ITで会社が変わることを確信させたGoogle Apps

ガリバーインターナショナル 経営企画室 椛田泰行氏

ガリバーインターナショナルでは2008年9月より、従来の車両買い取りを主体としたスタンスから、車両販売に軸足を置いたスタンスへビジネスモデルの全面的な改革を実施した。この改革に際して社内の情報インフラも大幅に見直されており、Google Appsを用いた効率的かつ生産性の高いビジネス環境を実現した。

同社がGoogle Appsを導入した理由について、経営企画室の椛田泰行氏は「私が上海に赴任していた当時、現地でGoogle Appsを使い始めました。そこで、オフィスへ出勤しなくても事務作業がこなせるという、日本とまったく異なるワークスタイルを経験したのです。移動が多いなかでも、カフェのWi-Fiやケータイなどからアクセスできるのは非常に助かりましたね。リアルタイムコミュニケーションの重要性と同時に"ITで会社が変わる"ことを確信し、2009年2月に帰国した後、Google Appsを前提とした社内の情報インフラ改善に着手しました」と語る。

同社の情報インフラはこれまで、社内ではLotus Notes、社外ではPost.Officeを利用していた。これをGoogle Appsへリプレースすることで、社外からアクセスできる利便性に加えて、GoogleドキュメントやGoogleサイトなど生産性向上につながる機能が増え、さらには大幅な運用コストの削減効果を生み出してくれるわけだ。

カットオーバーまで約2週間のスピード導入

同氏はGoogle Appsの強みでもあるiPhoneとの連携機能を生かし、まずは社内にいなくてもメールが確認できる利便性を経営者層に理解してもらったそうだ。Google Appsのメリットを認識した同社では、社内協議を経て2009年6月にGoogle Appsの全社導入を決定。カットオーバーまで約2週間というスピード導入が行われた。これは、社内でアカウント整理などの事前準備をしっかりと進めていたのはもちろん、導入が容易なGoogle Appsだからこそ実現できたと言える。

同社は現在、本社の社員および店舗ごとにアカウントを取得しており、その合計数は約,2800に及ぶ。ドメインは本社用、直営店用、フランチャイズ用の3種類を用意し、業務ごとに切り分けている。

「導入に際しては、基本操作を教えるくらいで、特別な社員教育は行っていません。ある程度のPCの知識があれば直感的に使えるのもGoogle Appsの魅力ですね。もちろん、導入直後はGmailのスレッド表示形式など、使い勝手に若干の抵抗を覚える社員もいたようです。しかし、これはツールに対する慣れの問題だけですので、時間の経過とともにむしろ使いやすいという声が多くなりました」と同氏。

ちなみに、同社では旧システムからのメール移行措置を一切行っていない。必要に応じて転送する個人単位の対応でも、スムーズにメールを移行できたそうだ。これらの実現には、常にイノベーションを意識している同社の社風も大きく影響しているだろう。

窓口の一本化で連絡業務を効率化

同氏自身が特にGoogle Appsによる業務効率化を実感したのは、問い合わせの一本化と内線連絡の廃止だ。まず、システムに関する問い合わせは、Googleドキュメントのフォーム経由でしか受け付けないよう社内に徹底した。ヘルプデスクからの電話転送も、すべてフォーム経由で連絡を受ける形式へ変更。「フォームから通知を受けてメールやドキュメント共有などで対応する」というワークフローを確立したのである。

「自分の声で伝えるほうが安心という人もいますが、この内線が実はムダを作り出す原因となります。逆に連絡を受ける側も、常にフォームからの通知だけを意識しておけばよいため仕事がやりやすいですね」と同氏。さらに、問い合わせのあった案件をGoogleドキュメントで全社員に公開しているため、重複した内容に答える手間も削減できるわけだ。

また、Google Appsを導入したことで情報システム部門の在り方も変わってきたという。

「部署に必要以上の人員がいると、どうしても仕事を作ろうとしがちです。しかし、企業は取り巻く環境が厳しくなるなか、コストを下げる努力が必要不可欠となります。情報システム部門も例外ではなく、企画運営以外は取引先の開発パートナーに任せるといった"よりコンパクトな体制作り"が求められるでしょう。このように、情報システム関連の運用負荷を低減し、人材をより必要な場所へと再配置できるのも、下支えとなるGoogle Appsがあればこそです」

今回は、ガリバーインターナショナルがGoogle Appsを導入した経緯や導入後の変化を中心に解説してきた。ここまでの内容だけでもGoogle Appsが企業に与えるメリットの大きさが伝わったとは思うが、次回はさらに一歩踏み込んだ観点から、より現場に近い取り組み、iPadと連携した活用例、同社が見据える今後の方向性などを紹介したい。