東京西部から埼玉県などの、主に京王線沿線において店舗を展開する株式会社京王百貨店。1964年に開店した新宿店は2014年11月に50周年を迎える、歴史ある百貨店である。
同社では、2013年6月にメールシステムをGoogle Appsへと移行した。クラウドメールの様々な利点を考慮した結果だが、実際に導入に踏み切るには、いくつかの問題があった。
今回は、同社の経営企画室の倉林孝行氏、小澤みどり氏、三木敬氏に、導入時に懸念された問題と、その解決策について解説していただいた。
会社概要
株式会社 京王百貨店
新宿・聖蹟桜ヶ丘・ららぽーと新三郷・セレオ八王子の4店舗を展開する百貨店。
新宿店は2014年に開店50周年を迎える。
2014年に開店50周年を迎える京王百貨店 新宿店、及び聖蹟桜ヶ丘店
突然訪れたメールサービス終了の連絡
「今回の移行には、やむにやまれぬ事情がありました」と語るのは今回のシステム移行において中心的な役割を担った小澤氏である。
京王百貨店では、これまでグループウェアにあるメール機能を利用していた。だが、ベンダー側からメール機能の提供廃止の連絡があり、全く予期しない形でメールシステムを移行する必要性に迫られた。しかも、その猶予はわずかに1年。
株式会社京王百貨店 経営企画室 |
「あまりにも急な話で、新しいサービスの選定から導入までの期間を考えると、余裕がない状態でした」と小澤氏は当時を振り返る。
突然の話だったこともあり、事前の準備も予算の確保も行われていない状態。時間もコストもかけられないため、新たにメールサーバーを構築することは現実的に不可能。
「検討した結果、選択肢は自然とクラウドへと絞られていきました」(小澤氏)
世の中に数あるクラウドメールサービス。その中から導入実績の豊富さや、運用面での信頼性の高さ、コストなどの面から総合的に判断した結果、同社が選択したものがGoogle Apps for Business(以下 Google Apps)だった。
ただ、実際に運用するにあたって一つの懸念材料があった。それは「社外からのアクセスが可能になってしまう」点である。
株式会社京王百貨店 経営企画室 情報企画・開発担当 マネージャー 倉林孝行氏 |
これはクラウドならではの利点ではあるのだが、セキュリティの観点で考えると、どこからでも無制限に接続を許して良いはずがない。だが「Google Apps 単体では、これを制限する機能がありませんでした」(小澤氏)
そこで白羽の矢が立ったのが、株式会社インターナショナルシステムリサーチ(以下 ISR)が提供するクラウドアクセスセキュリティサービス「Cloud Gate Single Sign On Light」(以下 Cloud Gate)である。
「他にもいくつか検討しましたが、Cloud Gateと比較すると、セキュリティの面でやや不安を感じる部分がありました。何より、こちらが求める情報を包み隠さず提供してくれる対応に、安心と信頼が高まりました」(倉林氏)
「Cloud Gate」の接続制限機能により、安全なモバイル運用も可能に
株式会社京王百貨店 経営企画室 情報企画・開発担当 プランナー 三木敬氏 |
Google Appsと「Cloud Gate」の導入が決定してから、運用が開始されるまでにかかった期間は、わずか3ヵ月程度。
「Gmailを初めて使う者も多かったので、部署単位で段階的に移行を行い、都度、経営企画室のスタッフが出向いて使い方を教えていきした。最初は分からない人も多く苦労しましたが、現在ではかなり落ち着いてきています。現場からも、以前のメールシステムと比べると動作も軽く快適、との意見が上がってきています」(倉林氏)
セキュリティの面では、「Cloud Gate」のIPアドレス制限により社外からの接続制限を行っている。
「Cloud Gateの導入によって、モバイル端末も安全に利用できることが分かりました。当初はモバイル運用までは想定していなかったのですが、せっかくなので利用してみようということで、営業数名にiPadを持たせてテスト的に運用しています」(三木氏)
外出先や社内打ち合わせなどでiPadを積極活用 |
Gmailを日本のビジネス向きに使いやすく
同社では「Cloud Gate」の他にもう一つ、ISRが提供する「Cloud Gate Address Book」というサービスを利用している。これは階層型の組織情報や役職データなどを登録することで、部署から人を探せる「組織検索」を可能にするGmailと連携するアドレス帳サービスである。
「他部署に連絡が必要な場合、組織階層のツリーをたどって担当者を探すことがよくあります。以前のシステムでは可能だったのですが、Gmailのアドレス帳ではこれができない。その使い方に慣れていた分、非常に不便に感じました」(小澤氏)
同社のように、アカウント数が1000を超えると同姓同名のスタッフも多数存在する。その場合、組織情報がないと『どこの部署の誰なのか』が判断できないこともある。
「Googleは米国の企業なので、日本の組織体系で利用されることを想定していない部分もあります。そのような思想の違いを日本式に使いやすくしてくれるツールが、ISRさんが提供しているサービスだと感じています」(小澤氏)
「Cloud Gate」と「Address Book」によって、セキュリティを確保しながら快適にクラウドメールの運用が可能になった京王百貨店。
現在はテスト的に運用を行っているモバイル端末の利用を、さらに広げていくことを検討中とのことだ。
「Cloud Gate」には、今回紹介した「IPアドレス制限」以外にも、スマートデバイス向け端末制限オプションを含めて、Google Appsを導入する企業にとって欠かせない様々なセキュリティ機能や管理機能が搭載されている。また、ISRのHPには多数の導入実績が紹介されているので、是非ご覧いただきたい。