NTTコムウェアはNTTの内部組織として、通信ネットワークを支える通信ソフトウェア本部と、顧客業務を支える基幹システムやNTT社内の情報システムの設計・開発・運用・保守を行う情報システム本部を統合し、1997年に誕生した。
そして2022年1月、NTTコミュニケーションズと共にNTTドコモの子会社となり、ドコモグループの一員になった。さらに、2022年7月にはドコモ・システムズと統合。ドコモグループでは、「モバイルやスマートライフ事業、法人向けソリューション等をソフトウェア開発力により支える」ことが、NTTコムウェアのミッションとなっている。
今回、ドコモグループに傘下に入った後、NTTコムウェアのIT環境はどう変わったのか。経営企画部 経営品質部門 統括課長 佐藤雅也氏、部門長 君島有紀氏、担当課長 佐々木康行氏に話を聞いた。,
ドコモグループ移行により、基幹システムを刷新しOA環境を統合
同社の社内情報システム部門は経営企画部の中にあり、経営品質部門が担当する。経営品質部門 部門長の君島有紀氏は同部門の役割を次のように説明した。
「NTTグループとドコモグループのIT方針を踏まえ、新技術やデータ活用による社内DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進や顧客に対する付加価値提供、経営品質の可視化・向上を目指し、社内IT環境の提供やITガバナンス推進を図っています」
同社はドコモグループに移行するにあたり、NTTコムウェアグループ内の基幹システムの刷新およびOA環境の統合を図ってきた。
「この2~3年は、基盤からアプリまで同時に変え、OA環境も変えるなど、IT業界のわれわれとしても、かなりハードな施策をビッグバン的かつ同時にやったという形です」(君島氏)
OA環境統合の狙いについて、同プロジェクトのチームリーダーである経営企画部 経営品質部門 統括課長 佐藤雅也氏は、次のように語る。
「ドコモグループ内で会社間のIT環境の差異を意識せず、あたかも一社のようなシームレスな状態にして、人事異動時の対応などもスムーズに行えるような世界観を目指して、まずは2022年7月に統合したドコモ・システムズとIT環境の統合を実施しています」
具体的には、リモートワークに対応したセキュアFATというゼロトラストセキュリティを前提とした端末をNTTコムウェアグループ全体で導入し、クラウド環境基盤として、マイクロソフトの Microsoft 365(以下、M365)を導入している。ドコモ・システムズ統合直後、M365は社内で別テナントとして構築・連携していた。だが今後は、テナントを統合し、NTTコムウェア一社としてコミュニケーションが取れる環境を構築していく予定で、方式等を検討中だ 。
さらに具体的な施策として、「グループ共通ITの導入」、「社内システムのモダナイズ」、「デジタルマネジメント推進」の3つを実施した。
グループ共通ITの導入
グループ共通IT導入では、NTTグループ115社を対象に、SAPとServiceNowのグローバルパッケージを用いて5つの共通業務(決裁、調達、ビリング、財務、勤務管理)を刷新。NTTコムウェアは「開発・提供」「導入・運用」という2つの役割を担っているが、社内情報システム部門としての経営品質部門では、業務の整備、習熟・移行、実際の切り替え導入といった「導入・運用」を主導した。
「ポイントは『つなぐ』。業務プロセスを標準化して、すべて同じ仕組みでつなぎ、データドリブン経営の実現に向け、データを共有して活用することによって、グループ全体で経営の最適化や効率化に寄与していきます。NTTグループの方針はグローバルファーストであり、業務を標準化してグローバルパッケージを使っていくべきという観点で数年かけて検討し、SAPとServiceNowを導入しました」(佐藤氏)
ただ、グループ全体で基幹系システムを刷新することは簡単ではない。個々の業務を横断して全社的な体制をとって経営層と現場をつないでいくため、グループ各社に「Change Management」という体制を構築した。
NTTコムウェアの「Change Management」体制では、各業務主管・業務変革推進リーダーを立て、経営品質部門も加わることでハブとしての役割を担い、各業務の横断的な調整や経営層との橋渡しを行った。
「従前は、個社でシステムが異なっていましたが、今回、グローバルパッケージを入れるにあたってグループ各社の業務を共通化しましょうということで、業務整理を図りました。どうしても個社別に必要な機能も当然あるので、それは各社と調整して、必要最低限のものに絞りながら標準機能+カスタマイズ機能という形でグループ115社に同じシステムを提供しました」(君島氏)
社員からの問い合わせに関しては、各組織にキーユーザーを配置し、問い合わせの一次窓口にした。
「まずは、職場のキーユーザーに問い合わせを受けて前さばきをし、キーユーザーが対応困難な問い合わせだけをエスカレーションしていく形にしました」(君島氏)