誰でもLINEスタンプを制作・販売できる「LINE Creators Market」。このプラットフォームが立ち上がったことで、これまでの企業主体のLINEスタンプには見られなかった、個性豊かな「クリエイターズスタンプ」が数多くリリースされています。

この連載では、人気を集めているオリジナルのLINEスタンプを生み出したクリエイターたちに、スタンプのコンセプトや制作時の具体的な作業量、そして売り上げなどを聞いていきます。今回は、待ち合わせや移動中など急いでいる時にワンプッシュで連絡できるシンプルなスタンプ「文字打ってる場合じゃねえ!~緊急用~」を手がけたA-kitさんにお話をうかがいました。

――最初に、プロフィールと普段のお仕事内容について簡単にお教えください。

東京の端っこで理容師をしているA-kit(あきっと)と申します。普段は暁人(あきひと)という名前で趣味のイラストを公開したりしています。お絵かきと手芸が好きで、面白そうなことにはなんでも手を出します。

――プロフィールに付随して、スタンプや普段のイラスト制作時の作業環境についてお教えください。

パソコン:デスクトップのWindows7 メモリは2GB
使用ソフト:SAI・CLIP STUDIO PAINT
使用デバイス:Bamboo Comic Pen&Touch
その他:好きな音楽を無線イヤホンにて

――「Line Creators Market」でスタンプを制作・販売しようと考えたきっかけは?

自分で作ったスタンプを使えるということがとても魅力的だったのと、自分がピンポイントで使いやすいスタンプを使いたかったので。

「文字打ってる場合じゃねえ!~緊急用~」の一部

――リリースされたスタンプのコンセプトをお教えください。

忙しくて文字を打っている場合じゃないときに、最低限の動作でぱっと送って意思を伝えられるスタンプが欲しかったので制作しました。

――ラフ段階では全部で何案ほどスタンプ用のイラストを制作されましたか?

ネタ出しの時点でひとまず40個に絞りましたので、ラフから完成まで40個しか描いてません。余ったネタは第2弾や第3弾にまわしました。

――スタンプを作るにあたって、イラストを描く時とは異なる工夫をした点を教えてください。

自分の画力にはそんなに自信が無かったので、イラストソフト「CLIP STUDIO PAINT」の機能のひとつである3Dデッサン人形を参考にしました。

――利用した人から「これは便利!」と言われるスタンプの絵柄は?

「返信が無かったら寝落ちしたと思ってください」や「仕事に戻ります」など、LINEでのやりとりの止め時に使うものが便利みたいです。

会話のやりとりを止めたい時に使える絵柄も収録

――ご自身で特に気に入っているスタンプの絵柄はどれですか?

全部気に入っていますが、「今から行きます」→「全力で急ぎます」を続けて使った時の、こっちに迫ってくるかんじが好きです。

――カラー表現が可能なLINEスタンプで、あえてほぼモノクロでまとめた理由は何でしょうか?

謝る場面で使うべきスタンプの色がピンクとかレインボーだと相手に「謝るつもりあるのか?」と思わせてしまい逆効果かなと思いまして、とにかくシンプルにしました。

――また、「メッセージを入力する余裕がない」人向けというコンセプト通り、感情の振れ幅が大きい絵柄が多いのですが、人物の表情を描かなかったのはなぜですか?

理想的な答えとしては、「表情を描かないほうが使い勝手が良い」や「使う人の気持ちに合わせやすいように」など"狙ってました感"を出したほうが良いのかもしれませんが、本当のところは「自分用だし省けるところは省いちゃおう」というものでした。

A-kitさん自身が気に入っているという絵柄

――スタンプを作ったことで変化したことはありますか?

自分の中で優先順位が低かったおしゃれな服やお化粧品にちゃんとお金を使えるようになりました。

――これまでのスタンプの売り上げをお教えください。

おいしいものをいっぱい食べて、欲しい本とやりたいゲームとゲーム機とノートパソコンを買いましたが、まだ1割も消費してないです。残りは貯金や医療費に回します。

――最後に、これからスタンプを作るクリエイターに向けて、ひとつだけ「スタンプ作りのTips(豆知識)」を教えてください。

作る基準は「売れる・売れない」ではなくて「自分が欲しい・欲しくない」で判断すべきだと思います。