決められた日に正しく給与を支払うことは、従業員が安心して働くために最も重要な業務の一つです。また、税金や社会保険料は従業員に代わって企業が納付することになっていますので、きちんとした処理を行っていないと、法令に反することになってしまいます。今回は、給与計算の基本をおさらいしていきましょう。
給与計算の仕組み
給与はその全額が従業員に支払われるわけではなく、税金や社会保険料が控除されます。実際に支払う給与は、下記のように計算する必要があります。
【総支給額】-【控除額】=【差引支給額】
(1)総支給額
給与や手当の合計が総支給額になります。どのような給与を適用しているかは各企業によって異なりますが、勤続年数や役職、能力によって変わる「基本給」や、営業成績によって変わる「出来高給(歩合給)」などが一般的です。
「手当」は基本給を補うための給与です。「時間外勤務手当」「休日勤務手当」「深夜勤務手当」については、労働基準法によって支払いが義務付けられています。家族手当や通勤手当、危険手当といったその他の手当については、就業規則または給与規程によって各企業が自由に定めることができます。
(2)控除額
税金や社会保険料は法律で給与から控除することが定められている「法定控除」です。企業は従業員に代わって、税務署や自治体、社会保険事務所やハローワークにこれらを納付する必要があります。法定控除する税金は所得税・住民税、社会保険料は健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料・雇用保険料です。
所得税額は1年間の所得に応じて決まるため、毎月"見込み"の金額を控除(源泉徴収)します。年末に所得が確定した段階で、再度、正しい所得税額を再計算し、差額を調整します。これを「年末調整」と言います。住民税額は前年の所得に基づいて自治体が計算し、企業には通知書が送られてきます。
法定控除する社会保険料については、企業と従業員がそれぞれ負担することになっています。健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料は、国が定める「標準報酬月額」に各保険料率を掛けて計算します。雇用保険は、1カ月の総支給額に雇用保険料率を掛けて計算します。
法定控除以外の控除については、労使協定に基づいて定めることができます。例えば、従業員持ち株会の出資金や、社宅使用料や親睦会費などが考えられます。
(3)差引支給額
上記のように計算した【総支給額】から【控除額】を引いた額が、【差引支給額】です。
データの整備が不可欠
【差引支給額】を正確に計算するためには、従業員一人ひとりについて、給与・手当・税金・社会保険の裏付けとなるデータを確認する必要があります。昇格や異動、勤務地、家族の増減、残業時間、遅刻、営業成績など、給与計算に必要なデータは正しく登録・更新し、かつ集計しやすいようにシステム化しておきましょう。
近年は正社員・契約社員・パート社員などと雇用形態が多様化し、それに伴って給与体系も複雑化しています。勤怠データや業績データなど関連する情報との連動を可能な限り自動化しておくことが、ミスを避ける上で重要なポイントです。また、業務を効率化するためにも、入退社や住所変更などの連絡を各部門から遅滞なく受け取れるように、社内間での連絡体制を整備しておきましょう。