2023年1月20日、豪・クイーンズランド大学は、水から化学物質「有機フッ素化合物(PFAS)」を迅速に除去できる、簡便で効果的な方法を開発したと発表した。では、PFASで汚染された水を洗浄する方法とはどのようなものだろうか。今回は、こんな話題について紹介したいと思う。

PFASで汚染された水をキレイにする画期的な方法とは?

PFASをご存知だろうか。PFASは、1950年代ごろから産業用や個人用として普及してきた化学物質の総称で、水や油を弾く性質があり、耐熱、耐薬剤、光を吸収しないなどの特性を持っている。これらの性質から、撥水剤や表面処理剤、乳化剤、消火剤、コーティング剤などに幅広く利用されているという。

PFASは全部で4730種類以上もあるとされ、特に、ペルフルオロオクタン酸(PFOA)とペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)がよく知られる。これらの物質は先述したようなメリットがあるものの、実は環境には悪く、人間の健康に影響を及ぼす可能性がある。具体的には、自然界や人の体内で分解されにくいため、環境に残存してしまうのだ。その理由は、PFASの炭素とフッ素の結合が、有機化学で作りだせる結合の中で最も強力だからだという。

このような理由から、ファストフード大手のマクドナルドは2021年1月、4年後の2025年までに容器や包装からPFASを完全に無くすと発表するなど、PFAS削減に対する取り組みが盛んになってきている。

では、今回クイーンズランド大学が開発した、水からPFASを除去する効果的な方法とはどのようなものか。それは、磁石と再利用可能で磁性を用いた吸着剤を用いた方法だ。

この写真をご覧いただきたい。この実験では、PFASを溶かした水に、単に磁石を近づけているのがおわかりいただけるだろう。この水にはすでに吸収補助剤を溶かしてあり、磁石を近づけると、吸収補助剤とPFASが結合した状態を作ることができるのだ。

  • クイーンズランド大学で行われているPFAS除去実験の様子

    クイーンズランド大学で行われているPFAS除去実験の様子(出典:クイーンズランド大学)

研究チームによると、たった1分以内で完了するこの方法で、少量の汚染水からPFASを95%除去することに成功したという。従来の除去方法では、大型な電子ポンプを使ったり、遠心分離機を使ったりと大型な装置を準備しなければならず、労力や時間の面でデメリットがあったが、この方法ではそれらの課題が解消される。ちなみに、この様子のは動画でも公開されているので、ぜひご覧いただきたい。

磁石を使った新手法による水からのPFAS除去の様子(出典:クイーンズランド大学)

なお、この研究成果は、2022年10月12日に『Angewandte Chemie』に掲載されている。

いかがだったろうか。この方法は、大型の装置や電力源、動力源を必要としないので、電源インフラが整備されていない場所でも簡単かつ迅速に実施できるというメリットがある。研究チームは現在、さらにこの手法を改善してテストを繰り返すことで、3年以内に製品化したいと考えているという。