Google Geminiなどの生成AIが提供する文章の要約機能はとても便利だ。特にページ数の多い文書を読む必要があるケースや、母国語ではない文書を読むケースで大きな支援機能になる。しかしながら、Webサイトのボット対策機能などが影響してGoogle GeminiがアクセスできないWebページも存在しており、そうしたWebページに対してはGeminiで指示をすることができない。今回はそうしたケースでもGeminiを使えるようにする方法を取り上げる。
連載「Google Geminiの活用方法」のこれまでの回はこちらを参照。
読みたい文書がある
調査において信頼性が高いエビデンスを得ようとした場合、最終的にはいくつもの論文を読み込むことになる。しかしながら、専門分野ではない領域の論文を読み込むのはなかなかに骨が折れる。しかしこれは生成AIの登場で一変した。内容を比較的簡単に読めるようになったからだ。
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Efficacy of microcurrent therapy for treatment of acute knee pain: A randomized double-blinded controlled clinical trial - PMC
ここでは上記論文の要約をGeminiで生成して読むケースを考える。この論文はマイクロカレント治療について調べていくと読むことになる論文のひとつではないかと思う。関節や筋肉に炎症を抱えている場合に補完医療としてこの方法を試す方もいると思うが、どの程度の効果が見込めるのか調べようとすると、こういった論文を読むことになるのではないか。
アクセスできないWebサイトがある
論文の概要を知りたいので次のようにGeminiに指示を出す。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7944428/ の内容を要約してください。
回答は次のとおりだ。
申し訳ありません。ご提示いただいたウェブサイトにアクセスできません。コンテンツにアクセスできないよくある理由は、サイトが有料だったり、ログインが必要だったり、機密情報だったりします。しかし、サイトにアクセスできない他の理由もあります。
Webブラウザからは閲覧できているが、Google Geminiからはアクセスできないということだ。アクセスできない本当の理由をユーザーが知る術はないのだが、執筆時点では何度やってもアクセスすることができない。
他のURLを指定してみる
この論文はPDFの形式でも提供されている。Webページの次のスクリーンショットで示しているリンクがPDFへのリンクになっている。
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Efficacy of microcurrent therapy for treatment of acute knee pain: A randomized double-blinded controlled clinical trial - PMC
PDFは次のようになっている。
今度はこのPDFのURLを指定して次のように要約を生成するように指示を出す。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7944428/pdf/10.1177_0269215520965320.pdf の内容を要約してください。
しかし回答は先ほどと同じで、Webサイトにアクセスできないと回答される。生成AIによってはこのページやこのPDFのURLを指定すると、アクセスして要約を生成してくれる。Google Geminiがアクセスできない理由は分からないが、こちらも何度試してもアクセスすることはできなかった。
文章のタイトルで指定してみる
この論文そのものはWebサイトで公開されており、誰でも閲覧できるようになっているので、今度は論文のタイトルを指定して要約を生成するよう、次のような指示を出してみる。
「Efficacy of microcurrent therapy for treatment of acute knee pain: A randomized double-blinded controlled clinical trial」という論文の内容を要約してください。
今度は回答が先ほどとは変わった。該当するドキュメントがGoogleドライブに存在していないという回答が表示されている。
Google GeminiはGoogleアカウントに紐付けられているGoogle Driveに保持されている文書を検索の対象とすることができる。つまり、今回はWebページやWeb上のPDFファイルにアクセスできなかったわけだが、このファイルを自分のGoogle Driveにアップロードしておけばアクセスできるようになることを意味している。
上記のような回答を出すには、Google GeminiからGoogle Workspaceへのアクセスを許可する必要がある。Geminiを利用する際、Google Driveへのアクセスが必要になるとGoogle Workspaceへアクセスしてもよいか許可が求められることがあるので、ここで許可を与えておくと自分のGoogle Driveに保持した文書へアクセスして利用してもらえるようになる。
PDFをGoogle Driveにアップロードしてから、そのPDFを指定してみる
執筆時点で該当ページからアクセスできるPDFファイルのファイル名は「10.1177_0269215520965320.pdf」になっている。このファイルをダウンロードして、自分のGoogle Driveにアップロードする。
次にアップロードしたファイル名を指定して次のように要約を生成するように指示を出す。
10.1177_0269215520965320.pdf というファイルの内容を要約してください。
すると次のように論文の要約が表示される。
今回行いたかったことが実現できた。
要約を読んで、さらに詳細に知るべき必要があると判断したら論文を読み込んでいく。このようにするだけでもチェックするべき文書を絞り込むことができるので、これまでであればすべての文書を読んで調査していたところを、より効率的に必要な情報に絞って調べていくことができるようになる。
Google Driveとの連携はGoogle Geminiの強み
GoogleはGmailをはじめとしてさまざまなサービスを提供している。対象はコンシューマー向けの無償のサービスからエンタープライズ向けまで幅広く存在している。Google GeminiはこうしたGoogleの既存のサービスとの連携を強めており、Google Driveとの連携はGoogle Geminiの強みのひとつと言える。
現在の生成AIは急速に開発が進められている段階にあり、数か月というスパンで新機能の投入が行われ、状況が刻一刻と変化している。どの生成AIが抜きん出ているとは言い難い状況であり、得手不得手はケース・バイ・ケースだ。ChatGPTやCopilotでうまくいかなくてもGeminiであればできることもある。このようにそれぞれの生成AIでできること・できないことを把握し、うまく切り分けて使っていくことが現在必要になるスキルのひとつだ。
Google Geminiの強みのひとつはGoogleサービスとの連携にある。Google Driveとの連携は興味深い機能だ。特にローカルにあるPDFやWordなどの文書を対象にしてGeminiを使いたい場合、Google Driveと連携することでそうした操作がしやすくなることは覚えておこう。