見込み顧客の情報(以下、リード)を獲得する機会は、コンテンツの提供だけでなく、展示会やセミナーなどさまざまなマーケティング活動で得ることができます。そのリードに基づき、営業部がアプローチを行うことで、そのうちの数%は案件化し受注に至ることができるでしょう。

では、残りの「受注に至らなかったリード / 案件化しなかったリード」はその後、どのようになるのでしょうか? 今後、案件化・受注に至るよう、活用している企業はどれほどいるでしょうか。

多くの企業は、「リードは集めているものの、ニーズが顕在化しているホットな顧客にのみ営業活動を行い、そのほかは放置されている」や「展示会で商談化したものは対応するが、そのほかの名刺は各営業担当の手元で眠ったままになっている」といった状態かと推測できます。

しかし、BtoB商材は、受注までに比較的長い時間を要し、中には数年かかるものもあります。そのため、1件1件のリードが重要になり、"現状案件化されていないリード"を放置するということは、中長期的に大きな機会損失であるとも言えるでしょう。

したがって、BtoB営業にマーケティング要素を活かしていくためには、リードの取得だけでなく、見込み顧客を育成し、案件化や受注となり得るタイミングをとらえることが重要となってきます。この一連の流れを、マーケティング業界では「デマンドジェネレーション (Demand Generation)」と言います。

デマンドジェネレーションとは?

「需要創出」を意味する「デマンド(Demand)」という言葉からも想像できるように、「デマンドジェネレーション」とは、営業担当へ渡すリードの創出や発掘活動全般のことを指します。このフェーズは、大きく次の3つのステップで考えることができます。

ステップ1 : リードジェネレーション (見込み客獲得)
ステップ2 : リードナーチャリング (見込み客育成)
ステップ3 : リードクオリフィケーション (見込み客絞り込み)


ステップ1. リードジェネレーション (見込み客獲得)

まず起点となるのが、自社の顧客となり得る見込み客のリスト(リード)を獲得する施策です。前回紹介した内容も、ここでの施策にあたります。

この段階での施策は、大きく「オンライン」と「オフライン」に分けることができきます。オンラインの施策としては、前回の話しにもあった、自社メディアを活用した情報発信などのほか、検索連動型広告や各種メディアを使ったWeb広告の出稿、SEO対策などが挙げられます。一方、オフラインの施策としては、展示会やセミナー、テレマーケティング、ダイレクトメールなどを用いる施策が考えられます。これらの施策には、それぞれメリット / デメリットといった特性があるので、十分に理解した上で自社にとって最適な施策を選びましょう。

併せて、自社のターゲット像や施策の目的、売りたい商品・サービスについて、しっかり把握することも重要です。ターゲットにリーチできる施策でなければ意味がありませんし、どの施策からどのくらい案件化するリードが獲得できるかは、選択した方法や属する業界、製品・サービスによって異なります。

また、営業部の人数が少ないために大量のリードを獲得しても対応しきれず、せっかくのリードが無駄になってしまうこともあるでしょう。どんな質の、どのくらいの量のリードを獲得するべきなのか ―― マーケティング部門は、営業担当と強く連携し、効果的・効率的なリードジェネレーションを実施しましょう。

ステップ2 : リードナーチャリング(見込み客育成)

このフェーズでは、リードジェネレーションにて"即座に案件化しなかったリード"から、中長期に案件を創出するための施策を行います。具体的には、見込み顧客と継続的にコミュニケーションを図り、ニーズや課題意識を醸成し、自社のサービスや製品への購買意欲を高めていきます。

はじめに、自社のリードを一元管理することから始めましょう。バラバラのExcelファイルになっていたり、名刺のまま保管されていたりすることも多いので、それらを一つにまとめます。さらに、重複したリードや、競合・パートナー企業といった営業対象にならないリードを整理するとよいでしょう。

次に、ユーザーの購買意欲を高めるために、メール配信などの手法を活用します。例えば、コンテンツの更新情報を通知し、自社サイトへの来訪を促すなど考えられます。こういったコミュニケーションを通じて、事例や他社サービスとの比較を行った「ホワイトペーパー」をダウンロードしてもらったり、セミナーへ参加してもらうことで、ユーザーの検討段階を徐々に上げていきます。

ステップ3 : リードクオリフィケーション(見込み客絞り込み)

リードナーチャリングのフェーズにて、育成したリードの中から、案件化や受注の可能性が高いもの、いわば営業対象となるリードを選出する施策になります。育成の度合いから商談化できるタイミングを見定めることで、より効率的な営業活動が可能になります。

選出する方法としては、「リードスコアリング」と言われる手法を用います。各リードの購買意欲を点数で評価(スコア化)し、点数が高いリードいわゆる購買意欲が高いリードを、数多くのリードの中から選出していきます。

このときの判断軸には、特にBtoBにおいては、「リードナーチャリングで促した行動の結果(アクションの有無など)」を採用することが多いと言えます。「資料をダウンロードした」「セミナーに参加した」などの行動をそれぞれ点数化し、一定基準を満たしたリードを選出するという仕組みです。また、営業担当へのヒアリングや既存顧客の分析により、どのような属性のリードが顧客となる可能性が高いかを把握し、スコアリングに反映させてもよいでしょう。

このように、見込み客獲得・育成・絞り込みといった「デマンドジェネレーション」を取り入れることで、すぐに案結果できなかったリード情報から営業案件が創出でき、生産性の向上も期待できるわけです。

ここまで、BtoB企業のマーケターや営業マンをターゲットに、「非効率な営業方法からの脱却」と「そのためにマーケティングを取り入れる方法」をお伝えしてきましたが、これは基礎知識にすぎず、多くの方が「既に知っているよ!」といった様子ではないでしょうか?

であるとすれば、同時に、この一連の活動をすべて実施するには非常に多くの工数が発生することもご存知でしょう。そのために、昨今、多くの方が「マーケティングオートメーション」に興味を持つのかもしれません。

次回は、この「マーケティングオートメーション」について考えたいと思います。

執筆者紹介

株式会社イノベーション

「BtoBマーケティングを変革する」を使命に、年間900社以上の営業・マーケティング支援を行う。提供サービスとして、有望商談を発掘することを目的に、企業Webサイトにアクセスした企業名と個人名を判明し見込みリードを生み出す「リストファインダー」を提供する。そのほか、自社運営メディアとして、「ITトレンド」や「BIZトレンド」も展開。これらを通じて"法人営業の仕組み化と効率化"を実現し、BtoBマーケティングを変革することを目指す。