2023年2月8日、NTTはリージョナルフィッシュと共同で、ゲノム編集技術によって藻類のCO2吸収量を大幅に向上させる遺伝子の特定に成功したと発表した。ではなぜ両社はこのような研究を実施しているのだろうか。また、これによりどのようなメリットがあるのだろうか。今回は、こんな話題について紹介したいと思う。

海洋中のCO2を低減させるNTTなどの取り組みとは?

現状、海洋から大気へと排出されるCO2は、大気へのCO2排出量全体の33.7%にも及んでいて、人間の活動による排出量の7倍以上となっている。量としてはおよそ2860億t/年となるから驚きだ。そして、この海洋からのCO2排出量を低減できれば、地球温暖化に大きく寄与できることになる。そのため、藻類のCO2吸収量を増加させる技術などを開発することは、とても有効なのだ。

  • 地球におけるCO2循環の様相

    地球におけるCO2循環の様相(出典:NTT)

CO2吸収量を向上させる藻類の遺伝子特定手法

そこでNTTとリージョナルフィッシュは、藻類の遺伝子に注目。まず、藻類のCO2吸収に関わる遺伝子を選定する手法の確立に着手した。では両社はどうやってアプローチしたのだろうか。

CO2濃度が低い環境において、CO2の吸収に関わる遺伝子が増強または喪失されると、CO2を吸収して有機物を作る増殖の速度が、親株に比べて著しく変化することになる。つまり、その時操作された遺伝子が、CO2吸収に関わるものであると判定できるという。

そして2社は、藻類がもつ12種類の候補遺伝子をピックアップ。ゲノム編集技術を用いて操作し、そのCO2吸収量を親株と比較することで、吸収量が大幅に増加すると考えられる2つの遺伝子の選定に成功したという。

  • 藻類のCO2の吸収に関わる遺伝子の選定手法

    藻類のCO2の吸収に関わる遺伝子の選定手法(出典:NTT)

NTTは今後、藻類によるCO2の吸収量の定量評価も行っていくという。その他にもこのゲノム編集技術を応用し、藻類のみならず他の植物におけるCO2の吸収や光合成、さらには遺伝子の成長、耐病性、ストレス耐性などの有用形質に関わる遺伝子の特定も実施していくという。

いかがだっただろうか。NTTとリージョナルフィッシュは、現在構想中である、藻類や魚介類の生産・販売を行うグリーン&フード事業でも、今回の成果を応用して人類の環境負荷低減と食料不足の解決に寄与していくことだろう。また、ブルーカーボン事業にも大きく寄与できるテクノロジーだと感じる。とても有益な研究成果だ。