桜が咲く時期になると、そののどかな光景とは裏腹に「このあたりでは見頃はいつか」「いつ散ってしまうのか」「雨が降ると花が落ちてしまう」…といったように、人の心は少し騒がしくなったりもします。

わずかな間の美しい景色。古くから人々は、桜が咲いては散ってゆく光景にこの世の無常を感じ取ってきました。今週は、そんな「花」にまつわる禅の問答をご紹介します。

「喫茶去」や「放下著」でも登場した中国の禅僧、趙州和尚に、ある修行僧が問いかけました。

「花が咲いたり、葉が色づいたりして季節を示している。この現実から、どのような真理を読み取れば良いでしょうか?」

この問いに趙州は「不雨花猶落(あめならずして はななおおつ)」と答えたといいます。「雨に打たれなくても花は咲いたらいつかはやがて落ちていく。それがどうしたというのだ」という意味です。

自然の摂理がそこにあるだけ、つまり目の前の光景こそが真理なのであって、理屈をこねて意味や理由などを読み取る必要はないというわけです。深読みをしすぎると、かえって目の前にある現実そのものを見落としてしまうこともあります。

きれいな景色、人との会話、素敵な作品…。考えすぎて楽しめなくなっていると感じたら、まずは目の前にあるものだけに向き合ってみるようにしてみては如何でしょう。

■今回登場したのは、禅のぼさつが宿った「こねり」

■著者紹介

Jecy
イラストレーター。LINE Creators Marketにてオリジナルキャラクター「こむぎこをこねたもの」のLINEスタンプを発売し、人気を博す。「こむぎこをこねたもの その2」「こむぎこをこねたもの その3」もリリース。そのほか、メルヘン・ファンタジーから科学・哲学まで様々な題材を描き、個人サイトにて発表中。

「週刊こむぎ」は毎週水曜更新予定です。