Googleは、2月にGoogle Glassユーザーに向けてマナー集を公開したのに続いて、20日にGlassのGoogle+で「Glassの迷信トップ10」を公開しました。

Googleがマナーやルールの確立に乗り出したのは、Glassをかけていた人がバーで絡まれたり、プライバシー侵害を懸念して使用を禁止する店が増えるなど、Glassに対する逆風が強まっているからです。たしかにGlassユーザー以外は、Glassをかけている人が何をしているのか想像がつきません。不気味に思うのは当然だと思います。

プライバシー問題に関して、Explorer版のGlassは以下のように振る舞います。

  • 撮影時にカシャっというシャッター音が鳴る。
  • 動画の撮影時間は1回最長10秒まで。
  • Glassのバッテリーは小さいため、長時間の録画はできない。
  • Glassを使用している時は、周りの人からもディスプレイが点いているのが分かる。

Glassを使用している時にはPrismプロジェクタが光ります。じっと凝視すると、大きめのメニューぐらいなら周りの人もGlassユーザーが見ているものが分かります。

Glassは使っていて目立つし、盗撮やスパイ行為に向いているデバイスではありませんが、プライバシー侵害を心配する人たちが反論する余地があるのも事実です。

  • システムの音を「0」まで下げたらシャッター音は鳴らない。
  • 10秒はデフォルト設定であり、撮影時に「録画を延長」を選ぶと10秒以上の録画が可能。
  • バッテリーが小さくても悪用されないとは限らない。
  • ディスプレイのオン/オフは判断できるが、ユーザーが何をやっているかまでは周りの人は分からない(録画中を明示するインジケータを付けるべき)。

日本のプライバシー保護の観点で判断すると、Google GlassはExplorer版のままでは認められないでしょう。ただし、米国では販売できる範囲です。Glassの機能はスマートフォンと同等であり、スマートフォンと同じルールやマナーが適用されるべきとGoogleは指摘しています。米国ではスマートフォンの高機能なカメラを静音で使用できます。それでも社会に浸透していることを考えると、Googleの論法は正しいように思えます。

でも、今のままではGlassがスマートフォンのように市民権を得るのは難しいでしょう。

iPhoneが登場した時にも、それを自慢げに持つユーザーに反感を抱く人、プライバシー侵害を心配する人が出てきましたが、バッシングは広がりませんでした。iPhoneが携帯を便利なものに変えるという期待感が懸念を上回ったからです。マルチタッチジェスチャー操作は明らかにボタン操作よりも簡単かつ実用的で、モダンブラウザ搭載が携帯でモバイルWebを実現していました。これでモバイルが変わると実感できたから、危うい部分が残されていても人々はiPhoneを求め、そこからスマートフォンを受け入れるためのマナーやルールが整っていきました。

一方、Glassは「何の役に立つのか分からない」状態がずっと続いています。Explorerプログラムの参加者の間では、例えば、美術館のガイドに導入されたり、選手のデータをチェックしながら野球観戦できたりしたら面白いというような話で盛り上がったりしますが、そうしたアイディアもGlassの製品化が具体的に見えてこないと動き出しません。開発者の大胆な試みが増えないまま、発表当初のメガネ型デバイスへの関心も次第に薄れ、Glassが抱えるプライバシー侵害問題への懸念だけが膨らんでいるのが現状です。

マナーやルールは大事です。でも、Googleがやるべきことは、それらの提案ではありません。Explorerプログラム参加者以外の人たちも「使いたい」と思わせるものにGlassを成長させること。例えば、こうした試みが増えれば、いずれ逆風はやわらぎ、自然とマナーやルールが確立していくのではないでしょうか。