前回までは、「財務応援Lite」を例にとりながら、会計ソフト選びのポイントと、会計ソフトの基本的な帳票体系・設定方法について説明してきました。今回からは、いよいよ帳票の作成方法について解説していきます。

会計ソフトには、入力画面がたくさん用意されています。使いこなせれば非常に便利なのですが、初心者の中には、その数の多さから、どの画面を利用すればよいのかと戸惑う方も多いかもしれません。そこで今回は、「財務応援Lite」を例に入力画面について説明していきましょう。

財務応援Lite伝票入力

財務応援Liteは入力画面が豊富です。それらを入力形式という観点から大別すると以下のようになります。

  1. 伝票入力形式: 複合伝票、入金伝票、出金伝票
  2. 帳簿入力形式: 現金出納帳、銀行帳等
  3. 単一振替入力形式

注意しなければならないのは、1つの取引で仕訳入力できる画面は何種類もありますが、入力は1度だけでよいという点です。もし、同じ取引を複数の入力画面で入力してしまうと、二重仕訳になってしまいます。

こうした問題を避けるためには、主に使用する入力画面を初めに決め、他の入力画面は使わないと決めてしまうことです。

例えば、次のような取引の場合で説明します。

<例>
ゴルフの接待を行い、プレー代86,000円および往復のタクシー代7,500円の合計93,500円を現金で支払った。

(借方)交際費 93,500 (貸方)現金 93,500

(なお、タクシー7,500円は接待にかかった費用ですから交通費ではなく交際費です。)

この取引を入力できる画面は、「複合伝票」「出金伝票」「現金出納帳」「単一振替伝票」ですが、初めにどれに入力するかを決めておく必要があります。財務応援Liteの複合伝票とはいわゆる「振替伝票」ですから、全ての取引をこれ1種類で処理することもできます。

他社の会計ソフトでも同じですが、すべての取引を「振替伝票」で入力し、他の入力機能は使わないというユーザーは結構多いように思います。

財務応援Liteの複合伝票。99行まで入力可能

なお、「単一振替伝票」とは、全ての取引を1対1の仕訳として入力する方法で、会計事務所など、大量の伝票を迅速に処理する必要のある方に人気がある形式です。この形式について、次の取引を例に説明しましょう。

<例>
従業員の給与250,000円および通勤手当10,000円から、雇用保険料の立て替え1,500円、社会保険料23,500円、源泉所得税8,000円、住民税2,500円を差し引いた残額を普通預金口座から支払った。

(借方)給料 250,000 (貸方)普通預金 224,500
(借方)交通費 10,000 (貸方)立替金 1,500
    (貸方)預り金(社会保険料) 23,500
    (貸方)預り金(所得税) 8,000
    (貸方)預り金(住民税) 2,500

このような取引の処理を次のような仕訳で入力します。

(借方)給料 250,000 (貸方)諸口 250,000
(借方)交通費 10,000 (貸方)諸口 10,000
(借方)諸口 224,500 (貸方)普通預金 224,500
(借方)諸口 1,500 (貸方)立替金 1,500
(借方)諸口 23,500 (貸方)預り金(社会保険料) 23,500
(借方)諸口 8,000 (貸方)預り金(所得税) 8,000
(借方)諸口 2,500 (貸方)預り金(住民税) 2,500

ご覧のとおり、処理する勘定科目の相手科目に「諸口」という科目を使って、全てを1対1の取引として入力します。

諸口は、1つの取引で借方と貸方は同じ金額になりますから、残高は0となるわけです。利用されている方は多いと思いますが、仕訳や総勘定元帳を見た場合に、元の取引内容が判断しにくいという点や、諸口の残高0にならない場合の入力ミス等を発見にしにくくなるという欠点もあります。

初心者や自社の会計処理を担当している方は、「単一振替伝票」ではなく伝票入力形式や帳簿入力形式での入力方法を選択された方が無難でしょう。

単一振替伝票

二重仕訳のミスを回避するには、1種類の入力画面で処理するのが一番良い方法かもしれませんが、財務応援Liteには帳簿入力形式等に豊富な機能が用意されており、それではもったいない気がします。私が推奨している入力画面は、「現金出納帳」+「複合伝票」です。

伝票入力と元帳表示

総勘定元帳の表示は、取引入力画面と仕訳の入力方法により異なってきます。入力後に取引内容や残高を確認する場合、総勘定元帳を利用するケースが一番多いと思います。したがって、できるだけ明瞭な形で総勘定元帳が作成される入力方法を選びたいところです。

次のような処理を例に説明します。

<例>
短期借入金の返済として、105,300円が普通預金より引き落とされた。なお、100,000円が元本で差額は利息である。

(パターン1)

(借方)短期借入金 100,000 (貸方)普通預金 105,300
(借方)支払利息 5,300    

この仕訳のまま入力できるのは「複合伝票」になります。ただ、実際の業務では、普通預金の通帳記載通りの金額で総勘定元帳が作成された方が確認しやすいでしょう。

通帳の記載で元本と利息を別に表示するには、以下のように入力することになります。

(パターン2)

(借方)短期借入金 100,000 (貸方)普通預金 100,000
(借方)支払利息 5,300 (貸方)普通預金 5,300

なお、この取引を「銀行帳」を利用して入力する場合もパターン2の仕訳になります。ただし、この場合、通帳の記載が元本と利息を合わせた105,300円となっている時は、通帳が1行で表示されるのに対し、総勘定元帳は2行になります。

もちろん些細なことですし、通帳を見ながら入力する方には「銀行帳」は便利な入力方法です。しかし、通帳記載の金額と総勘定元帳を完全一致させるためには、「現金出納帳」+「複合伝票」を利用し、「銀行帳」を利用しないという選択が必要なわけです。

もう1つ例を紹介します。

<例>
商品200,000円を販売し、100,000円を手形で受け取り、残額は掛けとした。

(借方)売掛金 100,000 (貸方)売上 200,000
(借方)受取手形 100,000    

この取引は手形取引ですので、「手形台帳画面入力」も利用することもできます。簿記の学習経験のある方はご存知のとおり、手形記入帳は補助簿であり、主要簿としての伝票や仕訳帳の補助です。したがって、手形記入帳から総勘定元帳に転記することはなかったはずです。

財務応援Liteの「手形台帳画面入力」では、相手科目の入力が可能で、それにより仕訳が生成され、その入力から総勘定元帳が作成されます。手形の期日管理もできますので、手形取引が多い場合は利用したい機能です。

また、売掛金の勘定科目に補助科目として得意先名を設定している場合は、この補助科目の集計がそのまま得意先との取引額の合計になっていると便利です。よって、以下のように全額掛け売上と仮定して仕訳をします。

(借方)売掛金 200,000 (貸方)売上 200,000
(借方)受取手形 100,000 (貸方)売掛金 100,000

1行目の仕訳を「複合伝票」に入力し、2行目の伝票を「手形台帳画面入力」に入力することで、理想的な帳簿を作成することができるわけです。