リーマンショックに端を発した未曾有の金融危機、100年に一度の不況とも言われ、庶民の多くが生活に苦しんでいる最中、その原因を作った側の企業の人間が1億6,500万ドルものボーナスをもらうと聞けば、やはり民意を代表する存在の大統領としては見過ごすわけにはいかない - 今日紹介するひとことは、難しい政局運営にぶち当たっているオバマ大統領の怒りの声だ。

How do they justify this outrage to the taxpayers who are keeping the company afloat?

-- President Obama

いったいどうしたら彼らは、この暴挙を、会社を存続させてくれている納税者に向かって正当化できるんだ?

オリジナルはこちら → Obama in Effort to Undo Bonuses at A.I.G.

「彼ら」というのは保険会社のAIG(American International Group)のこと。日本でも多くの報道がなされているが、破綻寸前までいったその命を税金で長らえている企業の分際でボーナス支給、それも総額165億円とくれば、世論がだまっているはずがない。オバマ大統領は法的手段も辞さないとされているが、実際のところ、一度支払われてしまったボーナスを取り戻すのは相当難しいという。だが、このままでは国民も議会も納得するわけがなく、オバマ大統領がこの問題をどう乗り越えるか、世界中が注目している。

オリジナル記事には動画も掲載されているので、ぜひチェックのほどを。35秒あたりで上のフレーズを発言している。注意深く聞き取ってみてほしい。

今回のキーワード - outrage

この件に関する報道を見ていると、多くのメディアが大統領が使ったこの単語に注目している。outrageは名詞または動詞として使われるが、この場合はもちろん名詞で「とても受け容れられない暴挙、衝撃的な出来事」などの意味。"Cambridge Dictionaries Online(英英辞典)"で引くと、a shocking, morally unacceptable and usually violent actionとある。

第4回で紹介した議会演説では「ウォールストリートの連中なんかにビタ一文使わない!」と強く意志表明したばかりなのに、当の彼らを税金で潤わせるなんて、これをoutrage=暴力的行為と言わずしてなんと表現するのか、という腹ただしさが伝わってくる。

outrageの派生として、形容詞のoutrageous/outraged、副詞のoutrageouslyがある。まとめて使い方を覚えておきたい。

コロケーションで覚える - keep afloat

Afloatは動詞のkeepまたはstayと一緒に使うことが多い形容詞。「浮かんでいて」という意味だが、keep afloatの場合は「浮いた状態をなんとか保っていて → なんとか破綻を免れていて」という意味になる。まさしく「税金のおかげでなんとかしのいでいる」状態の企業を表すにはぴったりだ。

ちなみにafloatは後ろに名詞を取らない形容詞なので、会話や文章を書くときはちょっと気をつけよう。たとえば「湖に浮かぶボート」と言いたければ、an afloat boat on the lakeではなく、a boat afloat on the lakeとなる。「なんとか経営が成り立っている小さな会社」なら、a small company staying afloatになる。