--素晴らしいです! バングラデシュで働きたいという日本のエンジニアもいると思います。バングラディシュの良いところを教えてください--

上田氏: メリットは人口が多く、長期的に見て国が成長していくことが期待できるところですね。また、競合も少ないです。まだまだ社会課題が多い国なので、ニーズがあふれていて、いわゆる「タイムマシーンモデル」で参入しても、ある程度マーケットが取れる気がします。

ただし、保守的で伝統的な価値観で購買の意思決定をする国民性なので、マーケットに正しくリーチし、地場の信頼とネットワークを築かなければビジネスを成立させるのは厳しいのでは、と思います。また、投資回収期間は他国と比べて相対的に長いでしょう。

--ちなみに、IT企業で起業されている人は多いですか? どのような人が成功されると思いますか?--

上田氏: ローカルのIT起業家は、増えてきています。バングラデシュは今がITスタートアップ元年と言ってもよいのではないでしょうか。ただ、先進国のように成功事例が周りにたくさんあるわけではないので、資金・事業の創り方・情報・ノウハウが不足している感はあり、勃興しては消えていくローカルスタートアップは多いです。

成功している企業を挙げると、世界有数の深刻な渋滞問題を解決するために、レストランのメニューをデリバリするfoodpandaや、日用品を届けるchaldal.com、Uberのローカルバイク版であるPathaoなどが伸びていますね。

また、多くはないですが、外資のITスタートアップ企業は少しずつ設立されています。想像よりも、参入コストがかかる国なので、海外で既に事業が安定している拠点があって、そのバングラ国への横展開、というパターンが多い気がします。

成功する人は……生活環境と労働環境がタフすぎるので、強靭な神経と身体を持ち、忍耐強くバングラマーケットにコミットできる人でしょうか(笑)

--日本人プログラマーがそちらの国で成功する可能性がありますでしょうか? またどのような人が成功しやすいでしょうか?--

上田氏: 日本人プログラマーが、バングラデシュまで来て仕事をされるイメージができないですけど(笑)、外資オフショア拠点のプロマネやCTOレベルであれば、引きはあるのではないでしょうか。

バングラデシュには、腕の良い若いコーダーは山程いますが、優秀なマネジメントレベルの人材を採用することは簡単ではありません。そのため、グローバルレベルの商習慣を理解していて、マネジメントもできて、英語も話せて、チームを引率できる日本人がいれば(アーキテクチャ設計もできると最高)、外資のオフショア企業などから引き手数多かもしれないですね。ちなみに、そんな方は当社にぜひきてほしいです。

以上が、上田さんのインタビューになります。ビジネスは市場が拡大する際にその中心で活躍できた人が一番成功すると思います。当然、いろいろなものを生み出さなければいけないので、産みの苦しみはあるでしょう。それに耐え、バングラデシュにコミットできる人には活路が開けるかもしれません。上田さんのような先駆者がいるということは、これからの日本の若者にとっても大きな指針になると思います。

著者プロフィール

吉政忠志


業界を代表するトップベンチャー企業でマーケティング責任者を歴任。30代前半で同年代国内トップクラスの年収を獲得し、伝説的な給与所得者と呼ばれるようになる。現在は、吉政創成株式会社 代表取締役、プライム・ストラテジー株式会社 取締役、一般社団法人PHP技術者認定機構 代表理事、一般社団法人Rails技術者認定試験運営委員会、BOSS-CON JAPAN 理事長、一般社団法人Pythonエンジニア育成推進協会 代表理事を兼任。