人身売買というアンダーグラウンドなビジネスが21世紀を10年近く過ぎてもなくならないのは、"商品"を求める強い需要が存在するからである - ということを、否が応でも認識させられるのが今回紹介するフレーズである。

A girl is just not as good as a son. It doesn't matter how much money you have. If you don't have a son, you are not as good as other people who have one.

-- Su Qingcai

女の子は息子に比べるとあんまりよくないね。カネをいくらもっているかどうかの問題じゃないんだ。もし息子がいないんだったら、息子をもつほかの連中よりもよくないってことなんだよ

オリジナルはこちら→ Chinese Hunger for Sons Fuels Boys' Abductions

発言者は中国福建省(Fujian Province)の茶農家の男性で、昨年、3,500ドルで5歳の男の子を買った。自分自身には14歳の娘がいるが、息子は3カ月で亡くしてしまった。なぜ娘がいるのに、わざわざ子どもを買ったのか?

中国が小さな子どもの"輸出大国"であることはよく知られている。だが昨今の誘拐ビジネスは少々事情が変わっているようで、国外よりも国内の農家などに売られるケースが増えているという。地方の農村の風習では、娘は嫁ぎ先から戻ってこれない。老後の面倒を見てくれる息子がとにかく必要なのだ。したがって必然的に男の子が狙われることになる。記事では息子をさらわれた親たちの悲痛な声が紹介されている。ちなみに子どもは一度誘拐されたらまず戻ってこない。警察もほとんど捜す気がないのが実情だそうだ。

もっとも、この発言者のSuさんは最終的に手に入れた"息子"を生みの親の元へ返すことになるのだが。

そのまま覚えたい英語表現 - it doesn't matter

「~だろうが関係ない、どっちでもいい、かまわない」など、"どうだっていい"を表すときの決まりきった表現。後ろにはif節やwh節を取ることが多い。ここでは「カネなんかどうでもいいんだよ、重要なのは息子がいるかいないかだ」という流れで使っている。このようにit doesn't matterを使うときは、別の「重要なもの」をはっきりさせておくと発言にふくらみが出る。

余談だが、2003年、米国の経済誌『Harvard Buisiness Review』に"IT Doesn't Matter(ITはもう重要ではない)"というNicholas Carr氏による論文が発表されて話題になった。当時はIT業界から相当の批判を浴びていたが、金融不況の現在、あらためて読み直してみるとなかなか示唆に富んでいて興味深い。日本語版の書籍(ITにお金を使うのは、もうおやめなさい ハーバード・ビジネススクール・プレス (Harvard business school press))も出版されている。

なかなか身につかない比較級 - not as … as

比較級は中学英語で習う基本の文法事項なのだが、なぜか日本人は苦手のようで、読んで理解はできても、発言や文章といったアウトプットで生かすことをあまりしない。比較の対象をはっきりさせるという感覚が、苦手なのかもしれない。このくらいの簡単な表現から少しずつ意識的に使うようにしていきたい。