数字キーで「11」を入力すればいい。これらのキー操作は、画面上に表示されているとおりなので、迷うことがない

基本メニュー: メニューは、基本的にカテゴリ別に分類されているが、「基本」メニューには、使用頻度の高い機能や会計業務に必須の機能が配置されているので、日常の業務では、ほとんど「基本」メニューのままで十分だろう

現金出納帳: 「0401」といったように日付を入力してエンターキーを押すと、次の入力項目(科目)にカーソルが移動し、画面の上方に科目の一覧が表示される。入力後にエンターキーを押すと、さらに次の項目に移動、これを繰り返す

入力画面の操作性/一覧性には、特に配慮されている印象を受ける。たとえば、上に掲出した現金出納帳画面では、前述のエンターキーによる移動が行えるほか、科目の一覧に科目コードも表示されるので探すのも簡単だ。上の画面では一部の科目コードしか表示されていないが、一覧に表示する科目はカスタマイズ可能であるうえ(詳細は次回)、「PageUp」/「PageDown」キーで左右にスクロールさせることができるためやはりマウスを握る必要はない。また、「N」(標準)、「S」(「Shift」キーを押した状態)、「C」(「Ctrl」キーを押した状態)の切り替えにより、多くの機能を呼び出せる。もちろん、機能や科目の選択は、マウスでも可能だ。

仕訳の連続入力に便利な直前内容のエンターキー入力

仕訳の入力では、同じ日付あるいは同じ科目の入力が続くことが多い。これは、仕訳は基本的に発生順に入力する、という原則と、「預金通帳」や「交通費の精算票」「請求書」などの仕訳の基になる書類を参照しながら仕訳を入力することが多いからだ。

「財務応援Lite」では、仕訳を連続して入力する場合、「日付」と「科目」の欄で空のままエンターキーを押すと、直前に入力した日付や科目が自動的に入力される。この機能は、単純だが意外に重宝する。

仕訳連続入力: 前の仕訳で「0401」と「114」を入力した後で、「日付」および「科目」の欄でエンターキーを押すと、直前の仕訳に入力した「0401」と「114」が「日付」および「科目」の欄にそれぞれ入力される

仕訳の入力は、帳簿・伝票いずれにも対応

仕訳の入力方法は、人により好みがある。例えば、振替伝票や入金伝票、出金伝票から入力したり、仕訳日記帳から入力したり、現金出納帳などの元帳形式の帳簿から入力したりするケースが考えられ、通常は、仕訳の内容により、これらの入力方法を組み合わせて使用することが多い。

「財務応援Lite」は、帳簿からでも伝票からでも、仕訳を好きなところから入力できる。標準では、いくつかの元帳形式の個別帳簿も用意されているが、オリジナルの個別帳簿を作成することも可能だ。仕訳の入力の自由度が広い方が、ユーザーにとってストレスが少なく、入力の効率もアップする。

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以上、今回は、財務応援Liteの主な特徴や操作感について紹介した。

会計ソフトのような特定業務の専用ソフトの場合、ワープロや表計算ソフトのような汎用性はないため、やることは決まっている。そういう意味では、簿記の基本さえ知っていれば、操作にはすぐに慣れるはずだ。また、「財務応援Lite」は、基本的にキーボードだけで操作できる。この点を再度強調しておきたい。

財務応援Liteには魅力的な機能がまだまだたくさんある。次回も引き続き、作業の効率化という観点から同ソフトの機能を紹介していこう。