1月31日、幼児教育の「こぐま会」とアニメーション制作会社「P.A.WORKS(ピーエーワークス)」および系列会社が制作した幼児教育パッケージ「ひとりでがんばりマスター!」がリリースされた。

ドコモの生涯教育プラットフォーム「ドコモgacco」の「L3(エル・キューブ)プロジェクト」第一弾としても展開されるこのパッケージだが、そのコンテンツはこぐま会とP.A.WORKSが共同で取り組む「こぐまなびプロジェクト」によるものだ。

なぜこぐま会とP.A.WORKSはタッグを組み、P.A.WORKS側からみれば異分野の教育コンテンツの制作に乗り出したのだろうか。

前回はP.A.WORKSが教育事業に乗り出すきっかけについて聞いた。引き続き、同社の専務取締役の菊池宣広氏、および教育事業を手がける系列会社・PALABO取締役副社長の星川正幸氏に、コンテンツ制作におけるとある「挑戦」について聞いていく。

――YouTube上のプロモーションムービーを見る限り、本編映像は3DCGで作られているようですが、本編でもそうなのでしょうか。

場面カット

菊池氏: はい、基本的に3DCGアニメーションとして展開します。これも新しい挑戦です。今の子ども達は生まれてすぐCGに触れていますし、歴史あるアニメコンテンツのドラえもんもCGになるような時代ですから、CGだから違和感、2Dだから良いというものではないと考えています。

P.A.WORKSとしては、自然物の表現など、補完的な意味合いでの3DCGというのは多用していますが、本件についてはグループとして新しいジャンルでのアニメーション表現に挑戦したいということもあり、最初からCGでやると決めました。弊社関連会社のPAXがメインで、今までP.A.WORKSでもお付き合いのある方、ネットワーク資源にもご支援いただきながら形にしました。

監督は、弊社作品でも何作もお願いをしている篠原俊哉監督です。キャラクターの声を当てていただく声優さんもそうですが、これまでの弊社の実績を踏まえてお付き合いくださっている方々のネットワークのおかげで制作できています。

――御社ゆかりの制作スタッフ・声優が参加されているとのことですが、サイトには現状スタッフページは設けられていません。スタッフ一覧を公開されるご予定は?

菊池氏: スタッフィングやキャスティングに関して、行く行くは公開していくことになるかと思います。

――2016年11月に行われたプロジェクト発表会見は弊誌でも記事にしましたが、こぐまなびプロジェクトに対し、アニメファンの方も一部反応していたようです。

菊池氏: 従来からの弊社の作品とは取り組み内容が違うジャンルですが、ファンの皆さんのなかにも、弊社の様々な取り組みに関心をお持ちいただいているのは大変ありがたいと思っております。一方「こぐまなびプロジェクト」に関して自分の子ども達に楽しく学ばせたいという親御さんたちに、一番ビビッドに反応していただければとも思っております。

――リーフレットには2Dのキャラクターイラストもあります。キャラクターデザインは立体前提でされていたのでしょうか?

リーフレット下部には2Dのキャラクターが描かれている

菊池氏: ええ、そうです。最初から3DCG前提で進めています。

世界観は「原作:P.A.WORKS」ということで作っています。忍者をベースにしたのは、将来的には日本以外の国々でも学んでいただける可能性を要素として入れておきたかったんです。世界中に通じる日本のキーワードのひとつとして、子どもの忍者という設定があれば、一定の理解を得た上で広げていけるのではと。

もうひとつ、一般的に忍者は戦うものですが、「ひとりでがんばりマスター!」の忍者たちは戦いません。弊社スタッフが刀や手裏剣は学びの場にはふさわしくないので、戦わない忍者にしたいと提案してくれました。背負っているのは中国の四宝(筆、硯、紙、墨)のうちの3つなんです。日本に伝来して長い歴史を持つモノなので、「筆」を模したふでまるを中心に据えています。

――御社の既存アニメのキャラクターデザインとはやはり大きく異なりますし、配色もかなりパキッとしている印象です。子どもとふれあってきたこぐま会のノウハウなどがキャラクターデザインに活かされた面はありますか?

場面カット

星川氏: 主にクリエイター側からの提案です。アニメーション監督は児童向けアニメの経験もありますし、またターゲットは違えど、アニメーション作りの現場において、受け手が喜ぶものを作るというゴールは共通ですから、子ども達に支持されるものをどうやったら作れるか、ということを検討した結果だとお考えいただければと思います。

――これまでのお話から、役割分担としては、P.A.WORKSが企画、PAXが3DCG制作となるかと思いますが、今回設立されたPALABOはどういった部分を担うのでしょうか?

菊池氏: PALABOはこのプロジェクトを運営するために作った会社ですので、運営などの部分はこの会社で行います。世界観・キャラクター・ストーリーなどの原作開発をP.A.WORKS、教材・アプリケーションの開発はPAXの方で行っているのですが、作り終えれば今後の仕事は運営にシフトしていくので、そこをPALABOが担当する形になっていくと思います。

次回は、「ひとりでがんばりマスター!」をスマートフォンアプリ版だけでなく、ドコモgaccoというプラットフォームで展開した意図について聞いていく。