本稿はエンタープライズ領域や開発、製品や企業動向としてのMicrosoft最新情報をまとめている。このタイミングで外せないのは、Microsoftが日本時間2024年11月20日に開催した「Ignite 2024」だろう。近年の同社はAI(人工知能)を製品開発やサービス展開の主軸としており、Ignite 2024でも同様に、Microsoft 365 AppsでさらにCopilotを活用する専用エージェントを用意する。

  • エージェントの管理ページ

    エージェントの管理ページ

AI機能は能動的に使わなければならず、代理人が処理や操作を行うのであれば、それに越したことはない。類似するアプローチでは「Microsoft Places」も注目株である。Microsoft TeamsとMicrosoft Outlookで取得した位置情報を元に、オフィス勤務の推奨日や物理・オンライン会議室の予約などが可能になるという。IT部門も実際の占有率と使用率のデータを分析して、より効果的な決定を下せる。

Microsoftが定期的にリブランディングしているのは通例だが、Copilotを利用するプロンプトなどを集めたCopilot Labは「Copilot Prompt Gallery」に改称。プロンプトの検索・共有・保存機能を備え、今後はMicrosoft TeamsやMicrosoft Outlookからも使用できるそうだ。

Microsoft Azure周りもAIを用いたアプローチで強化を図っている。データの暗号化と復号、デジタル署名や証明書の作成に使用される鍵を生成・保護・管理する「HSM(Hardware Security Module)」で世界各国のデータセンターを保護し、「Azure Boost DPU(Data Processing Unit)」でワークロードの効率化と省電力化を実現できるという。

  • Azure Boost DPU

    Azure Boost DPU

MicrosoftはAzure Boost DPUがMicrosoft Azureのプロセッサーを構成するCPU、AIアクセラレーター、DPUを補完して、HSMを活用することからAI時代にインフラストラクチャーすべてを最適化すると述べていた。

Microsoft Azureで自社のサービスやソリューションを構築している企業は、プライベートプレビュー版のSQL Server 2025、論理量子ビットへの移行継続も注目株だが、「Azure Local」にも注目してほしい。Microsoftは以前からオンプレミスやマルチクラウド、エッジ環境にあるリソースをMicrosoft Azure上で一元管理するMicrosoft Azure Arcや、ハイパーコンバージドインフラストラクチャーのAzure Stack HCIを提供してきたが、Azure Localは限定されたエッジ環境で動作し、製造現場の課題を解決する。

昨今はランサムウェアを筆頭とするマルウェア攻撃が多発しているが、Microsoftは対抗策として「Scareware Blocker」をMicrosoft Edgeに搭載する。本機能はダミーのダイアログもしくはウィンドウが表示された際、ユーザーに警告を発する機能だ。ここでもAIを活用し、検知能力の継続的な向上でWindowsのセキュリティ環境を保護する。なお、今後数カ月内に法人および消費者向けとして、プレビュー版として提供される予定だ。Microsoft Edgeは以前からPUA(Potentially Unwanted Applications)で望ましくない可能性のあるアプリケーションから保護してきたが、Scareware BlockerおよびPUAでセキュリティ保護機能を強化する。

  • Scareware Blockerが動作した状態

    Scareware Blockerが動作した状態

MicrosoftのAI利用はMicrosoft Teamsの音声同時通話機能の実現や、Windows、Microsoft 365 Apps、Microsoft Edge、Microsoft Teamsの更新プログラムを自動化するWindows Autopatchの強化など枚挙に暇がない。Windows 11搭載のエンドポイントでも、NPU(ニューラルプロセッシングユニット)を用いた検索機能や、現場利用を想定した「Windows 365 Frontline」のプレビュー開始、Meta Questヘッドセットを使用する「Windows in mixed reality」も利用環境によれば有用だ。

個人的にはサインイン時に複合し、サインアウト時に鍵を捨てて暗号化するPDE(Personal Data Encryption)の一般提供も気になるところだが、日々の業務をWindowsで行う方々には「Windows Resiliency Initiative」に注目してほしい。2024年7月に発生したCrowdStrikeの問題は意見が分かれるところだが、端的にまとめるとOSの回復力向上を目的としている。その一端として2025年初頭に備えるのが「Quick Machine Recovery」。デバイスが起動しなくともリモートから修復する機能だ。システムの再起動を必要とせずに重要なセキュリティアップデートを適用して、採用するまでの時間を最大60%短縮できる「Windows HotPatch」と合わせて、Windows 11のセキュリティレベルを高めている。

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