さて、突然ですが、あなたの会社には、マーケティング部門もしくはマーケティングの専任担当者は存在しますか? 存在する場合、営業部門との連携は上手くいっているでしょうか?

本連載ではこれまで、4回にわたり、BtoBにおける営業活動を効率化する上でマーケティングが重要となることをお伝えしてきました。そして、マーケティングを行う上では、シナリオの設計などの戦略立案や実行、検証のフェーズにおいて、広告の運用など「作業の部分」をマーケティングオートメーションで効率化することで、マーケターは高速PDCAを回すことができると言いました。

そして、これらを実行に移そうと考えた際、もう一度みなさんに振り返って考えていただきたいことがあります ―― それは自社の組織体制です。具体的に、どの部分を見直せば良いのか、そのポイントや心構えについて整理してみましょう。

営業プロセスの分業化で、個人のスキルを活かせる伸ばせる組織へ

まず、本連載で最初に問題提起させていただいたことを思い出してほしいと思います。BtoBにおける営業活動は、これまで、見込み顧客の発掘から受注契約まで、つまり営業プロセスの初めから終わりまでのすべてを、それぞれの営業マンが一人で行ってきました。

しかし、これでは営業活動の成果が担当者一人ひとりのスキルに依存してしまうため、結果として、「教育に時間を要する」「(結果が出ない場合)離職してしまう可能性がある」「組織の拡大に時間がかかる」など、非効率さとリスクを伴ってしまいます。

そこで、まず目指していきたいのが、「営業プロセスに合わせて分業化された組織」の実現です。

始めに、自社の営業プロセスを図に起こして整理しましょう。その上で、それぞれの営業プロセスに部署と人員の配置を行い、分業化された組織を構築していきます。例えば、営業プロセスが下の1から◯までの工数で成り立っていると仮定します。

▼営業プロセス (仮定)
1 : 顧客の課題の顕在化
2 : 購買意欲の醸成
3 : 見込み顧客の獲得
4 : アポイントメントの取得
5 : 商談
6 : クロージング
7 : 契約


この場合、(1)~(3)までをマーケティングの部門が担い、(4)~(7)までを営業部門が担当するといった組織を構成することができます。

なぜ、分業化する必要性があるのでしょうか。それは、一人の営業担当が担っていたときと比較し、教育工数の削減とスキルの早期取得が期待できるためです。また、業務を細分化することで、個人の性格や特性に合わせた人員配置が可能になり、それぞれの得意分野に集中してもらうことで、組織全体のパフォーマンス向上につながるでしょう。

分業化する一方で、共通したKPIを持つ

また、営業プロセスの整理とそれに基づいた分業化を行う際、同時に、プロセスごとの目標値(以下、KPI)の設定を行ってほしいと思っています。

組織では一般的に、最終的な目標を達成するため、現状の受注率や商談化率等をもとに、獲得するべき受注数や商談数、リード数…と遡って想定の売上額や利益を算出していきます。

これは、営業活動においても同様です。しかし、営業プロセスにそって分業化した場合、これらの数字が共有・共通事項となっていないというケースが発生します。すると、十分な効果測定を行うことができず、ひいては、部門間の連携や各業務の最適化を不可能にする原因にもなり得ます。必ず、共通のKPIを認識している必要があるのです。

マーケティング部門と営業部門が不仲にならないように

一方で、分業化することによるデメリットもあります。よく聞く課題として「マーケティング部門と営業部門の不仲説」がありますね。売上が上がらないことに対して、マーケティング担当は営業担当の商談スキルや進め方が悪いと考え、営業担当はマーケティング担当の発掘する見込み顧客の質が悪いと考えているといった状況です。

このようにお互いの活動に懐疑的な状態では、分業化したところで協働はできません。売上・利益を上げるという組織全体の同じ目標に向かって、協力して行動するべきです。分担されていているそれぞれの役割を理解し、情報共有を密に行い、目標に向けての改善を共に行っていく……こういった部門間の連携を強化することは非常に重要になってきます。

では、連携を実現するために、営業部門とマーケティング部門はそれぞれ、何を実践する必要があるのでしょうか。下記では、一例として、マーケティング部門が取り組むべきことを記載します。

ステップ1 : 現状分析
マーケティング部門は、現在進行中のマーケティング施策(Web広告や展示会への出展など)のうち、「どの施策から得たリードが実際に売上に繋がったのか」を営業部門が公開する実績から把握しましょう。そして、そのデータをもとに、今後強化して取り組んでいくべき施策を検討します。

ステップ2 : リードの選別
次に、マーケティング部門は、実施したマーケティング施策によって取得したリードを、見込み度合いによって選別しましょう。獲得したリードには、今すぐ商談に至らないものが多く含まれています。これらを含んだすべてを営業部門に渡してしまっては、無駄な営業活動を増やしていまします。商談に発展する可能性のあるリードのみ提供することができるよう、リードの選別基準とそのフローを構築しましょう。

ステップ3 : 営業活動の結果を受けた分析
最後に、営業部門に渡したリードが、その後どれくらい受注に至ったのか、どの程度の売上になったのかを、営業部門が実際に行った活動と紐付けて分析します。これは、どのようなマーケティング施策で獲得したリードが売上につながるのかといった「成功パターン」を見付けるための取り組みとなります。 これにより、再度、今後強化するべきマーケティング施策を検討します。つまり、ステップ1に立ち返り、マーケティング活動の最適化を続けるということです。


このように、BtoB企業の営業活動においては、ひとつの共通したゴールに向け、役割を横断して連携し、組織的な知見を蓄積し、それぞれの活動を最適化し続けることが重要なのです。

さて、これまで5回にわたり、BtoB企業の営業活動にはマーケティングの要素が必要であるというお話をしてきました。主に、考え方を中心にお伝えしてきましたので、実際に組織の編成や分業化を行うとなると、なかなか難しいことに気付くでしょう。

しかし、長期的な企業戦略を考えた場合、避けては通れない取り組みだと思っています。本連載が、BtoB企業のマーケティング活動と営業活動がより進化していく一助になれば幸いです。

執筆者紹介

株式会社イノベーション

「BtoBマーケティングを変革する」を使命に、年間900社以上の営業・マーケティング支援を行う。提供サービスとして、有望商談を発掘することを目的に、企業Webサイトにアクセスした企業名と個人名を判明し見込みリードを生み出す「リストファインダー」を提供する。そのほか、自社運営メディアとして、「ITトレンド」や「BIZトレンド」も展開。これらを通じて"法人営業の仕組み化と効率化"を実現し、BtoBマーケティングを変革することを目指す。