「夏休みスペシャル」の第2陣は、軍事関連のおすすめスポット。前回に続き、「推薦図書」を2回続けてやることも考えたものの、それもちょっと芸がないかなあということで、対象を変えてみた。

横須賀軍港めぐり

「いきなり何だそれは!」と言われそうだが、本物の軍艦を間近で見られる上に、要所要所でガイドさんのツボを押さえた解説が入るので、万人にお勧めできるのである。

しかも、本物の軍艦を間近で見られるということは、本物の軍艦が搭載している兵装類を間近で見られるということでもある。そして、横須賀には時折、外国の珍しい艦が出入りしていることがあるから、そういう時こそ狙い目。

例えば、2017年8月に、「横須賀サマーフェスタ」の後で軍港めぐりの船に乗った時は、仏海軍の情報収集艦「デュピュイ・ド・ローム」(Dupuy-de-Lôme)に加えて、韓国からイギリスに回航する途上の新造給油艦「タイドレース」(Tiderace)まで停泊しているという大当たりだった。

  • 横須賀軍港めぐりの船上から見かけた、仏海軍の情報収集艦「デュピュイ・ド・ローム」。陸上からではよく見えない位置にいたので、軍港めぐりの船に乗らないと見られなかった 撮影:井上孝司

    横須賀軍港めぐりの船上から見かけた、仏海軍の情報収集艦「デュピュイ・ド・ローム」。陸上からではよく見えない位置にいたので、軍港めぐりの船に乗らないと見られなかった

ちなみに横須賀だけでなく、呉には「艦船めぐり」、佐世保には「SASEBO軍港クルーズ」というのがあるらしい。生憎と筆者は乗ったことがないが、こちらも試してみても良さそうだ。

ただ、横須賀、呉、佐世保のいずれにも共通することだが、行ってみたら艦がいなくて桟橋がガラガラ、ということもあり得る。自分のスケジュールと艦のスケジュールが合うかどうかは運次第。

航空自衛隊浜松広報館

通称「エアパーク」。何の施設かは読んで字のごとくだが、ここのポイントは、飛行機だけでなく、装備品の展示も豊富なこと。

展示物が退役した古い機体であるのは仕方ないが、レーダーをはじめとするアビオニクス機器が展示品に名を連ねているのがポイントである。また、レーダーサイトで使用していた、古いレーダー・コンソールなんてものも見かけた。意外と、生で見かける場面がない種類のものである。

また、航空自衛隊の広報施設だけに実機の展示は豊富で、古いものから新しめのものまで、バラエティは豊富。だから、筆者みたいなアビオニクス大好きおじさんはアビオニクスにかじりついてしまい、そちらに興味のないフツーの人は実機展示を見ておいてもらう、なんていう分業(?)もできる。

米国立航空宇宙博物館など

米国立航空宇宙博物館といえば、いわずと知れた「スミソニアン博物館」の1つ。ワシントンDC市内の本館と、ダレス空港の近くにあるウドバー・ヘイジー・センターの2カ所に分かれている。どちらにしても展示品は豊富で、それぞれ1日ずつのスケジュールを割り当てたいぐらい。

本館は地下鉄で行くこともできるが、ウドバー・ヘイジー・センターはレンタカーがないと行きづらいかもしれない。しかし、クルマがあればワシントンDC近隣の他のスポット、例えば以前に取り上げたことがあるフォート・ミードの国立暗号博物館や、パタクセントリバー海軍航空博物館に足を伸ばすこともできる。

ミードについては以前にも取り上げたから、今回は割愛するが、パタクセントリバー海軍航空博物館も、人によってはツボにはまる。

パタクセントリバー基地が米海軍の航空機試験・評価部門の本拠地であり、テストパイロットの養成もやっているという場所だから、博物館の展示品も尋常ではない。戦闘機搭載用のミッション・コンピュータの現物が、中身が見える形で展示してあったり、風洞試験用の模型の現物が置いてあったりする博物館なんて、そうそうあるものではない。

あと、パタクセントリバー海軍航空博物館とウドバー・ヘイジー・センターをハシゴすれば、JSF(Joint Strike Fighter)計画の下で作られた技術実証機・4機のうち3機を生で見ることができる。X-32BとX-35Cがパタクセントリバー、X-35Bがウドバー・ヘイジー・センターにいる。

  • F-35の前に作られた技術実証機の1つ、X-35C。これの右手にAN/AYK-14ミッション・コンピュータが置かれていた(パタクセントリバー海軍航空博物館)

空母ミッドウェイ

いわずと知れた、横須賀に前方展開していた米空母である。退役後、カリフォルニア州サンディエゴで博物館になった。サンディエゴのダウンタウンに近い岸壁に繋留されており、空港からクルマを出したらあっという間に着いてしまうぐらいの近さだ。

基本的には「空母の生の姿を見られる博物館」である。当たり前だ。現役の空母だったのだから。しかし「軍事とIT」の見地からすると、見どころは別のところにある。

なんと、戦闘情報センター(CIC : Combat Information Center)が公開エリアに入っているのだ。古い機種とはいえ、使用していたレーダーなどのコンソールはそのまま残っているし、(ダミーだろうけど)レーダー画面の表示までちゃんとなされている。こんな展示品を見られる場所は、そうそう存在しないのではないか。

  • 空母ミッドウェイ博物館は、飛行甲板や格納庫甲板のみならず、搭乗員待機室やCICまで見られるのが素晴らしい

同じサンディエゴのバルボアパークに行くと、航空宇宙博物館がある。さらに、クルマで北上すればミラマー海兵航空基地があるから、毎年、9月末に行われるミラマーのエアショーとワンセットで見物に行くのが良いだろう(筆者はそうした)。サンディエゴ空港でレンタカーを借りれば、後は楽勝である。

著者プロフィール

井上孝司


鉄道・航空といった各種交通機関や軍事分野で、技術分野を中心とする著述活動を展開中のテクニカルライター。
マイクロソフト株式会社を経て1999年春に独立。『戦うコンピュータ(V)3』(潮書房光人社)のように情報通信技術を切口にする展開に加えて、さまざまな分野の記事を手掛ける。マイナビニュースに加えて『軍事研究』『丸』『Jwings』『航空ファン』『世界の艦船』『新幹線EX』などにも寄稿している。