第4回、第5回では、在宅勤務を快適にする業務用アクセスポイントの選び方や、役立つ機能をご紹介しました。自宅のネットワーク環境がアクセスポイントだけではなく、ルータやスイッチも併用している方も多くいらっしゃるかと思いますので、今回は、アクセスポイント以外のネットワーク機器に関して考えてみたいと思います。
有線接続端末の取り扱い
無線が便利になったとはいえ、LANケーブルで物理的に接続する有線接続が向いている端末への接続を考えてみましょう。
プリンタの接続、写真や動画コンテンツ保存のためにNASの接続、外から録画視聴目的でのテレビの接続など、一部機器を無線接続ではなく有線で接続するニーズがあります。ルータのLANポート(ケーブル接続端子)が足りないとき、家庭内でもLANスイッチを必要とする機会があるかもしれません。こんなとき、アクセスポイントも接続されるスイッチは、、価格が上がりますがPoE対応のものにすると配線がシンプルになったりと実はとても便利です。例えばマンションにお住まいの方だと、シューズインクローゼットに部屋内に向けたスイッチがあり、各部屋にLANポートの口が出ている設計など多いのではないでしょうか。このスイッチをPoE対応のスイッチへ置き換えるとアクセスポイントの設置時、コンセントからの距離にとらわれることなく、また目立ちにくいLANケーブル等を活用することで、部屋内の配線をすっきりと外観も損なうことなく自由にアクセスポイントを設置していくことが可能になります。
また、有線接続端末と無線接続端末を明確に使い分けることが、アクセスポイントの負荷を低減させることにつながり、パフォーマンスを向上させる効果も見込まれる可能性があります。
在宅環境のセキュリティ
在宅勤務では、会社で利用する端末とプライベートな端末が同じネットワーク内に同居する形となり、また家庭向けのIoT端末利用も増えていることから、外部からの不正アクセスなどのセキュリティ部分を気にされる読者の方も増えてきています。会社支給PCやタブレット端末では、端末ごとに対策などをされているかもしれませんが、プライベート端末はどうなってますでしょうか? 会社支給端末とプライベート端末が自宅内ネットワークで同居する家庭内ネットワークでは、ネットワーク自体にセキュリティ機能を追加することが効果的な方法の1つとなります。
例えば第4回では、”無線LANルータ”から、”ルータ+アクセスポイント”への移行パターンにおいて、無線LANルータのルータ機能をそのまま活用する使い方をご紹介しましたが、外部からの不正アクセスを防ぐ機能(ファイアウォール機能)が搭載されたルータへ置き換えることで、家庭のLAN環境におけるセキュリティを高めることが可能です。
家庭内ネットワークを統合した管理性
最後にご紹介したい点が、活用しているネットワーク機器のシリーズを統一することの利便性になります。家電を統一することでさまざまな便利機能を使えることなどから想像しやすいかと思いますが、ネットワーク機器もシリーズを統一することで便利な点があります。
例えば、有線接続と無線接続合計してどんな端末がネットワークへ接続されているか、何台接続されているか、アクセスポイントとスイッチのどちらへ接続されているかといった点が簡単に把握できます。LANケーブルの接続状況を確認できる機能なんかが搭載されていれば、何と何が接続されているのか一目で確認もできます。
シューズインクローゼットやテレビボードの中など、物理的にLANケーブルをたぐりよせたりせずに確認できることは、実はとてもストレス低減になります。またそれぞれの機器がインターネットに抜けられるか確認できる機能が搭載されていると、どの機器までは問題が発生していないかを確認できトラブル時の対応が容易になります。活用しているネットワーク機器のシリーズ統一により、この確認方法が同じやり方になりとてもシンプルな運用が可能となります。
さらに機器自体に問題が発生し、問い合わせ窓口への連絡が必要となる場合が出てしまうケースがあります。普段連絡することのない窓口への問い合わせ方法は、都度調べる必要が出てしまうのが一般的ですが、同じシリーズで統一していると、同じ問い合わせ窓口へ同じ方法での問い合わせが可能となりますので迅速に対処していくことが可能となります。こんな問い合わせも、普段管理で使い慣れたスマホアプリから出来るとさらに利便性が向上されます。
今回は、アクセスポイントだけではない家庭内ネットワーク機器全体の選び方を考えて見ました。今後も業務効率化や感染症対策など、在宅勤務の時間が増えることが予測されます。アクセスポイントにあわせて、思い切って家庭内のLANネットワーク機器を切り替えてみてはいかがでしょうか?
著者:冲中 恒雄
シスコシステムズ SMB・デジタル事業本部 ビジネス ディベロップメント マネージャ
2011 年 シスコに新卒入社。
入社後はシステムズ エンジニアとして、主に企業向けのネットワーク運用管理全般および製品を担当。
2016年よりビジネス開発担当として、中小企業向けの市場開発に奮闘中。